#46 彼女の思惑
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あの方は光に囚われていた。
あの方自身が、まばゆい光のような存在で、ほかの天使たちは彼を崇拝すらしていた。だけど彼は、そんな己をひどく嫌っていた。
光あるところに闇は集う。それはこの世界の断りでもあった。
それを彼は体現していたのだ。何をしているわけでもない、何もしていないのに彼の周りには天界に微々たる量存在していた闇を、呼び寄せていた。彼が持つ多大な光により、それはすぐ浄化されてはいたものの、それはたちまち噂となり彼に寄り付くものは減った。
力の強い高位な天使たちは、彼の体質に恐れを抱くことはなく、普通に接していた。でもどこか距離はあった。彼が距離を置いていたのかもしれないが、特別親しい人物はいなかった。
どうして彼は、こんなにも苦しめられなければならなかったの。
光と闇、そのどちらにも彼は苦しめられその行動を制限された。彼は多く語ろうとしないけど、私にはわかった。
だからどうしても救いたかったの、だから願った――――光も影もなくなれ、と。
だけど失敗。光は消えたけど、闇は今もなお存在し、さらに世界全てを支配している。どうして?
きっと力の強い天使が消えなかったからだ。贄として消えなかったから、きっと対価の光が足りなかったんだ。だから大部分の闇は引き寄せられず残ってしまったんだわ。
だったら、もう一度願いましょう。
別の世界から大きな力を持つ天使を喚んで、今度こそ何にも縛られない世界にしましょう。
もうすぐ、もうすぐですよアシュタロス様……。
あなたを苦しめる光の呪縛から、解き放って差し上げますからね。
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聞こえてきたのは、女の人の声。きっとあの人だ、アシュタロスさんが会いに行ったあの人。でも今のはどう言う意味だろう。
ダメだ、意識が朦朧として何も考えられなくなる。
でも、僕はここに――――この中にいてはきっといけないんだ。
あぁ体が動かない、深い深い闇が近づいてくる。
僕を飲み込もうと、迫ってきてる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「アシュタロス」
「なんだ?」
「俺とアグレアスで、あの女の気をそらす……」
「――――わかった、やってみよう」
そう言うやいなや、提案したバエルとアグレアスはレーシェルの方へと向かっていった。まずは、彼女を闇の核から引き離すことが先決だった。
手加減せず、彼女の方に攻撃を仕掛けたのだが、それは彼女の手前で見えない壁に阻まれた。
アグレアスも同じように弾かれたようで、やや後ろに後退している。
「無駄ですよ」
「さすがといったところか」
「バエル様?」
彼女の言葉を聞き、バエルは苦々しげに笑った。
「さすがアシュタロスやベリアルと同位の天使だったことはあるな。死してなお未だに力は衰えていないのか」
「やはり……そうですか……。これは厄介ですね」
「お前も同じようなものだろう」
「いえいえ、私は中間でしたし。今は王補佐何かやってますけどね」
にこやかに言い放ったアグレアスに、そうかと短く返事を返したバエルはこれからどうやって彼女の気をそらそうかと、考えを巡らせた。




