#35 悩める天使
すみません。ややスランプ気味です。
この話以降不定期にさせてもらいます。
冷たい夜風に吹かれながら、僕は一人テラスで歌を紡ぐ。小さな其の声は夜風にかき消される。
闇夜に浮かぶ金色の月が、王宮を幻想的に照らし出していた。
突然この世界にやってきて、一体どれほど経っただろう。最初はわけもわからなくて、この世界が自分がいた世界とは違う、というのも最初は信じられなかった。だけど、どうしてもひとつだけ決定的に違っていたところがあった。
元天使と、悪魔が友にひとつの世界で共存しているということ。
そして以前――――まだ天使がいた時代も、悪魔と天使は争うこともなく、生活していたということだ。
僕が元いた世界は、今もなお悪魔と戦争が続いている。悪魔と接するなんて法に触れるほどだし、もしそんなことがバレたら死罪も免れない。
でも僕はそれがどうしても理解できなかった。どうして悪魔と争わなければならないのか、いつまでそれは続くのか。決着がついてそのあとはどうなるのか。
わからなくて、怖くて嫌いになった。
僕を道具としか見ていない父様もほかのみんなも嫌いで仕方がなかった。
だから正直言って、この世界にきたことは嬉しかったんだと思う。ここの人たちは僕を僕としてみてくれてる。頼るだけじゃない、仲良くしてくれる、ちゃんと会話してくれる。
僕の為を思ってくれてる。
僕を心配してくれる人がいる。
あぁ――――歌声が震える。今まで抑えていた感情が溢れ出用としてくる。天空にある月がゆらゆら揺れている。
「帰りたくないと……そう告げたら……皆さんどんな顔するでしょうか……」
元居た世界を捨てられるかと聞かれたら、僕は迷わず捨てられるだろう。あの鳥かごのような空間から、僕はようやく解放されたんだ。
この居心地のいい新たな世界に、僕を置いてください。
「いっそ、悪魔になりたい」
そうすればここにずっといられる。そうすればもう、あの鳥かごの中に戻ることもない。
悪魔と争わなくても済むのに……。
こみ上げる嗚咽をこらえつつ、僕は歌を歌う。大好きだった母様が歌っていた歌。あの方はもういない。
悪魔との争いで、悪魔たちの進行を食い止めるために彼女は自らを犠牲にした。悪魔に騙され、殺されかけた僕を守るように。
この歌は大事な人に贈る歌。もう二度と僕は失いたくない。だから――――歌おう。
僕はこの世界の人達が、何よりも大事なのだから。




