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#12 チョコレート

 王宮内にある、僕用にあてがわれた部屋のテラス。そこに椅子を持ってきて、そこからの景色を眺める。遠くの方にはそびえ立つ山脈、その麓には青々とした緑がしげる草原。草原のこちらよりには、王都の街並みが並んでいる。


 魔界といってもいろいろなんだなって思いながら、ネネさんが用意してくれたお茶を飲む。暖かな日差しは、僕がいた世界と同じものでとても落ち着く。


 僕が知ってる魔界は、真っ暗で荒廃した土地が広がり、所々でマグマが赤々と吹き出していた。多分この世界がこうなのは、融合したせいだと思う。


 チョコレートという名らしい、丸くて可愛いお菓子を口に含む。茶色い地味な見た目からは、想像もできないほどおいしいそれは、今では僕の好物だ。


王宮お抱えの料理人お手製らしく、チョコレートといっても、いろいろな種類があった。茶色いのもあれば、白いのも、ピンク色なんかもある。味もそれぞれ少しずつ異なって、口の中とろりと溶けるその瞬間がなんとも言えない。



「あともう一個ですね……いっぱいあったんですが」

「にゃー」

「おや……?」


 テラスの手すり部分に、黒い毛並みの猫がいた。目が赤いというのを見て、初めてこの世界に来た時にいた猫だろう。


 身軽な動きで、手すりからこちらに飛び降りると、僕の膝の上に飛び乗った。


「またお会いしましたね。ここに住んでらっしゃるんですか?」

「にゃ……」


 丸くなってくつろいでいる黒猫の背中を、撫でながら問いかけると、とても気持ちよさそうに返事をする。言葉がわかるのかな。


 ふと視線を感じ、キョロキョロと辺りを見回すと、赤い瞳と目があった。さっきまで瞳を閉じて、おとなしく撫でられてたのだが、今は顔を上げている。


「嫌でしたか?」


 不機嫌にさせただろうかと、そう思い聞いてみた。だけど黒猫は首を横に振る。そのあと立ち上がると、僕の足の上を歩いて顔を近づけてきた。


 本当に不思議な猫です。


 前足のしたに手を入れて、そっと持ち上げてみる。そしていつもはシャックスさんにされているように、黒猫を腕に抱えてみた。


 こうしても、おとなしくどこか凛としているのは、どこか猫らしくない。カワイイには可愛いのだけど。


 しばらくそうしていると、大きな三角の耳をぴくりと動かし、もぞもぞと動かした。


「お帰りですか?またここに来てくださいね」

「ニャー」


 短く鳴いて僕の頬をぺろりと舐めたあと、テラスの手すりに飛び乗り、そしてそのまましたへと降りていった。……え?


「落ちたら怪我しますよ!?って……いないですね……ほんとに不思議な猫ですね」

「手すりから乗り出して、どうしたのかな?いくら天使といえど、落ちてしまうよ?」

「うわっ!?シャックスさん?いついらしたんですか!?」

「いまだけど。いくらノックしても返事がなくてね、どうかしたのかと思って入ったんだけど……まずかったかい?」

「いえ。すみません、気づかなくて」


 そういって謝罪すると、シャックスさんはいいさと手を振った。そしてテラスの下を覗く。


「なにかいたの?」

「先程まで黒猫がいたんです。帰るときにそこから飛び降りて、心配で覗いたんですが、姿が見えなくて」

「黒猫?――――まさか……」

「シャックスさん?」

「ん?あぁ、なんでもないよ。ところで、君を呼んできてくれと頼まれてね。ついてきてくれるかい?」

「分かりました」





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