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夜襲

甘い水いちごは水分が多いせいか、甘いおかげか、すぐにお腹がいっぱいになります。

今日も数個食べただけで満足できました。

フリーダも小さめのを三つほど食べただけですね。

おかげでこの群生地、何度か利用できそうです。

まだまだいっぱい緑のままの実がありますしね。



満足して集落に帰ってからは、フリーダと一緒にエルノに集落の案内をしてもらいました。

エルノによるとエルノが生まれた時からここはコボルドの集落で、少し前にどこからともなくやってきたゴブリンたちに蹂躙されてしまったようです。

そこで生き残った少数のコボルドは木の檻に入れらてて奴隷になっていたそうです。

フリーダは別の檻に一人で入れられていたのもゴブリンたちに人間だと思われいたからなのと貴重な癒し手だったからみたいね。



ゴブリンたちによって多少変化はしたものの、エルノは集落の中で動いていたから何がどこにあるのかよく分かっていました。

ゴブリンたちは新たに調理場や鍛冶場を作っていたようで、竈が複数ありましたし、銅製の鍋などもありました。

石器から青銅器に移行中だったのかしら。

これはありがたいです。



鍛冶場は、正直わたくしには使えませんのでそのままですが、調理場には有用なものが多くありました。

材料さえあればそれなりに贅沢なものも作れそうです。



食料庫も第二があったようで、野菜系のようなものが置いてありました。

葉っぱや穀物もありますね。

ゴブリンは雑食性のようです。

葉っぱは倉庫に置かれっぱなしですのに青々としています。

もしかすると保存の魔法がかかっている食料庫なのかもしれませんね。

さすがに永続ではなさそうですが、劣化するのを遅くする効果はありそうです。

となると魔法技術はわたくし達人間なみにはあったということになりますね。

ゴブリンたちが油断していたようで本当に良かったです。

そんな高度な魔法を使えるゴブリンに先制攻撃されていたらわたくしではまず勝てませんでしたわ。



武器庫は石器ばかりでしたわ。

使えるのは弓ぐらいかしら。

わたくし自身は弓は使えませんが。



寝室はどこも汚れてました。

三匹のコボルドが出てきた寝室なんかはお酒臭いぐらいでしたわ。

別の寝室に粗末な布がたくさんがありましたので、これは回収して洗浄したら使えそうですね。

基本的に寝室小屋はどこも小さいのでわたくしが寝るには苦労しそうです。

ですので一番大きい集会場みたいな小屋を改造して寝室にした方が良さそうですね。



そうこうしていたら日が暮れてきました。

一日が経つのが早いです。

学園生活ではこんなに一日が短いと感じた記憶がないですわ。

それだけ楽させてもらっていたということなのかしら?



寝る場所の確保は出来ませんでしたが、昨日の野営でも不都合はなかったので昨日どおりでいいでしょう。

エルノにも一緒に寝ますか? と聞きましたが、エルノは尻尾は振っていましたが、断りました。

どうもまだあの三匹を警戒しているようですね。



その三匹が意気揚々と帰ってきました。

すでに解体した獲物をたくさん持って帰ってきてくれたようです。



「ただいま帰りました。こちらをお収めください」


そういって一人が血が滴った布袋を渡してきました。



「え? な、なにかしら?」


嫌な予感しかしませんが、一応袋を開けて覗いてみました。


「ひっ」


……やっぱり内蔵でした。

思わず変な声を上げてしまいましたわ。

内臓も食べられると聞いたことはありますが、今はいりませんわ。

ちゃんとしたお肉もあるのですし。



「わ、わたくしはこれはいりませんわ。皆さんでどうぞ。そちらのお肉を分けてもらえると嬉しいですわ」


「え? それでいいのですか?」


怪訝な顔つきでゴボルドたちがわたくしを見てきます。



「ええ、もちろんですわ。あなた方が狩ってきたものでしょう。

あなた方が一番良いものを受け取るべきですわ。

……これは良いものなのですよね?」


まさか嫌がらせで内蔵を渡した、ってわけじゃないですよね。

もしそうであってもこの言い方なら問題ないはずです。


「内臓は我らの好物ですからありがたいですが、いいのですか?」


「ええ、もちろんですわ。むしろわたくしはそちらの肉のほうが嬉しいです」


二人が担いだ太くて長い枝にぶら下がっている、もともと足だっただろう肉を指差してそう言います。


「わかりました。内臓は我らがいただきます。足の肉の方は食料庫に置いておきますので、ご自由に」


三匹のうちのリーダー格がそう言って引き下がってくれました。

なんだかいろいろ引っかかりますが、まあまとまってお肉も手に入ったので良かったですわ。



夕食はせっかくなので今日取ってきたお肉にしてもらおうかとフリーダに頼みましたが、フリーダによるととれたての肉はあまりおいしくないらしくしばらく置いておいたほうがいいらしいです。

ならなおのことお肉はたくさん溜め込んだほうがいいということかしら。

保存の魔法のかかった食料庫があるならすぐに腐ってしまうってこともありませんし。



今日は食料庫で見つけた葉っぱと調理場で見つけた鍋、汲んできた水を使っていつもの肉ときのこも入れて鍋にします。

味付けはフリーダにある程度してもらってから、背負い袋に入っていた調味料もあいそうなものを使います。

ゴブリンたちが使っていた食器なども使います。

水は貴重ですので全部洗浄の魔法で綺麗にしています。



最初はかなり匂いがきつくて大丈夫かな?と思いましたが、なにかフリーダが刻んだものを入れたら匂いもなくなってきました。

すごいものですね。まるで魔法みたいです。

出来上がったものは、壁で食べた最後の夕食のような粗野な味ではありますが美味しいものでした。



クァルもコボルド同様食事は少なくていいのか、あるいは気に入ったのかエルノのところで寝ているようです。

わたくし達は食べたあと少しフリーダの話を聞いてから、寝ました。

昨日同様、警戒の魔法を三重にしてから。



警戒の魔法に起こされました。

……寝てから数時間は経っているようで、焚き火はすでに消えています。


?!


警戒の魔法は三重の内側、一番近い警戒円が発動しています! 何かがすぐ近くにいます。

閃光の魔法を使います。

魔寄りの火属性の魔法なのでわたくしは楽にこの魔法を使えます。

目くらましと同時に状況確認用です。


わたくし達が寝ている周囲に強い光が発生して、辺りを照らします。

近寄ってきていたのは手に槍をもった三匹のコボルドでした。

あからさまに目を潰されているようです。

今のうちにフリーダも起こし、魔法で焚き火に火を入れて、魔法の槍を手のひらに握ります。



『裏切ったようだな。残念だがそんな予兆はありまくっていたしな』


起きてたのルファ? なんで起こしてくれなかったのよ。


『いや、警戒の魔法使ってたし、今回は俺も寝てた。警戒で起きたけどな』



「お前は俺らのリーダーじゃない。だから殺す」


よくわからないことをコボルドが言います。


「ちょ、ちょっと待ってください。わたくしはあなた方のリーダーになった覚えはありませんわ!」


「お前は俺らを助け、命令した。しかし一番良い食い物を取らなかった。お前がいると俺たちは混乱する!」


「命令するならちゃんと君臨しろ」


「リーダーが獲物を譲るとか弱いやつ! 弱いやつがリーダーだと群れが困る。だから排除しないと!」



三匹が口々に言い出します。

……どうもわたくしは彼らのリーダーには不適格だったらしいですわ。

よくわからない考えもまじっていますし、わたくしやたぶん一緒に寝ていたフリーダの命も狙ってるみたいですし、これはもう敵になってしまっていますね。



「ちょっと、待って……」


……わたくしはまたもや失敗してしまったようです。

他者の考えを聞くこともせず、自分の価値観を押し付けて信頼を失ってしまったみたいです。


しかし今は反撃できる状況で命を狙われています。

すれ違いは悲しいですが、もはや説明したところで聞いてはくれないでしょう。

聞く相手なら最初から寝込みは襲わないと思いますし。



「問答無用!」


一匹が飛びかかってきました。避けれなくはないですが、フリーダがどうなるか分かりません。

迎撃しないと。

握っていた槍を伸ばしならが飛びかかってきた相手に投げつけます。

槍を投げたことなんかなかったけど、近かったおかげかまっすぐ飛びかかってきてくれたおかげか、相手の槍がこちらに届く前にわたくしが投げた槍が相手の胸に突き刺さりました。


『右だ!』


仮にも会話したことのある相手を殺してしまったことにショックを受けているとルファが警告してくれました。

そのおかげで自然と体も頭も動かすことが出来ました。


「風刃!」


風の攻撃魔法を使います。装甲のないコボルドは風刃を食らって見るも無残な姿になりました。



最後の一匹も飛びかかってきました。


「シア!」


フリーダが歯をむいてわたくしをかばって構えました。

ツメもキバもないのにそれを使って襲ってくるコボルドを倒そうと。

わたくしも反撃する方法がなく、避けることもできません。

避けたら飛びかかろうとしているフリーダに攻撃が行くでしょう。

なのでフリーダを飛び出さないように包むようにかばいます。


コボルドの石槍がわたくしの肩に刺さり、滑って肩を引き裂きます。


「ぐっ!」


思わずうめき声を出してしまいます。

めちゃくちゃ痛いです。

授業で間違って受けてしまった木剣の比ではありません。

すごく痛いですが、一撃でやられることはなく、わずかですが時間ができました。


「風圧!」


詠唱がほとんどない、風の魔法です。ダメージはほぼなく、相手を近づけさせず吹き飛ばすだけです。

だけどこの効果が今は必要でした。


魔法によって生まれた空気の壁を通ることが出来ず、コボルドがその場に攻撃の姿勢のままで一瞬止まり、後ずさりました。

その隙をついてフリーダを抱えてその場から離れます。

コボルドは一瞬の魔法の効果が終わり、その元々の勢いでまたわたくしを突こうとしますが、もうそこにはわたくし達はいません。


「うわああああ!」


後ろから叫び声が聞こえたと思ったら、エルノが槍を構え動きが止まったコボルドに突撃して、その槍で相手の太ももを貫きました。

そのあとからクァルも飛んできて、ふとももを貫かれて動けないコボルドの頭にブレスを吹いてとどめをさしていました。


うわー、えぐい……、とか思いましたが、わたくしがやったこともたいがいえぐかったですね。



「ありがとう、エルノ。助かったわ。よく気づいたわね」


胸に突き刺さったままの槍は抜いて回収します。この槍には何度助けられているか。

あのヘルムの兵士には感謝しかありませんわ。


「おいらも警戒してたけどクァルが教えてくれたんだ。あいつらが動き出したって」


そうなの、クァルにも助けられているわね。

むしろ今わたくしの周りにいる人達はルファも含めてわたくしを助けてばかりで、わたくしは彼らを助けられているのかしら?

もっと頑張らないと。


クァルが心配そうにわたくしの怪我をしていない方の肩に止まったので、のどをさすってあげます。

クァルがこれがお気に入りのようですので。



「シア、さま、怪我……」


……あ、思い出したら急に痛くなりましたわ。

ぎゃー、痛いです痛いですわ、血が流れてますわ。


あー、これでわたくしは死ぬのですか?!

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