#19 ちらつく影
鉱石のお店を出た僕らは再び、商店街を歩く。
見たことない雑貨や、かわいいお菓子を見つけていくたびに、僕は今まで感じたこともないくらいの楽しさでいっぱいだった。
前の世界では、こんなにも自由に出歩くなんてできなかったから。手を伸ばせば届きそうな外の世界。眼下に広がる、町並み。楽しそうな声。僕はそれを只眺めているしかできなかった。
だから僕がいた世界ではないけど、それでも夢見ていた外の世界をこんなふうに歩けるのが、嬉しくてたまらない。
「ノエル、あんまはしゃぐと転んじゃうよー」
「こ、転びませんよ!」
「そう?あ……ノエル待って!!」
「え?」
次はどこのお店をみようかな。そう思っていた僕の手を、突然アモンさんが掴んだ。
次の瞬間、僕の目の前に巨大な氷柱が地面に突き刺さった。あまりの衝撃に、僕はその場に腰を抜かした。
「っ――――そこかっ!!」
空の方を見上げてそう叫んだアモンさんは、手を前につきだし炎の球を数個出現させる。そしてそれらを睨みつけている、その場所めがけて飛ばした。それは何もないところで弾けるように消えた。
「弾かれた――――?!っち、逃げられた。ノエル大丈夫―?」
「は……はい。今のは……一体……」
「わっかんない。姿消してたみたいだし……仕掛けられる前に気づけなかった。うまくさっき消してたみたいだね」
「アモンさんが気づいてくれなかったら……僕は……」
この氷柱に貫かれて、生きてなかった。ぞくりと体中に鳥肌が立った。僕の目の前の地面に突き刺さった氷柱は、未だその姿をはっきりと残し、溶け出す気配はない。魔力で作られたそれは、普通のつららと性質は異なるみたい。
それから目が離せない。自然と鼓動と呼吸が早まり、汗が滲み出てくる。狙われたんだ――――誰かから、僕は狙われているんだ。
溶ける気配のなかった氷柱が、一瞬にして炎に包まれ、気がつくとそこには影も形もなくなっていた。ふと視線を上げると、アモンさんが氷柱があったはずの場所を見つめていた。
「あーあ、せっかく楽しく買い物してたのに……」
そうぼやいた後、アモンさんは僕の方を向き、そっと手を差し伸べてきた。
「帰ろっか。途中に美味しいおかしやさんあるから、そこでノエルの好きなお菓子買って帰ろ?」
「――――はい」
アモンさんに半ば引きずられるように、僕は帰路につく。そうでもしなければ、とても歩み出せなかった。
命を狙われるのを目の当たりにするなんて、初めてだった。狙われたことは、何度かあったけど。でもそれを聞くのはいつも、対処がされたあとだったから、直接何かをされたことはなかった。
一体……誰が何のために――――。




