#22 調和の結晶
馬車の通った雪の上には、2つの車輪の跡がくっきりと残っている。その付近には様々な足跡が、点々と道しるべのように付いていた。
そしてその先に停まった馬車と、立ち止まるモノたちの姿があった。谷底にあたるこの場所は、岩肌に囲まれている。
「ここですか?」
「そうここ。ノエル君こっちに来て」
手招きするセーレさんに続いて、僕は近くにあった洞窟へとはいる。人一人やっと通れるくらいの、小ぶりな洞窟を進んでいくと、奥は行き止まりになっていて、やや広い空間が現れた。
その空間の中央には、何かの台が有り、その上には小さな黒い結晶があった。だけど、以前見た闇の結晶とは少し違うのか、白が混じり合っている。
「これは……闇の……」
「そのとおり、これは闇の結晶だよ。結界の媒体に使ってるんだ」
セーレさんがその結晶に手をかざすと、彼の力に呼応するかのように光が瞬いた。
「でも何もしないで放置しておくと、闇を集めて次第に闇の狭間とかしてしまうからね、そこである人に頼んで光分子を半分加えてある。これはこの世界の四方の結界の要でもあってね、それぞれの地域を守る結界の創造や、その他の様々なことに利用されるんだ」
「光分子は……この世界にないのでは?」
「君は何も聞いてないの?」
「え?」
驚いた彼にそう聞かれたけど、僕はなんのことだかさっぱりわからない。首をかしげる僕を見て、しばらく何かを考えていたようだけど、再びその結晶に視線を戻した。
「今からこの地域の結界を再生するために、この結晶……調和の結晶っていうんだけど、それの力を引き出す。もちろん僕は悪魔だから闇分子しか使えない、だから周りにあるこの地にある闇分子すら目覚めさせてしまう。それをノエル君に抑えてもらうよ」
「そう言われましても、僕ひとりでは……」
「大丈夫。僕もそこまで無茶苦茶なこと言わないよ。この洞窟もそのとある人が、術を施して、入口以外は薄い光分子に守られてる。だからノエル君は入口から、僕の気がもれないようにしてもらえればいいんだ」
たしかにこの洞窟内の空気は、外に比べると異質だった。いいかげんそのとある人というのが気になるけど、今は結界が最優先だし、あとにしよう。
セーレさんを洞窟内に残し、僕は入口へと戻った。ちょうどアモンさんが、隊の人たちに指示し終えたようで、入口の方に向かってきた。
「セーレが結界を作り始めると、闇の分子は少なからず変化を示すんだ。そしてそれを察知して、周りにいる魔獣たちを引き寄せる。でも、ノエルはこの入口と洞窟の中だけ注意してて」
「は、はい……」
「あと……この前の奴がいるかもしれない。けど……もうノエルを危険な目には合わせないから」
そういうアモンさんは、何故か僕ではなく近くの岩肌を見つめていた。




