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やってきた者たち

雨が降り続いた日からしばらく安定した日々が過ぎました。

エルノとクァルが獲物を狩りに行ったり水を汲んでくれたり、わたくしとフリーダが山菜や木の実、果物、きのこを収穫し、フリーダが料理して、わたくしが洗浄する日々。


わたくしは空いた時間をフリーダから料理を、ルファからは魔法をいろいろと教わっていました。

前に候補に上がった火槍も習得して練習しています。今ではわたくしか相手、どちらかが動かなければ当てられるようになりましたわ。他にもいくつか学びました。来てほしくはないですが、いざという時に役立ってくれると思います。


そんなある日、たまたまエルノたちがまだ集落にいる時に、警戒の魔法が発動しました。また南からですわ。

エルノを伴って、様子を見に行きます。この前に発動した時はサソリが来ていましたので、追い払うのに苦労しました。クァルにはフリーダの護衛として残ってもらいます。


やってきたのは大勢の人型でした。今までに見たことがない方々です。その代表者らしいのが前に進んできます。全身金属鎧姿の戦闘員ですね。顔は頭を完全に隠すヘルメットをつけているので分かりません。


「あまり見かけない姿をしておられるが、この先の集落の方ですか?」

わたくしたち人間の言葉ではなく、かといってコボルドの言葉ではない言葉で話しかけられました。自動翻訳のおかげで内容は分かりますが何語なのかまでは分かりません。でも内容は理性的です、まだ安心は出来ませんが交渉はできそうですね。


「ええ、そうですわ。あなた方は?」

「失礼しました。我々は森の向こうに住んでいるオーク族の者です。少々お願いがあってこちらによらせていただきました」

兜の面頬をあげて顔を見せてくれます。やっぱり金属鎧の人もオークでしたか。見たのは初めてですが書物にあった絵などと同じような顔つきですわ。でもわたくしが知っているオークとは全く違いますね。オークが持っている武器と言えば人間から奪った錆びついたものぐらいで鎧も粗末なものがせいぜいのはずですし野蛮だと聞いていますわ。けどこのオークは磨き抜かれた金属の鎧を身につけています。喋り方も丁寧で、異種族であるわたくし達にも敬意を払ってくれていますわ。すごく文明的です。


「お願いとは?」

「はい、実は少々やらかしまして食料が少し足りなくなってしまったのです。ですのでもし備蓄があれば譲っていただければと。従軍商人も念の為ついてきておりましたので交換も可能です」

「見たところ戦争にでも行きそうな格好ですけど、油断させて襲ってくるとかは?」


「ははは、警戒されるのも無理はありませんが、我が王よりその手は禁じられております。それに我らの力であればこんな交渉などせずとも不意を打って襲うことも出来ましたよ。それが証しにはなりませんか?」

確かにそうですわね。警戒の魔法が発動したとしても、そのまま襲ってこられてたらこちらはひとたまりもなかったはずです。彼の後ろにいる人数を見れば、とても敵いそうもありません。


「それもそうですね。分かりました。亀肉ならまだ大量にありますので、交換で良ければ」

「か、亀肉ですか? それはありがたいですね。ではそちらの集落に私と商人、荷物持ちの入場をお許し頂きたい」

「ええ、よくってよ」

そういって先導します。ついてきたのは交渉相手だった全身金属鎧とそれなりに豪華に見える服を着ているオークにそれが引き連れている、大きな鳥でした。鳥の背中には軽く荷物が積まれています。この鳥が荷物持ちみたいですね。


「身分は詳しくは話せませんが、隊長のテグモスと申します。以後よろしく」

「商人のワナッフィです。良い取引がありそうだということで」

名乗られたからにはこちらも名乗らねばなりませんね。

「わたくしは、アクレシア・ノイラートです。親しいものからはシアと呼ばれてますわ」

「これはご丁寧に。アクレシア様」

「親しい者、と言いましたが、皆様もシアで構いませんよ」

「懐が深い方であられるようだ、シア様」


「それじゃエルノ、この方達に余ってる亀肉をお分けすることになったから、余っている分を持ってきてもらえる?」

「内臓もいいか? おいら一人じゃ食べきれないようだし」

「ええ、もちろんよ。この方たちが気にいるかどうかは分からないけど」


「クァル、手伝ってくれるか?」

エルノが集会場に向けて呼びかけます。とりあえずは安全っぽいのでいいかな。念の為フリーダはまだ出さないようにしましょう。

クァルが扉を開けて、エルノに付き従います。


「な、なんと、スピリットドラゴン?! コボルドがスピリットドラゴンを使役しているのか?」

隊長らしいテグモスさんが呻りました。あれ? クァルったらフェアリードラゴンじゃなくなってるのですかやっぱり。

「あのコボルドはエルノ、わたくしが保護者ですわ。それにあのドラゴンはクァル、お友達といったところかしら?」

本当はなんだろう? 同居人? 保護者ではないですわよね、でもここではそう言っていた方が良いと思いました。クァルも関係性はよくわからないからお友達、ということにしました。

「と、いうことはクァル、様はシア様に付き従っておるのですね。なるほど、合点がいきました。スピリットドラゴンであれば亀を倒せるでしょう」

なにか勘違いしているようだけど、ここは叩き込んだほうが良さそうね。


「え? ヘイドディタスを倒したのはわたくしですわよ?」

「ええ?! シア様が?! ヘイドディタスを?!」

商人のワナッフィさんが広げてくれた布の上に、肉をどんどんと置いていきます。クァルは大きな樽に入った内蔵を持ってきます。


「こちらがヘイドディタスの内蔵、主に腸ですわ、もしよければこれらもどうでしょう? ご検分をどうぞ」

正直ハッタリを聞かせているので顔が強張りますわ。けどなるべく悟られないようにしないとと思い、なるべく笑顔でいることにしました。わたくしにこんな演技が出来たのですね。学園でもこれぐらい出来ていたら……、いえ、今はそれを考えるときではありませんね。


商人のワナッフィさんが進み出て、まず内蔵を手にとって見ます。

「これは……、確かにヘイドディタスの腸のようですが、かなり大きくありませんか? それに綺麗すぎる……」

「おい、ワナッフィ、本当にこれらはヘイドディタスなのか? それに大きいって?!」

隊長のテグモスさんがワナッフィさんとこそこそとやっていますが、そういうのに慣れていない人なのか、こちらに筒抜けですわ。逆に言えば本来は誠実で表裏のない方なのでしょうか?

「ええ、間違いありません。下手をすれば20メートル級ですよ、この大きさなら」


「何か亀の大きさを気にしておられるようですが、ツメをなにかに使えないかと残しておりますから見てみますか?」

そういって、二人をその場に残して、集会場へ戻ります。入ってから、フリーダには中でおとなしく待っているように言い含めて、ヘイドディタスのツメの一本を抱えて二人の前に持っていきます。


あら? 何故か軽々と持てましたわ。ルファが身体強化の魔法をかけてくれたようです。……確かにツメを持ってフラフラしていたら格好がつきませんわね。心のなかでルファにお礼を言いながら、ツメを二人に見せました。


「お、おお……! 私でもこれならわかる。確かに巨大なヘイドディタスのツメだ。シア様、ツメがあるのでしたら甲羅は残っておりませんか?」

笑顔で答えます。

「甲羅でしたら邪魔でしたので砕いて消し飛ばしましたわ」


「……ヘイドディタスの甲羅を、砕いて、消し飛ばした、のですか……?」

嘘は言っていませんよ。中からですし、消し飛ばしたというか燃やし消したですけど。

「あら、なにか都合が悪くって?」


明らかにテグモスさんやワナッフィさんの顔に恐れが出てきています。別にこの方たちを怖がらせるつもりはないのですが、交渉には好都合な気がしますので誤解?は解かないでおきましょう。

「い、いえ、都合は悪くありませんが、ヘイドディタスの甲羅は丈夫で鎧や盾の素材にもなるものでしたので……」


「まあ、そうでしたの。もったいないことをしてしまいましたわ」

そう言って二人ににこりと笑顔を見せます。

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