#20 潜むネズミ
命を狙われた。そのことはアモンさんがセーレさんに報告したことにより、僕は屋敷から外出を禁じられた。用意された部屋の前に騎士が二人、屋敷の中の警備も強化され、屋敷近辺もより厳重になった。
――――セーレ・書斎
「――――ということは、ノエル君のことは公にはされてないと」
『そのはずです。知っているのは王、それと四大公爵、王宮に仕えるものすべて、その他限られた者のみです』
机の中央に置かれた水晶。通信用の魔法が施されたそれは、現在王都の王補佐アグレアスと通じている。
『先日の騒動でノエル様の姿は、多くのものに見られました。ですから少なくとも王宮にいたそれらの者たちには、知られているはずです。ですからその翌日王宮の者たちには、説明してはいますが、口外しないようにと処置はしました』
「破れば命はないから、まぁ誠心誠意仕えてるものは口外しないはず。だとしたら……」
『ねずみが潜んでいる可能性があると……。こちらでも探ってみます。ところで……ノエル様は大丈夫ですか?』
アグレアスのその問いかけに、セーレはしばし逡巡した。というのも、あれからすぐに対処すべく動き回っていたおかげで、ノエルに会えたのは帰ってきた時だけだったからだ。ノエルの監視役からの報告くらいでしか、彼の状態を知れていなかった。
褐色の指で机を小突きつつ、同回答すべくか迷った挙句報告されたとき、自分が思った感想を述べた。
「かなりショックは受けてるんじゃないかな。アモン君がいなかったら……って、恐ろしいこと考えるのはやめよう。なんとか早めに終わらせて、そちらに送るよ」
『分かりました。援軍はいかがします?あと一人でもノエル様の護衛に送りますが?』
「んー、いいよ。というか、そのためのアモン君だろう。伊達に王宮の騎士団、それも第一隊の隊長をしているわけじゃないだろうからね」
『そういえば、彼は今なにを?』
「あれから殺気立ってる。あんなに接近されてたのに、気づかなかった自分に腹が立つって。大丈夫今の彼なら、心配するだけ無駄だよ」
『それならあとはお任せします』
通信が切れ、水晶はすっかり静かになった。それをかたわらのクッションの上に置き、セーレは立ち上がった。
「あとね、僕も怒ってるんだ。僕の配下で好き勝手してくれて、ただじゃ置かないよ?……チョコ菓子でも、作ろうかな」
怒りをあらわにした表情は一瞬だった。その後柔らかく笑った彼は、そのまま書斎の中にあるドアの向こうにあるキッチンに向かった。
しかし、時間は進み続ける。一抹の不安が漂う中、北方の結界の再構築の準備が整った。




