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三人でくるまる

「シア、さま、動かない」


抱きついていたフリーダがそっとわたくしに寄り添ってくれます。

痛みで声が出るのを必死で抑え込みます。

……食いしばりすぎてあごまで痛くなってきましたわ。



「ヒール」


そうでした、フリーダはヒールが使えるんでしたね。

怪我をしたこともヒールを受けたこともなかったので、こういうものなのでしょうか?

ヒールをかけてから痛いは痛いはずなのですが、そう感じないというか、なんだか変な気分です。


痛みを忘れてすこしぼぅっとしてしまいました。

気づくとすでに肩にはあれだけひどい傷口があったのに、今は傷跡一つ残っていません。

傷跡が残らなかったことに安堵します。



「ありがとう、フリーダ。おかげで痛くなくなったし、傷跡も残ってないわ」


ゆっくり肩を動かしてみます。

肩の骨に当たって鉾先がずれた感じでしたが、骨にも異常はない、あるいはヒールで癒やしてもらったようですわ。



「よかった、シア、さま」


フリーダが笑顔で返してくれました。



「おー、やっぱりフリーダのヒールはすごいな。おいらも助かったぜ」


返り血を浴びているエルノもちゃかした感じで言っていますが、震えているのは見逃しませんわ。


「エルノもありがとう。おかげで助かったわ」


エルノの手を引っ張ってフリーダと一緒に抱きつきます。これが一番の感謝の仕方だと思いますので。


「あ、あいつらはおいらの、コボルドの敵みたいなものだったからな。

ゴブリンが来る前から悪いやつらだったし、裏切ったし、刺されたしな」



「そうだったのね」


クァルも肩に乗ったまま頭をわたくし達の頭が集まっている場所に突っ込んできました。

仲間に入れろ、ということですね。


「忘れてないよ、クァル。あなたのおかげもあったって聞いてるからね、ありがとう」



「クァ」


普段より小さくクァルが鳴きました。

頭が近いから耳も近いと分かっている感じですね。

本当にクァルは賢いですね。



「さてと、それじゃおいらはこいつらをゴブリンを捨てたところに運んでおくよ。こいつらと一緒に寝たくないだろ?」


エルノがありがたいことを言ってくれます。

照れ隠しな気もしますが。


「けど、真っ暗よ? いいの?」



「おいらたちコボルドはこれぐらいの暗さなら見えるんだ。

フリーダには無理だからシアにも無理だろうし、クァルは運べないだろ?

ならおいらがやったほうがいい」


……まったく反論できない完璧な論理ですわ。

エルノって賢いのかしら?

それともコボルドたちはみんな賢いのかしら?

でも襲ってきた三人組のことを考えると、ねぇ。



「分かったわ、ありがとう。汚れるだろうからこっちに帰ってきてね。綺麗にするから」


「わかった」



わたくしも自らの血で結構汚れてしまったし、フリーダにもいくらか返り血を浴びさせてしまったので、毛布とともに洗浄の魔法を使います。そして再び寝床を整理していつでも寝られるようにします。



エルノが帰ってきました。

切り刻んでしまったやつもいたので予想通り返り血でべっとりです。


「ありがとう、エルノ、目をつぶってね」


エルノが身構えてから洗浄の魔法をかけます。

すぐにふわふわとした見た目が戻ってきました。


「今日はエルノも一緒に寝ましょう。もう気遣う必要もないですし」


エルノのふわふわの毛はきっと温かいでしょう。


「んー、そうだな。もう大丈夫だと思うけどなにかあったら、側にいたほうがいいしな」



今回は寝室から持ってきた洗浄済みの布を下に引いているのでフリーダとエルノがいても問題ありません。

三人で毛布に包まります。


三人とも洗浄したてですからまったく匂いはありませんし、エルノの体温が結構高いせいかふわふわなせいか、すぐに温まってきて、全然寒くありません。


わたくしは頑張って起きていましたが、すぐにエルノが寝て、次にフリーダが寝付きました。

皆安心して寝てくれたようです。

わたくしは警戒の魔法をもう一度チェックして寝ます。



「……かあちゃん」


寝言でエルノが呟きました。……見た目小さいですし、まだ子供だったのかもしれません。

ゴブリンに襲われたとのことですし、そのお母様は……、ということなのでしょうね。



帝国の孤児院のことを思い出します。

わたくしもノイラート家からの寄付金を持って孤児院に行ったことがあります。

そこで院長様とお話したのですが、圧倒的に職員が足りないとおっしゃっていました。

運営資金のほとんどを子どもたちのためだけで使い切ってしまうため、人を雇うお金がない、と。

実際失礼ながら聞きましたが、院長様も職員もほとんどボランティアなレベルの給金しか受け取っていませんでした。

それなのに愛情深く子どもたちに接してくれているのが救いでしたが、明らかにオーバーワークに見えました。



すなわち帝国は院長様などの善意に甘えていたのです。

子どもたちには愛情が必要ですわ、今のこのエルノを見て、改めて痛感しましたわ。

あんなに賢くて我慢強くて、勇敢なエルノでも、夢の中ではお母様を求めているのですから。



その孤児院だけはなんとかノイラート家の援助で人を増やさせましたが、帝国は孤児院を乱立させていきました。

子どもたちへの費用だけでかつかつでしたのに、さらに資金を減らされては子どもたちも可哀想なことにしかなってない気がします。



聖女が孤児院を増やすことがいいことだと言っていましたので、思わず反論したことがありました。


しかし帰ってきた言葉は、脳天気と言うか世の中が無限の善意で成り立っている、かのような言葉でした。



「お金ばかり与えても仕方ないでしょう?

それよりも愛を与えないと。

孤児院にはいる子どもたちの数に比べて面倒を見てくれる人が少ないと聞いています。

ならば孤児院を増やせば孤児たちは分散して、より多くの愛を受け取れるでしょう」



聖女のいうことはいつもこんな感じ。

大筋では間違っていないところがより問題が大きいですわ。


なんとかして生き延びて、無事に帝国に戻って、殿下にビンタして、考えを改めてもらわないといけませんわね。

むしろわたくしが殿下に成り代わった方が早いのでしょうけど、それは実現どころか考えるだけでも反逆ですわね……。


今は帝国の未来を考えている余裕はありませんわね。

帝国に再び戻るにしろ、まずここで生き延びないと。

幸い拠点や仲間が少し出来ましたが、まだまだです。


皆を守りつつ、生き延びないと……。


そんなことを考えているといつしか眠ってしまいました。

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