#14 記憶の彼方の君
セーレの頼みに、ノエルはしばらく考えていたようだったが、そのすぐあとにうなづいた。その後彼はシャックスと共に部屋をあとにした。
アグレアスとセーレは、未だその部屋に残っていた。
「案外、しっかりした子なんだね」
「……と、いいますと?」
「君の話を聞いたときは、全く想像がつかなくてね。今日は少し、会えるのが楽しみだったんだ。今日あえて良かったよ」
「そうですね。ノエル様は異世界の方ですから、多少はご自身が元の世界に戻ることを望んで、行動なさってもよろしいというのに……」
「本人は全くそんな話はしないと……。帰りたくないのかな」
「どうでしょう。私たちは、彼がいた元の世界を知りません」
ノエルは、ここの世界のことを聞きはしても、決して元いた自分の世界のことははなさない。多少、アグレアス達が話を持ちかけても、大まかな説明はあるものの詳しい話は語ろうとしなかった。
だからそれ以上、追求することはやめたのだった。
「まぁ……誰にだって話したくないことの一つや二つ、あるっていうからね。きみだってそうだろ?」
「そういうことにしておきますよ。それにそういうのであれば、あなたも……でしょう?」
「ふふっ。アグレアス君は変わらないねぇー。あ、そういえばさー」
「なんですか?」
「ノエル君さー、チョコ食べてたよねー」
「なぜそれを……」
「さっき見てきたから。ちょっと出てくるって言ったでしょ?その時にね。テラスで美味しそうに食べてたよ」
そういえば、彼はノエルが来る前に、ほんの数分この部屋から抜けたことがあった。そしてすぐに戻ってきたのだが、そんなことをしていたとは……。
「うちのものが作ったものですよ」
「こんど僕も作ってこよーっと。さて……と、いい返事も貰えたし……そろそろ戻らないと」
ゆっくりとソファから立ち上がったセーレは、そのまま窓ガラスの方に近づいた。
「では二日後には準備を整えます」
「うん。その時に迎えに来るよ。あ……そうか……ふふふ」
窓の外の景色を眺めていた、セーレはなにか思い出したのか突然笑い出した。そのことにアグレアスは何かと思い、問いかけた。
「どうなされました?」
「いやね……思い出したんだ。ずっと引っかかってたんだけど。彼、誰かに似ていると」
「誰に……」
「君も気づいてるだろう?君の方があっていた数は多いだろうし。僕は元から悪魔だからね。僕が何故知ってるかっていうと、あの絵を見たからかな……実際にはあってないよ――――レーシェル様にはね」
レーシェル――――。その名を聞き、アグレアスは表情を曇らせた。思い出したくなかったものを、思い出してしまったとでも言いたげな表情だ。
「そうですね……あの方にそっくりですね」
「じゃあ、僕はもどるよ」
そう言うやいなや、セーレの姿はあっという間にその場から消えた。




