#30 迷えるペットと飼い主
王宮内、王の執務室。王の姿は見受けられないが、その場にアグレアス、シャックス、そして長いウェーブかかった長髪の悪魔がいた。
一見アシュタロスにも見えるが、彼はストレートヘアーであり、瞳も金色だ。ここにいる彼は瞳が湖底を思わせる、緑色をしている。
「今……なんとおっしゃいました?」
「一度きりと言った。一度で理解したらどうだ?」
「シャックス……」
「俺に振る?ていうか、ベリアル様もちゃんと説明しないと、アグレアスが動かないですっ?!ぎゃ――――!!?」
「黙れ。うちのペットが逃げた。しかもここに来てからだ。全く躾し直しだな」
「そういう問題じゃ……嘘嘘!!何も言ってないんですけどぉ?!」
「ここは無駄に広い。探すのを手伝え」
シャックスを片足で踏みつつ、お茶を飲みながらそう言い放つ。彼は西の四大公爵、ベリアルだ。彼はアシュタロスと並ぶほど引きこもり……姿を現さない。さらに困ったことに、公務や招集がかかっても出席しようとしないので、代理としてシャックスが彼の代わりをしている。
ちなみにベリアルが履いているのは、15センチのヒールがついたブーツだ。しかもしっかりとヒール部分で踏みつけている。
「痛い!!地味に痛い!!俺の綺麗な背中が!!」
「もちろんやってくれるよな?」
「はぁ……、あなたでなければぶん殴ってるような態度ですが。貴方のペットをこちらに放し飼いされるのも困ります。王宮騎士総出で探させましょう。シャックスいつまで寝てるんですか?さっさと行きますよ」
「いやいやいや!!ちょっと酷いよそれは!!ベリアル様、足どかしてくださいよ!!」
「なんだ居たのか。早く行け」
「酷っ!!」
なんとかベリアルの足の下から這い出たシャックスが部屋を出ると、既にそこにアグレアスの姿はなかった。仕方なく彼は一人で、行方をくらましたペットの捜索に向かった。
しばらく探し回ったところで、シャックスは目をそらしたくなる光景を目にした。
「これは……やばいんじゃないの?笑えないぞ……」
跡形もなく破壊された廊下の壁。右からなのか、左からだったのかは定かではないが、左右にぽっかり穴が空いている。風通しが良くなったとか言っている場合ではない。
「せめて上を飛び越えようよ……」
「うっひゃ、これはひどいのだー」
「ストラス!」
アモンの治療に来ていたストラスが、ちょうどその廊下に現れた。左右の壁に空いた穴を、面白そうに笑いながら見ている。冗談じゃない、笑い事じゃないんだこっちは。
「一体何の騒ぎなのだ?また魔獣でも出たのだ?」
「いや……ベリアル様の……」
「また?アモンが動けなくてよかったのだ。じゃなきゃ目を光らせて、率先して捜索し始めるのだ」
「間違いなく狩るつもりでな」
ストラスと別れ、シャックスはさらにペットの捜索を続けた。




