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水浴び

本日は総出で川まで魚取り&水浴び&山菜採りですわ。集落を空にするのは怖いですけど、ルファが聖域という魔法を教えてくれましたわ。中に誰にも入れない領域を作る大魔法だそうです。術者ですら入れなくなるので防衛には使えないのが残念ですが、こういうときは便利ですね。大魔法らしいので、わたくしの魔力のほとんどと亀の肉がいくらか失われましたが、まあいいです。


エルノの道案内についていきながら、きのこや山菜を収穫していきます。山菜の目利きはほとんどがフリーダです。わたくしはたまにきのこや木の実や果実を見つけるだけです。きのこや山菜などに興味がないエルノは早く行きたがっていましたが、こればかりは譲れませんわ。


エルノが言っていた通り、一度だけサソリを見かけました。昨日見たやつよりは大きく、わたくしが前に見たやつよりは小さかったですが、驚異は驚異です。サソリも食べれないことはないらしいですが、亀肉がたくさんある今、わざわざ危険を犯してまでサソリを相手にする必要もないので、静かにして見送りました。万一集落にたどり着いても聖域のおかげで荒らされる心配もないですしね。


それなりに収穫できながらも、太陽が真上に登る前に川に到着することが出来ました。


「おおー、思ったより大きな川ですね」

「魚もたくさんいるぞ。おいらは少し上流で釣りしてくるから、ここらへんで水浴びするといいよ。この辺ならそこまで深くないし、浅くもないし」

「クァルはエルノについていくのね。フリーダはどうする? 一緒に水浴びする?」

「水浴び、したことない」

「そう、じゃあ一緒にしましょうか」


「じゃあおいらたちは上流にいるから何かあったら大声をあげてくれよ、すぐに駆けつけるから」

「ええ、分かったわ」


すっかりクァルはエルノと仲良くなっていますね。最近はエルノにべったりです。べ、別に寂しくはないですからね、こっちにはフリーダもいますし。聞いてるんですのルファ? ……返事がありませんね。寝ているのかしら。イセカイのセイシンキセイタイに男女があるのかどうかは分かりませんが、喋り方から考えるとルファは男性ですしね。気を利かせてくれているのでしょう。


「重くなりますし痛みますから服は脱いで川に入りましょう」

下着は……脱ぐ必要はないでしょう。万一なくしてしまったら大変ですし。


フリーダが服を脱ぐのを躊躇ってます。どうしたのかしら?

「シア、さま、笑わない? あたし、毛、生えてない」


え? どういうことかしら? そういえば庶民は同性同士でもメイドの前でも服を脱ぐのを躊躇うって聞いたことがありますわ。他人に肌を晒すのを慣れてないから、らしいです。貴族だと子どもの頃からメイドが着替えさせてくれたり体を洗ってくれたりするので、そんなことで躊躇っていては生活できません。これは率先して貴族の振る舞いを見せてあげないといけませんね。


正直自分で服を脱ぐのは苦手ですが、ちゃんと訓練として自分一人で着ることも出来ますわ。学校の制服はそのように出来ていますもの。さすがに晩餐会に着ていくようなドレスだと自分一人ではなかなか厳しいものがありますが。


服を脱いだらちゃんと折りたたんで草の上に置いておきます。


「シア、さま、も、毛、ない、あたし、同じ」

あ、わかりましたわ。フリーダはコボルドたちの中で暮らしていたんでしたね。コボルドは全身毛むくじゃらだから、逆にフリーダやわたくしのようなつるつるお肌は違和感があるんですね。


「大丈夫よ、フリーダ、貴方はどちらかというとコボルドよりもわたくしのような人間に近いみたいですからね」

「フリーダ、シア、さま、一緒?」

「ええ、全部一緒ではないですが、たくさん一緒よ」


「シアさま、と一緒、嬉しい。今まで、一緒、いなかった」

「そう……、でももうフリーダが望むならずっと一緒よ」

フリーダはわたくしの真似をしてちゃんと服を脱いで畳んで草の上に置きました。わたくしにはない尻尾を強くふっています。


「準備は済んだようね。それじゃゆっくり川に入りましょう。流れがあるから気をつけてね」

わたくしが先に入ります。急に深くなっているところはないか、気をつけながら入っていきます。フリーダはおっかなびっくりといった感じで腰が引けてますね。今まで水に入った事自体なかったようですし、いきなり流れのあるところは確かに怖いかも。フリーダの手をしっかり握ります。


「冷たい、けど、気持ちいい」

わたくしの股下辺りの水深のところで止まります。フリーダにはもう腰上ですから、これ以上は何かあったら危ないですからね。わたくし、こんなに分かった風に振る舞っていますが、川に入ったのなんか初めてです。流れがあるというのはけっこう怖いですね。気をつけて水浴びをしないといけませんね。


せっかく水があるので、ポニーテールをといて、水に潜ってみます。ポニーテールも悪くはないのですが、ずっと髪の毛が引っ張られている感じがしてちょっと疲れていたのも事実です。あとでもとに戻せるか心配ですが、今は髪が川を流れる感覚が気持ちいいです。

フリーダもわたくしと手をつなぎながら一緒に川にしゃがんで川に浸かります。長く伸びたフリーダの銀髪が川に流れてきらめきます。最初に洗浄したときも思いましたが、フリーダの銀髪はとても美しいです。同じ色の尻尾も髪の毛に合流して流れています。


「シア、さま、それは、なに?」

フリーダが手を伸ばしてわたくしの耳を触りました。

「これは耳よ。フリーダと少し違うところね」

「毛、生えてない、柔らかい」

フリーダが自分の耳をぴくぴくと動かしながら、わたくしの耳たぶをぷにぷにともみます。今まで耳、髪の毛で隠れてたからね。


洗浄で普段から綺麗にしてあるから、水に浸かっただけで満足してしまったわ。それにしても澄んだ水ね。潜っても全部見えるわ。魚がいるのも見えます。手でつかめないかしら。さすがに無理ね。フリーダの手を離すわけにはいきませんし。片手で髪の毛をとくだけにしましょう。

フリーダも水の扱いに慣れてきたところで水浴びを終えます。ちょっと冷えてきましたからね。流れがあるとすごく冷えるのですね。水風呂と違う感じです。


二人で川から出てから、体を振るって水を落とします。フリーダも真似をして落とします。けど髪の毛にたっぷり水を含んでいますから、なかなか落ちません。それに風が吹いたら寒いですわ。先に焚き火を用意しておくべきでしたわ。濡れたまま服を着るのもまずいですし、どうしましょう? そういえば洗浄の魔法で濡れることはありませんよね。確か半分以上は風属性ですし、血で濡れていても普通に綺麗になりましたし洗浄すれば乾くかも。


短剣を手にとってわたくしとフリーダに洗浄をかけます。思ったとおり、体は乾きましたし、髪の毛はふわっと仕上がりました。二人で急いて服を着て、焚き火の準備をします。


焚き火が出来てしばらく体を温めているとエルノとクァルが戻ってきましたわ。結構な数の魚を持ってきてくれました。

「おいらは小さいの生でいただいたからいらないから、こいつらを食べたらいいよ」

「ありがとう、エルノ。助かるわ。魚を久々に食べれますわ」

思わずエルノの頭をなでます。


「なんだ、今の?! すごく気持ちいいからもっとやってくれ」

エルノにもっと頭をなでろと要求されましたわ。そういえば孤児院の子どもたちも頭を撫でられるのを好んでいた気がしますわ。

しばらくなでなでしてあげると満足したような顔をして、また釣りにいきました。その様子を見守っていたクァルも、わたくしをみてクァと鳴きました。肩に乗ってきたので、指で頭を撫でてあげます。クァルも目を細めて気持ちよさそうにしてますね。そういえばクァルは喉をさすられるのも好きでしたね。頭を撫でるのをやめると、もうやめるのか、といった感じで見つめてきたので、今度は喉をさすってあげます。


「シア様、魚、焼けました」

「ありがとう、フリーダ。クァルも焼き魚の方がいいでしょ。一緒にいただきましょう」

ふふふ、フリーダもエルノが撫でられているのを羨ましそうに見ていたのには気づいています。けどフリーダは素直にしてくれとは言わないでしょうね。ですから。


「いつも食事の準備ありがとうね、フリーダ」

と言って頭をなでます。最初はびくっとしましたがすぐに緊張がとけて撫で放題になりました。

「フリーダの頭は気持ちいいわね」

お世辞ではなく本当にそう思いました。洗浄したてだということもあるのかもしれませんが、すごくいい髪です。そして頭に突き出ている犬のような耳がアクセントになっていてとても触り心地がいいのです。

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