#44 記憶の中の存在
遅くなりました(^_^;)
頭痛の中、僕の頭の中に何かが流れ込んできた。
それは遠い日の記憶――――
この世界がまだ光と闇に分かれていた時の記憶――――
その日はなんでもない日だった。
街は賑わい、変わらぬ日々を過ごしていた。誰しもがこの世に終が訪れるとも知らず、彼らはただそこにいた。
もちろんそれは今現在、悪魔として生きている彼らも同じだった。
アシュタロスはその日、誰かとあっていた。
ノエルが知らぬ、今は亡き者と――――
再び意識が現実に呼び覚まされる。気がつけば、意識を失っていたのか、アシュタロスさんの腕の中にいた。
「アシュ……タロスさん……」
「大丈夫か?辛いなら、ここから出たほうが……」
「あなたが……最後に……天界の最後の日に、会いに行ったあの人は……誰ですか?」
「何……?」
顔はぼやけていて見えなかった。声もよく聞こえなかった。
だけどどこかで、記憶の片隅で何かが引っかかる。
「今……頭の中に……見えたんです。次々に崩落してくなか、消え始めた誰かに……あなたは会いに行ってました……。それは……誰ですか?」
「……さぁな。覚えてない誰かに会いにいくなんて暇、あったと思うか?」
「いいえ、あなたは確かに……誰かに会いに向かったはずです。あなたも危機に面していたのにも関わらず」
『ヤット――――カイホウシテアゲラレル』
途切れ途切れに聞こえてくる謎の声。そして垣間見える過去の出来事。それらが何を意味しているのか、ノエルは未だわかってはいなかった。
僕の問いかけを聞き、アシュタロスさんは黙り込んでしまった。依然僕から目を離さずに、先ほどの問いかけに考えを巡らせているのだろうか。
『アナタヲクルシメル――――ヒカリトヤミノシュウエンヲ』
その言葉が聞こえた瞬間、あたりは闇の因子が満ちあふれた。そしてそれとともに僕らの前に一人の女性が現れた。
そして彼女の周囲には、あの黒い人型が十体ほど出現していた。
現れた女性を目にして、アシュタロスさんはひどく動揺していた。
「お前は……何故ここに――――?!」
『アナタノタメニ――――ヒカリトヤミヲ……ナキモノニ』
その時僕の脳裏に再び、過去の記憶が入り込む。そしてアシュタロスさんが会いに行っていた相手の姿をついに鮮明に見た。
それは今目の前に現れた、女性だった。
「アシュタロス……」
「惑わされるな、アレは違う。あいつはあの時確かに死んだ、それは俺が確認した。だからここに現れるはずがない」
「ではあれは、なんなのです?それに……何故レーシェル様のお姿を?」
現れた女性――――レーシェルは、彼らの前で怪しく微笑んでいる。微笑みながら彼女は、アシュタロスの腕の中にいるノエルただひとりを見つめていた。




