#40 湖の底
――――翌日
雲一つない快晴の空高くに、きらめく太陽が昇っている。海と見間違うほどの水面が眼前に広がるそこは西地区最大の湖、シャニウェ湖。その水面はまばゆい陽光をこれでもかと、反射させ宝石のような輝きを放っていた。
太陽はまさに世界にある、最強の天然光分子だ。
これがあるのとないのとでは、たとえこの世界が特殊でも違ってくる。今日は邪魔する雲もない、絶好の日和だ。
「いいお天気っすね。これなら散歩してたほうが楽しいじゃん。まぁ上からの命令なら仕方ないっすけど」
「え?」
ずっと湖ばかり見てて気づかなかったけど、僕の隣にいつの間にか誰かがいた。白いショートヘアに赤い瞳、一瞬セーレさんかと思ったけど、彼は褐色の肌をしていて、ここにいる人は小麦色の肌だ。
「フォル、おっそーい」
誰だか分からず、首をかしげていた僕の方にアモンさんがやってきた。打ち合わせは終わったのかな?
「いやいや、任務地から直でこっちきたんっすよ?これでも大急ぎした方なんだって」
「間に合ったからオッケー!あ、ノエル。こいつはフォルカロル。王宮騎士第4隊隊長。今回はフォルがいたほうが便利だから呼んだんだ」
「ちなみにアモンとは同期っすよー」
「えと、ノエルです。はじめまして」
挨拶をしていると、そこにアシュタロスさんとベリアルさん、シャックスさんが来た。いよいよだ……緊張してきた。
「さて全員揃ったところで、早速取り掛かろう。やくたたずは今のうちに帰れ」
「ベリアル様、それはないっしょ」
そんなやりとりを背後にして聞き、笑いをこぼしつつフォルカロルは水際まで歩を進めた。
「じゃ、邪魔なものを一掃するっすよ」
そう言った彼は、両手を前に突き出し瞳を閉じて何かを小声でつぶやいた。今いるところじゃ何を言っているかはわからないけど、おそらく何かの術の詠唱だとはわかる。
そしてフォルカロルさんが手を、天に仰ぐようにあげた瞬間。それに従うように湖にあった水が上空に浮かび上がり、巨大な球体になって浮遊した。巨大な湖はあっという間に干上がり、湖底の地面を露わにしている。
「すごいです……」
「フォルはね、俺と似た感じ。俺は炎だけどフォルは水を司ってる。だから水という水はフォルにかかればいとも簡単に操れるんだよ」
「俺にかかったら、こんなの呼吸をするのと同じくらい簡単なことっす!」
「わわわっ」
それはすごいんですけど、その水の巨大な球体を頭上に浮かべながらこっちに来るのは控えて欲しいです。あれ落ちてきたらなんか怖い。
「しかし思った以上にでかいな……」
「ほんとですね、あんなに大量の水を」
「そっちじゃない、狭間だ」
アシュタロスさんが指し示した湖の湖底を改めて見る。するとその湖底は茶色でもコケの緑でもなく、真っ黒だった。
しかも見渡す限り全ての底の地面が同様だ。
「フォルカロル、水を抑えて置けるのはどれくらいだ?」
「このくらいだと30分は余裕っす」
「たったそれだけか、使えん」
「ちょ、ひどい」
「時間が限られているなら、早く取り掛かるしかないだろう……行くぞ」
行くぞと言われましても、僕何もわからないんですけど。作戦会議とかなかったし、こんな状況初めてなんで、思いつくこともできないです。うう、役立たずです。
「あの……僕はどこに行けば?」
「とりあえず湖の中央だ。直接狭間を踏むなよ、いくらお前でも闇に犯されてはひとたまりもない」
「わかりました」
つまり飛んで湖の中央の上空に行けばいいんだね。
なんとか理解した僕は、背中に羽を生やすと、そのまま飛び上がり湖の中央を目指して飛んだ。




