#28 関係なかった世界
辺りを見回しながら、王宮内を歩く。ここは王宮内の中心部に当たるところで、とても警備が強靭らしく、魔王直々に警護体制を整えているらしいよ。
会ったことないから、どんな人なのかはわからないんだけど。
だから一人で歩いていても、大丈夫なんだ。ノミ一匹入ることもできないって言ってた。
最初にアグレアスさんのところに行くと、既にアシュタロスさんはいなかった。それから、見逃すまいとあたりに注意しながら、アモンさんが最後に言っていた場所へと向かう。
そして彼を見つけたのは、やはりその場所――――中庭だった。
瓦礫はなくなったものの、未だ魔獣の爪痕が残る中庭の少し奥。白い小さな花のそばで佇む、彼はどこか浮世離れした感じがした。
天から降り注ぐ陽光が、綺麗な金髪を淡く輝かせていた。思わず目を奪われてしまったのは、しょうがないよね?
「アシュタロスさん、おひさしぶりです」
「一人できたのか」
「え……あ、えっと……ストラスからお届けものを預かってるんです」
「そうか、アモンの治療だったな。わざわざ探しに来たのか」
「それと、少しお話をしたくて」
アシュタロスさんに袋を渡し、僕は彼にお礼を言った。彼がくれたブレスレッドがなければ、結界の再生もアモンさんのことも、無事に済ますこともできなかっただろう。
だけどアシュタロスさんは、深くため息をついた。隣り合って花を見つめるようにたっていた僕は、彼の表情を伺えずにいた。
「そんなつもりで、お前に渡したわけじゃない」
「それは……」
「お前は、わかってない。お前はここの世界のものじゃない。お前が救うべき存在は、この世界でも、この世界のものでもない。それなのに、この世界のためにお前の力を使うんじゃない」
「でも僕は……っ」
勢いよく、彼の方を仰ぎ見る。その先にあった彼の顔は、怒っているようにも悲しんでいるようにも、そのどちらにも見えた。
言い出しかけた言葉が、ぐっと喉元で押し止められた。
「この世界の問題は、お前には関係ないことだ。お前はただ元の場所に……在るべき世界に還ることだけを、考えてればいいんだ。無駄なことは考えるな。むやみに首を突っ込んで、迷惑になるだけだ」
「関係なくても、僕には放っておくなんてできません。誰が僕を喚んだのか、どうすれば帰れるのか、まだ何もわかってないんですよ?それまで僕は何もしないでいるなら、少しでもお力になろうとするのは、当たり前じゃないんですか?」
確かに僕は、この世界とは何の関わりもなかったかもしれない。
でも今はもう、この世界と僕にも関わりは出来た。この世界で起きていること、この世界が抱える問題。
それを解決できると知ったなら、協力しようとする僕はなにか間違ってるのだろうか。




