#16 北の地、ルマーラ
それはセーレさんの持つ能力によるものだった。彼は瞬間移動ができるだらしく、自分だけでなく、少し工夫すれば他人までも可能だという。騎士たちを移動させたのも、少し準備がいるけども、その能力によるものだって。
そして僕らは今、セーレさんが管理する北の領地――――ルマーラにいた。
到着した僕の目に飛び込んできたのは、一面の銀世界。どうやらこのルマーラ地方は、一年中雪に覆われているらしく、ずっとこの景色が広がっているらしい。
特に山間部は雪も深く、厳しい環境になっている。
王都からいつもの薄手の服で、来てしまった僕らに、その場で待機していた王都の騎士団の方が、準備していた厚手のコートを貸してくださった。
僕のはフードもついてて耳はジンジンしないし、防寒も完璧。ちょっとサイズが大きくて、手が袖口から出てこない。
「ゴーストみたいだよぉ」
「む……このコートが大きすぎるだけです」
ていうか、なんでアモンさんはコート着てないのに平気なんだろう。
到着した場所は、中心部からややそれたところにある平原で、僕らはそこから中心部にあるセーレさんの屋敷に向かった。徒歩ではなく馬型の魔獣に乗っている。
馬型の魔獣は温厚的な性格の魔獣種の筆頭であり、王都でも移動手段として利用されている。僕は乗ったことがないから、アモンさんと一緒に乗せてもらった。
しばらく歩いて、僕はふと疑問を抱いた。チラチラと雪が降る天候は、お世辞にも寒くないとは言えない。なのに、僕は震えてなかった。
いくらコートを着ているといっても、風が吹けば寒いし、袖口からも冷気は忍び込む。なのに、むしろ暖かく感じるのだ。
「どうかしたのー?さっきからキョロキョロしてるよ?」
「あの……暖かくないですか?」
「そう?俺はここ来た時からなんも変わんないけど」
「そうですか……。――――え?」
何も変わらない?こんな極寒の土地に来て、王都といた時と何も変わらない?
「ノエルも暖かいしょ?俺といるからね」
「え?」
「俺ね、歩く暖炉なんだよ」
「はい?」
歩く暖炉?アモンさんは暖炉だったの?え?彼の言った意味が分からず、首をかしげていると、アモンさんはくすりと笑った。
「例えだよ例え。もうノエルはすぐに信じちゃうねぇー。俺ね、炎の力を司っててね。これはその力を持ってる上での……」
「――――アモンさん?」
「なんだろー?おまけ?かなぁ。俺のいる一定の周囲の温度が2~3度高くなるんだよ。ちょうど俺が両手を広げたくらいかなぁ?正確に調べたことないからわかんないけど」
「そうだったんですか」
歩く暖炉という言葉も、なんとなく理解できた頃、僕らはようやくルマーラの中心地へとやってきた。厳重に閉ざされた関の門を潜ると、その先は両側に商店が立ち並んでいた。




