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#32 黒猫とペット


 殺される。ただそれしか考えられず獣が動く音と、息遣いを耳の片隅で聞いていた僕に、この場に似つかわしくない声が聞こえた。


「ニャー」

「っえ――――……君は……」


 僕が目を開くと両足を突き出したまま固まる獣と、僕の前に釈然と座る黒猫の姿があった。さらに猫はもう一度短く鳴くと、驚くことに獣は脚をおろし地面に座った。


 何がどうなって。驚く僕をよそに猫は更に驚きの行動をする。いや、行動ではないけど。


「お前……ベリアルの下僕か。あまりここを勝手に動かれては困るな。少しおとなしくしていろ」

「くぅん」


 6つある耳をたれ、伏せの状態を取るその獣はさっきとは全然違っておとなしい。目がこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど、見開いている僕はただただ驚くばかりだ。


「猫が……しゃべりました……」

「ん?」


 僕がそう呟くと、猫は僕の方に振り向いた。そして優雅な足取りで僕の方へと近づいてくる。


「驚かされたようだな。だがあいつは何も、お前を殺そうと思ってたわけではない。お前に懐かしさを覚えて、じゃれようとしたんだろう」

「え?」

「コイツの飼い主は、もともと天使だからな。それに勝手に誰かを殺せば、飼い主が黙ってないと、ちゃんと躾されている。元はおとなしいやつだからな」


 猫なのに、その口から出てくるのは僕と同じ言葉で……目で見てるのと耳で聴いてるのが妙に合わなくて変な感じ。


「貴方は……一体……」

「おっと、まだ本来の姿(・・・・)では会ってなかったな」


 すると猫はその場でくるんと宙返りをした。ぼわんと白い煙が立ち込め、猫の姿を隠す。


 次の瞬間そこには、地面につきそうなほど長い黒髪の悪魔がいた。綺麗な宝石のような赤い瞳はあの猫と同じだ。


「この世界の王、バエルだ」

「王……っえ?!ええぇ!?」


 王って、王様?!この人が魔王様?!うそ、え……猫が魔王で悪魔で、猫は仮の姿?


「猫の姿は楽でいいからな。たまにというかほとんど猫の姿でいるな。だが本来はこっちだ」

「いつもお世話になってます……」

「ここでは好きにしたらいい。我が許可する。お前はこの世界の希望だからな」

「あなたが……あなたが僕を……」

「いや。我ではない。調べているが、まだ分かっていない」

「そう……ですか」


 ひょっとしたらって、思ってたんだけど。この世界の王なら、僕をほかの世界から喚ぶこともできるんじゃないかなって。でも違うんだ。


「っひゃ!?びっくりした」


 ひとつの案が消えて、少し落ち込んでいた僕にあの獣が擦り寄ってきた。もうすっかりさっきの怖さは消えている。だって今はおっきな犬みたいなんだもん。頭三つあるのを除けばね。

 それに毛並みがとっても綺麗で、触ってると気持ちいい。


「珍しい。それが懐くなんてな」

「そうなんですか?ふふっ、くすぐったい」


 その場に息を切らせたアグレアスさんと、シャックスさんが来たのは、それから数分が経ってからだった。


やっとバエル様出せた!!ようやくこれで話を動かせますよ!!

でもなかなか書けない(´;ω;`)

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