爆発
集落の集会場でご飯を食べて、寝る準備をしながらエルノから話を聞きます。
「どうしたというのです、エルノ?」
「思い過ごしだったらいいんだけど、狩りに行った南でサソリを見かけたんだ」
「サソリ、ですか?」
この森に入ってすぐに出会った、あの大きなサソリのことかしら。
「この森ではやっかいなやつらであまり見かけないんだけど、北に進んでいたから気になってさ」
「そんなにやっかいなんですの?」
「あいつらでかいし、なんか俺らを餌だと思ってる感じなんだ。柵はサソリよけだからな」
ああ、やっぱり避けて正解だったようですね。
「おいら一人じゃあいつは倒せそうもないし、来たら逃げるしかないと思う。来ないように祈るけど……」
「まあわたくし運が悪いみたいだし、こういうときってくるんじゃないかしら。念の為に警戒の魔法は柵の外にもはっておくわ」
「ああ、しばらくそうした方がいいと思う」
「あたし、気をつける」
「ええ、フリーダも気をつけてね。
「エルノでも無理なら、わたくしの魔法しか対抗手段はなさそうね。ルファ、なにかいい魔法はないかしら?」
二人が寝てから、ルファに問いかけます。
『いい魔法ってもよ。シアは火と風だよな。火は申し分ないが、風は普通だし、水はすこししかなくて、土はまったくないな、適正が。魔は火のおかげでそれなりに高いけどな』
「ええ、学園でもそう判断されていましたわ。火属性は炎属性と言われる程度にはあるわ」
『威力の高い火属性の攻撃魔法は数多くあるが、森の中で使えるとなると、なぁ。爆発か火槍かねぇ? どっちも扱い難しいが、どうする?』
「爆発は聞いたことありますわ。けど学園では教えてくれなかった魔法ですわ」
『まあそうだろうな。威力が高い上に扱いが難しい魔法ではあるからな。本格的に戦いをする者以外は覚えなくてもいいだろうしな』
「火槍はどうですの?」
『シアだと撃ちっぱなしではまず当てれないだろうからな。ちゃんと誘導しないとダメだから難しい魔法ではある。周りを見ながら火槍に意識を回して目標に当てないと行けないからな。ちゃんとまっすぐ行けば当たるように撃てれば誘導なんかいらないんだが、シアの運動神経や経験では難しいだろうな』
「そうなんですか……」
『まあどっちかといえばシアには爆発のほうがいいかもしれんな。森で使うには気をつけないといけない魔法だが、集落とか広い場所ならあまり問題もなかろう』
そうルファが言うと、すぐに爆発の魔法を習得できました。複合魔法ですのね。風属性が思ったよりいるみたいですが大丈夫でしょうか。
『一応制御できるはずだけどな。風属性は爆発の影響から逃れるための結界用が主のようだし』
自分への防御魔法もセットになっている感じですか。さっそく明日テストで使ってみましょう、ぶっつけ本番で使うには怖い魔法のようですわ、と考えながら眠りに落ちました。
夜の間、柵の外にも広げていた警戒の魔法にも何もかからず、しっかりと寝ることが出来ました。
今日はわたくしが一番先に起きることが出来ましたわ。
皆のためにわたくしができること……、なにもないのが悲しいですわね。仕方ないので昨晩覚えた魔法を試し打ちしてみましょう。
集会場から出たところで広場に向けて打てばいいかしら? 洗浄の魔法と同じように短剣を抜いて構えつつ、頭の中で呪文を構築していきます。といっても丸覚えしてるだけの呪文を頭の中で詠唱するだけなんですけどね。
どんどん構築していくと呪文による影響範囲が見えてきました。え? なにこれ大きすぎない? 呪文をそのまま唱えるだけでは影響範囲が大きすぎて自分も巻き込まれてしまいそうです。最初に決める爆発地点を近くに設定しすぎていました。
慌てて影響範囲を狭くしようとしますけど、なかなかうまく抑え込めません。どうも影響範囲の設定には風属性の力が多くいるようですわ。自分を守るための結界でもなく影響範囲を限定するための結界のようですし、わたくしみたいに並だと自分を巻き込まない程度にするのが精一杯のようです。それでも近くの使用していない小屋が巻き込まれてしまいそうです。
……仕方ありません、今まで使った魔力はそのまま消えてしまいますけど魔法をキャンセルしましょう。このまま無理に抑え込もうとして暴走するのも危ないですし。
爆発の魔法をキャンセルすると、キャンセルしただけなのにかなり魔力を使ってしまったことが分かりました。その魔力が急激に回復していくのも。
「ルファ?! 起きているんですの? あまりわたくしの感情を削らないでくださる?」
『そうはいってもこれで魔法に恐怖を覚えられても困るからな。今感じている恐怖を魔力に変換して削らせてもらう』
そんなにヤバい失敗をしてしまったのかしら? 確かに攻撃魔法とは言え今まで怖いとは思ったことなかったですわね。
『次使う時は支援してやるよ。結界の制御の大半は受け持ってやるから中心や範囲設定をミスるな、そのへんはシアのセンス次第だからな。成長してもらいたいからあんまり手伝いたくはないんだがちょっと爆発は荷が重かったようだ。俺が教えたんだし、まあ俺の責任だわな』
わ、わかったわ、よろしくお願いしますわ。確かに実戦でこんな風に失敗しては困りますもの。試し打ちをしようとして本当に良かったですわ。
「シア、今日は早いんだな」
エルノが起きてきたみたいですね。
「おはようございます、エルノ。今日はどこにいくのですか?」
聞いてから気づきましたが釣り竿と槍を持っていますね。ということは魚を釣れる場所を知っているということですね。
「ああ、集会場で釣り竿を見つけたら、久々に魚食べたくなったから魚釣ってくる」
「そ、そこは水浴びできるような場所ですか?」
「ん? ああ、川だから出来ると思うぞ、それなりに大きいしな。けど少し遠いぞ」
「それじゃ三人で行きませんか? 向こうで魚食べましょう。わたくしは水浴びもしたいですし」
「そっか。おいらはいいぞ。けど水浴びにこだわるんだな。シア別に全然臭くないぞ?」
「臭いとか臭くないとか言わないでくださいまし。毎日洗浄してるから大丈夫なのは分かってますが、落ち着かないんです。たまにでも水浴びしておかないと」
「ふーん、人間ってそういうものなのか? まあいいや、三人で行くなら朝に食べていってからの方が良いよな。おいら待ってるからシア食べてきなよ。もう中でフリーダが準備してるはずだ」
確かに集会場の煙突からは煙が出てましたわ。
「ありがとうエルノ。じゃあ少し待ってて、食べてくるわ」
集会場の炊事場でフリーダが料理を作ってくれていました。
「おはよう、ございます、シア、さま。ブライ、もうすぐ、できる」
「ありがとう、フリーダ。ブライって何かしら?」
「ゴブリン、教えてくれた、穀物、煮物」
「穀物! 確かにそんなのも蓄えていたわね。どこかに畑でもあるのかしら。穀物の煮物ってことはおかゆとかかしら。あら本当、草や肉も入っているんですね」
「コボルド、食べない、おいしい、のに」
フリーダがあんな環境でしたのにそこまで酷くは痩せていなかったのはゴブリンがフリーダにあった食べ物を与えてくれていたからのようですね。料理番にでもさせようとしていたのかしら。ともかくゴブリンの食事は人間に似てるようね。肉ばかりでなくて助かったわ。
フリーダとおいしく朝食を取っていると、警戒の魔法に何かがひっかかりましたわ。慌ててかきこんで、伸縮自在槍を伸ばしてフリーダにはここに残るように言って、外に出ます。
「エルノ、何かが警戒にひっかかったわ、注意して見に行きましょう!」




