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#34 夢の中の女



 何もない空間。そこにポカンと浮かぶ僕は、辺りを見回しここが現実でないと知る。そうこれは夢だ。


 しばらく何もなかった空間に、次第にかすかな泣き声が聞こえてきた。声色からして女性ものもだ。だけど僕仕えのネネさんの声じゃない。かといって、元居た世界にも思い当たる女性はいない。


 すると視界の隅にその声の主であろう、女性の姿が出てきた。いつから居たのか、それとも夢だからこんなにも唐突なことが起こるのかはわからないけど。


『どうして……どうして……』


 顔を手で覆って、すすり泣く彼女に近づこうとするけど、何故か足が動かない。


『私はただ……一緒にいたいだけなのに……。あの方のために……なのに……。あいつらは私を……騙し……利用し……あの方を奪った……』

「っ……」


 徐々に口調を荒げる彼女に、驚き息を飲んだ時だった。すごい勢いで顔を上げた彼女が、僕の方を向き、目があった。


 涙が溢れ、血走ったその目に溢れんばかりの憎悪が込められている。


『あの人を苦しめる闇が憎い……。私と……あの人を引き裂いた――――が憎い』

「うわっ?!――――ッグゥ」


 動けない僕をよそに、彼女は僕に向かってきた。そして僕は彼女に首を捕まれ、そのまま倒れこんだ。上から伸し掛るようにして、僕の首を絞める彼女は、怒りに狂い奇声をあげていた。


 夢だから、苦しさはないのに胸が締め付けられるように苦しくなった。


 もう少しで彼女の意識に飲み込まれそうになったとき、僕の意識はなんの前触れもなく浮上した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 目を覚ませば、もう見慣れてしまった天井が見えた。


 そしてつい最近正体を知った黒猫が、僕の顔を覗き込んでいた。


「魔王様……」

「魔王と呼ぶな、バエルと呼べ」

「……バエル様……なんで、僕のベッドに潜り込んでるんですか?」

「なんだ?正体がわかったとたん、追い出すのか」

「そういう問題じゃ……」


 ちゃっかり布団の中に入ってるんだもんな。猫の姿じゃなかったら、突き落としてたかも……。


「随分うなされてたようだが?何か視たのか?」

「え……?えーと……夢を見てたんですが……。バエル様のせいで忘れてしまいました」

「ほう?」

「ひぎゃああああ!!やめっ!!服の中に入らないでぇ!!」


 僕の寝巻き、肩口が広いやつだから、そこから猫の姿のまま潜り込もうとしてくる。なんとか捕まえて、首のところをぷらーんと持ってあげた。もう、王様じゃなかったらお仕置きしてるんだからね!!


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