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美味しい笑顔

今日は目覚めがいいですわ!

ちょっとフリーダを抱き枕にしちゃったけど、フリーダもこっちに抱きついてきたからいいですわよね。

おかげで全然寒くありませんでしたし、やっぱり一人じゃないってのは大きいのかも。

幸い昨夜は警戒の魔法もまったく働かなかったからぐっすり寝れましたしね。



フリーダも一緒に目が覚めたけど、まだおねむのようで、ぼうっとしているわ。

今のうちにわたくしの分の洗浄をしておきましょう。

魔力は昨日の葬炎でけっこう減ったみたいだけど、寝たおかげでほぼ満タンだし、気にしなくていいレベルのはずですわ。

念の為ちゃんと発動体の短剣を使いますけどね。



「おはよう、ございます、ご主人、さま」


……そういえばフリーダにわたくし、名乗ってなかったわね。

ご主人さまなんて言われたくないわ。


「フリーダ、わたくしの名前はアクレシア・ノイラートよ。シアでいいわ」



「シア、さま」


片言だから様も気になりますけど、言われなれてますし、それでいいですわ。


「さっそくだけど朝ご飯、作ってもらえるかしら? きのこがあるからそれを使ってちょうだい」


「はい、シア、さま」



フリーダには食料小屋に自由に出入りしてもらうことにしました。

待っている間フリーダと一緒に入った食料小屋から肉と水を入れたコップを持って、木の檻で寝ている小さなコボルドの元へ行きました。

寝ていたクァルがわたくしに気づいてクァと鳴きました。



「大丈夫?」


「……ああ、食べれたのでだいぶと回復した。その……ありがとう」


「動けるようになったら水源の位置知ってたら教えてくれない?」


「分かった。もう動けるからこっちはいつでもいい」


おお、良かった。水源あったみたいですわ。


「それではこちらの用意が整ったらまた来ますわ、その時にお願いします。クァルはついてきてもいいし自由にしてていいわよ」


クァルにも生に近い肉を渡してから、フリーダのところへ戻ります。



戻る途中、三匹のコボルドたちが向こうの小屋から出てきました。

やっぱり小屋で寝ていたのですね。

あくびをしながら緊張感なく出てきましたわ。


「おはようございます!」


先制して声をかけておきましょう。


「……あ、おはよう、ございます」


忘れてた! って感じの挨拶ね。いいけど。


「あなたたち、今日は何をするのか決まっているのかしら?」


一匹が代表して答えてくれる。


「いえ、とくには」


「では、食べ物を集めてきてくれるかしら? 多いにこしたことはないでしょ?」


「そうですね、さっそくいってきます、おいお前ら狩りに行こうぜ」


これで三匹のコボルドのことはいいでしょう。ゴブリンの死体を置いてあるところへ行きます。


うっ、すでに虫が集っていますわ。まだ匂いまではしてないのですけど。やっぱり早めに処分しておくべきですわね。


わたくしはゴブリンの死体を積み重ねた下の地面に葬炎を設置して発動します。

周りに木々はないので燃え移ることもないでしょう。


「葬炎」


今日は何故か白い炎があがりました。

昨日と何が違うのかしら?

ゴブリンだからでしょうか?


白い炎は昨日の青い炎よりも背が低く、量が多いせいか時間もかかるようです。

十分ぐらいでようやく炎の中に影が見えなくなりました。

火が消えると若干、焼け残りというわけではないですが灰が山になっていました。

灰も残らないと言っていましたのに、何故かしら。


まだ熱を持っていると危ないので、いったん放置してあとで吹きちらしましょう。


お腹空きましたわ、もう出来ているでしょうか?


「おかえり、なさい、シア、さま。串焼き、出来ています」


焚き火に大きめの串が二本焼かれていました。距離的にもう焼けていて焦げ付かないようにしてくれていたようです。



「お待たせしました。さあ食べましょう」


きのこと昨日食べた肉、それに見たことのないものが刺さっていました。


「フリーダ、これは何?」


「草の根が太った、もの。ゴブリン、あたし、しか、食べません、だから、たくさん、ある」


へぇ、肉や肉の味ばかりだったからか、少し匂いがきついですが、すごく美味しく感じるわ。

今までの食事で食べた覚えはないですが、一般的に食べられているものなのでしょうか?

……まさか人間だけに効果のある毒があるとか、じゃないでしょうね?



『心配するな、一般的に食べられているもののはずだ。フリーダはコボルドだが、身体的には人間の方に近いしな。毒があるならフリーダがまずやられているはずさ』


あら、起きていらしたの? ルファ。

『俺はずっと起きてるさ。休止してるときもあるけどな。

毒かどうか気にしすぎて精神やられても困るから出てきただけさ。

やばそうなのは俺が言うから安心しな』


ええ、助かりますわ。見たこともないものばかりですもの。


「ちょうどいい量でしたし、美味しかったですわ、フリーダ、ありがとう」


食べ終えてからフリーダに声をかけると、返事はなかったものの笑顔になってくれました。


「さて、では軽く片付けてから出かけましょうか、フリーダも一緒にね」



しばらくしてフリーダと一緒に木の檻に行きます。


「いけるかしら?」


「ああ、いける。念の為武器持っていきたいんだけど、いいか?」


あら、あの三匹のコボルドはそんな確認も取らず武器を持っていったけど、この子が丁寧なだけかしら?


「ええ、もちろんよ。あ、ちょっと待って」


小さなコボルドが木の檻から出てきて、直立不動で待ってくれる。コボルドって素直な子が多いのかしら?



「体を綺麗にするから、すこし目を瞑って息を止めてもらえる?」


「わかった」


そういって小さなコボルドは目を瞑って息を止めてくれた。短剣を抜いて手早く洗浄の魔法を使います。


この子も黒っぽかったけど、本当は茶色なのね。べとついて毛に見えなかった部分がふわふわの毛になってくれました。

あら、背中の傷、まだ治りきっていないようね。

わたくしでも分かるぐらい、その部分には傷が残っていました。



「シア、さま、あたし、癒やし、使って、いいですか?」


「え? いやし? ええ、いいわよ」


「また使ってくれるのか、助かるよ、実はまだ少し痛かったんだ」


フリーダが小さなコボルドの傷口に手をかざすと、かさぶたがぽろぽろと落ちてその下から健康な皮膚が出てきました。

怪我をしていた部分にはさすがに毛までは生えませんでしたが、周りの毛は伸びたようで、すぐにパッと見ただけではそこに傷があったことが分からなくなりました。



「フリーダ、あなた、ヒールが使えたのね。すごいわ」


実際、ヒールの魔法は適正が強くないと使えないとされていて、ごく一部の子しか学園でも使える人はいませんでした。

残念ながらわたくしもヒールに関しては適正なしでした。


それがフリーダには使えるようです。

小さなコボルドの言い方からすると、怪我をした時にもヒールしてあげていたみたいね。

やっぱりフリーダは優しいいい子なのね。

この小さなコボルドもフリーダから癒やしを貰えるみたいだし、コボルドっていい子が多いのかしら。

あの三匹のコボルドも言うことは聞いてくれるけど、なんだか雰囲気が悪いのよね。

この子に怪我させたのもあの三匹みたいだし。



「ありがとう、鬱陶しいやつ」


ああ、名前を変えてもらったこと言っていませんでしたね。

それどころかわたくしも名乗っていませんし、この小さなコボルドの名前も聞いていませんでしたわ。



「そうそう、わたくしの名前はアクレシア・ノイラートといいます。長いのでシアで構いませんわ。あなたの名前も教えてくれる?」


「おいらの名前は勤勉な者だ」


ああ、また自動翻訳の誤訳?ね。


「ごめんなさい、わたくしにはあなたの名前はとても言いにくいわ。別の名前、あだ名をつけていいかしら?」


「あたし、鬱陶しいものじゃない、フリーダ、なった」



「ひどい名前だったものな、良かったな、フリーダ。じゃあおいらも名付けてくれ」


「えーっと、それじゃエルノという名前はどうかな?」


小さなコボルドは尻尾を振りながら頷いてくれる。


「うん、いいな。おいらは勤勉な者だけど、エルノでもある。よろしくな、シア」


怪我を治してもらっていたおかげか、エルノはフリーダと仲良くしてくれそうですね。

三匹のコボルドは完全にフリーダのこと無視していましたから。



槍を持ったエルノの先導で、わたくしとフリーダが二人で洗浄した空の水瓶を持って着いていきます。

わたくしたちの後ろにはクァルが飛んで着いてきてくれています。


水源は意外と近く、湧き水の出ている泉でした。近くで良かったですが、小さな泉でしたので水浴びとかは無理そうですね。

水をフリーダに汲んでもらって帰ります。


行きは空でしたから軽かった水瓶ですが、帰りはとても重いです。

水ってこんなに重いものだったのですね。

水袋で薄々気づいてはいましたけど。

でもわたくしと一緒に水瓶を持っているフリーダは楽々といった感じですわ。

小さいのに力持ちなんですね。

……もしかしてわたくしに力がないだけなのですか?!



こんなところで生きていくにはもっと力があったほうがいいよね、とか考えながら集落に戻りました。


「そうだ、エルノ。あなた料理したものって食べれるのかしら?」


「ん? 料理ってなんだ? うっと……フリーダが食い物にやってるものか? 食べれないことはないけどおいらはそのままの方が良いな」


そうなんですね。人間も生のものを食べることはありますが、だいたい火を通しますからね。

だいぶと違うものです。やっぱりフリーダはルファが言っていた通り人間に近いのですね。



水はあったし今度は食料を探さないとね。

美味しい野菜が食べたいですけど、あるのかしら?

フリーダが昨日出してくれた草の根は美味しかったですが。

出来たら葉が食べたいですわ。

……でも贅沢は言っていられませんね。

あとでフリーダにいろいろ聞いてみましょう。



お昼は水いちごにしました。

集落からそれほど離れていませんし、エルノは昼ご飯はいらないと言っていたので。

コボルドは一日に一度の食事で十分なんだとか。

それに合わせてフリーダも一日一回の食事しか今までしていなかったらしいですわ。

道理で痩せているはずです。

でも人間に近いのでしたら二食、できれば三食食べたほうがいいですよね。

絶対にお腹空くでしょうし。

でも急に回数増やして肉ばかり食べるのもダメかとも思いまして。

フリーダは食べたことがなかったらしいですがゴブリンたちが食べているのは見たことがあるそうです。


すっかり冷えているだろうゴブリンたちの灰を風の魔法で吹き散らしてから、水いちごがなっている場所に行きました。



開けた場所なので周囲を警戒しながら食べます。

ついてきたクァルも一緒に警戒してくれます。


まずわたくしが食べ方をフリーダに見せるために実を一つ取ってまるまる口の中に入れます。

美味しい果汁が口の中に溢れます。

これは食べながらはしゃべれないので、ちゃんと口の中からなくなったあとにフリーダに説明します。


「こぼれちゃうから一気に全部を口の中にね。

あとあんまり緑色が多いのはダメよ。

できるだけ赤くなってるやつね」


「わかった」


フリーダは下の方にあった赤八、緑ニぐらいの小さな実を取って口の中に入れました。



「んー?!」


普段あまり動かないフリーダの表情が緩みました。さすが水いちごです。


「なに、これ。すごく、おいしい」


「でしょう? すっごく甘いでしょ?」



フリーダは一瞬きょとんとした表情になった。


「あ、まい? この、美味しさ、こと?」


ああ、もしかするとフリーダは果実類を食べたことがないのかも知れませんね。

コボルドたちはエルノとか見てるとどうも肉食みたいですし。

コボルドとしてコボルドの中で育ったフリーダはここまで甘いものを食べる機会がなかったのかもしれません。



「そうよ、フリーダはあまりこういうの食べたことなかったのかな? これからは一緒に食べましょうね」


「はい、シア、さま。お供」


すごくいい笑顔を見せてくれました。ここまでの笑顔は初めてです。やっぱり美味しいものは正義なのですね。

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