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#45 闇に漂う天使

遅くなり申し訳ないです。


そしてここに魔王様がいることをすっかり忘れてたのを思い出しました。

まぁ、クールな性格なんで口数少なかったとでもしましょう。


今回はちゃんと話してます。

いい加減終わらせたい。


 訪れた沈黙は、不気味にもその空間を支配している。誰もが口を閉じ、探りを入れているのだろう。それほど今のこの状況は、理解しがたいものだった。


 しかしそれもまた長くは続かない。先に言葉を発したのは、レーシェル似の女性だった。


「――――……なぜそんな顔をなされるんですか?」


 彼女が発した言葉は、先程とは違いカタコトではなかった。アシュタロスの脳裏に、生きていた頃の彼女の姿が浮かび上がる。あの時と変わらない口調、声。


「お前は……誰だ(・・)?」

「何を仰るのですか?レーシェルです、私の顔お忘れですか?」

「……そんなはず、ありえない」

「死者は生き返らない。例え王という立場にいたとしても、それはこの世界の理によって、定められた掟。たとえそれは神であっても、できぬこと。それなのに貴様は生き返ったとでも言うのか?」

「あら、随分私は疑われているようです。悲しいことですね……。こんな闇が支配する世界に、長い間いた影響でしょう……。ですがご安心ください、もうすぐ終わります」


 彼女が黙って微笑んだ瞬間だった。後ろで怪しく光り、暴走し始めていた闇の核から、幾重もの帯状の触手が彼らの方に向かってきた。そしてそれらは一直線に、ある一箇所のみを狙って伸びてくる。


「アシュタロス!!」

「っく――――?!」


 しかし脱力しきったノエルを抱え、咄嗟に避けるのは不可能だった。

 それでも避けようと右に動いたものの、その触手はノエルの片腕に巻き付いた。


「捕まえました」


 そしてノエルの体は、驚くほどの力に引っ張られ、アシュタロスの腕の中から離れていく。


「ノエル――――っ!!?」

「――――」


 虚ろな瞳のままのノエルは、掴まれていない片腕をアシュタロスの方に向け差し出した。だがそこに力は込められておらず、ただ引っ張られる反動で動いただけなのかもしれない。


 アシュタロスも手を差し出したが、両者の腕が合わさることはなく、ただ空を切っただけだった。


 その一瞬、虚ろな瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。


 そしてノエルの体は何の抵抗もなく、闇の核の中に引きずり込まれ姿は見えなくなった。





 真っ暗。



 何も見えない、聞こえない。


 ただ感じるのは、酷い苦しみと永久の悲しみ。そして――――潰えることのない願い



 渦巻く膨大な闇の渦の中、ノエルはなされるがまま漂うだけだった。




 ノエルを取り込んだ核に、レーシェルはそっと手をついた。


「捕まえた……これで、今度こそ……」


 その時彼女の後方に、激しい衝撃が襲いかかった。しかしそれは彼女の手前で弾かれた。


「何をなさるのですか、アシュタロス様?」

「返せ」

「何をでしょう?あの天使は、必要なのです、返すわけにはいきません」

「貴様の企みはなんだ?何が目的での行いだ?」

「あなたには関係ない、闇の王。あなたももうすぐ消える存在なんですから」

「お前は一体、何をする気だ?」


 しかし彼女は、その問いかけに答えなかった。再び視線を核に戻し、怪しげな笑みを浮かべていた。


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