#21 雪山の中の馬車
魔獣の生息域と、街を隔てる結界は核を中心に生成される。その核に代々の北の四大公爵が力を込めることで、結界が生成される。
だけどその結界の核というのは、結構魔獣の存在が頻繁にされる場所で、それなりのリスクが生じる。
特に結界を生成している間は、セーレさんは集中するため無防備になる。だからそれなりに準備をしなきゃいけない。しかもそこは魔獣の住処が近いらしく、その場の気も不安定。
そこで僕が気をできるだけ鎮め、セーレさんのお手伝いをするわけです。気が不安定だと、いくら闇属性を持つ悪魔だといっても、十分に安定した結界を晴れなくなってしまうから。
雪が降り積もる雪山を、僕らは黙々と進み続ける。最初は馬に乗っていくつもりだったんだけど、あの命を狙われた事件があったから、急遽馬車になった。
僕が乗っている馬車にはセーレさんがいる。アモンさんは念の為に、単独で馬に乗ってこの馬車の隣にいる。
場車に乗り出発する前、僕はアモンさんを見かけて話しかけようとした。だけどなんか近寄りがたい雰囲気だった。部下の人たちに指示を出したあと、一人でいたアモンさん。だけど、声をかけることができなかった。
ふとさっきのことを思い出していたら、頬に暖かな感覚があった。視線を上げるとセーレさんが僕の顔に触れていた。暖かいのはセーレさんの手だ。
「表情が優れないね。具合でも悪い?なんなら少し横になっているといいよ」
「いえ……そうじゃないんです」
言い出しにくかった。アモンさんを悩ませてるのは、ほかでもない僕なんだ。あの時だって、一体なんて話しかけようとしていたんだろう。話しても、きっと困らせてしまうのに。
「アモン君のこと……かな?」
「どうして……」
「出発する前、アモン君の方へ行ったのに、話しかけずに戻っただろう?だからそのことで考え込んでいるんじゃないかってね」
「僕は少なからず、アモンさんを困らせてしまってます。あの時も一人でなにか思いつめてて……。ただでさえ今回は大変なのに、僕は負担になってしまっているんじゃないかと……。そう思うと、話しかけることもできなくなってしまって」
「負担、ねぇ。少なくとも、アモン君はそうは思ってないんじゃないかな」
「え?」
「アモン君はね、負けず嫌いなんだよ。別に心配することはないよ、今の彼は……喜んでいるんだから」
喜んでいる?アモンさんが?
深い雪の中を、馬車はガタガタ揺れながら、さらに先へと進んでいく――――




