第27話:爆走する20トン荷馬車と、黒角騎兵隊への痛快なる倍返し!
――ブォォォォォォォォォンッ!! ドガアアアアアアアアンッ!!
二つの紫色の月が浮かぶ剣と魔法の世界『エルドリア』の暗い街道を、猛獣のようなエンジン音を轟かせながら、十個の車輪がついた巨大な銀色の鉄の怪物(20トンタンクローリー)が猛スピードで疾走していた。
銀色に輝く大釜の前の屋根の上には、身長『百三十五センチ』へと神格進化を遂げた俺――【ゴブリン・ゴッド(小鬼神)・レベル100】が、三十五センチの真紅のミニマントを夜風にはためかせ、頭の小さな黄金の王冠の上で『ドーナツ型の黄金の光輪』をプカプカと揺らしながら仁王立ちしていた。
バリボリ、モグモグ、ゴクンッ!
俺は屋根の上に積み上げた美しい木の箱に緑色の鉤爪の手を突っ込み、金色の薄い皮に包まれた『日本一の極上ロイヤル・ミルクチョコレート』を五本まとめて口の中に放り込んだ。
舌の上でとろける『甘い神の脂』と濃厚な乳の甘みが喉を通り抜けた瞬間、俺の小さな体に詰め込まれた『全ステータス999+』の神格魔力炉がゴオオオッ!と音を立てて燃え上がる!
《神話級供物【極上ロイヤル・ミルクチョコレート(URランク)】を摂取しました!》
《神格ステータス(全能力999+)および契約ボーナスが最高出力で維持されています!》
(ふははははははっ!! 最高だぜ、この体中に溢れ返る無敵の力はよぉ!!)
俺は右手に握りしめた愛用の相棒――地球で最初に拾ってからずっと使い続けてきた六角形の『鉤爪付きの鉄の棍棒』をギラリと光らせ、街道の先にそびえ立つ禍々(まがまが)しい黒岩の巨城『魔王城』を睨み据えた。
(ついさっき地球へ飛ばされる前の俺様は、森の角ウサギ(レベル12)にすら追い回されて泥水をすすっていたレベル7の最底辺だった……。それなのに、よくも俺様が三日間何も食えず腹ペコで動けなかった隙を突いて、手下に命じて『強制徴兵の試練』とやらで胸を撃ち抜かせやがったな、まだ見ぬケチな『魔王』の野郎め! 今の俺様は腹いっぱいの【ゴブリン・ゴッド】様だ、お前の城に眠るお宝ごと、その頭蓋骨をカチ割りにいってやるぜえええっ!!)
俺が純粋な逆恨みと復讐心で鼻息を荒くしているすぐ真下――荷馬車の運転席では、俺様の専属『黒魔導師兼鞄持ち』であるレベル25の人間・ハルトが、黒い枠の目のガラス(メガネ)の奥の瞳を熱い涙で潤ませながら、丸い舵を力いっぱい握りしめていた。
(ゴブは……滅びかけた僕たち人類をゾンビから救うために、このエルドリアから地球へ来て、自分の身を盾にしてまで戦ってくれたんだ!)
ハルトは床が抜けるほどアクセルペダルを踏み込みながら、一人で勝手に壮大な感動に震えていた。
(そして今、ゴブの故郷であるこの世界が、弱い者いじめをする悪の魔王軍に支配されている! だからゴブは、地球を救ったのと同じように、僕との『友情の力』でこの世界も一緒に平和にするために、僕を転移門へ引っ張り込んでくれたんだね! 待っていてくれ、ゴブ! 親友である君に救われた命だ、今度は僕が全力で君に恩返しをして、この世界を一緒に救ってみせるよ!!)
「行くよ、ゴブ!! 僕たちの友情の力で、魔王城まで一気に突破するんだあああっ!!」
ハルトが勇ましく叫んだ、まさにその瞬間だった。
――グルルルル……ドドドドドドドッ!!
前方の街道の真ん中に、巨大な鉄の柵が並べられ、赤い目をした全長三メートルの『黒甲殻の魔狼』に跨った『十五人の黒角の魔族騎士団』が道を完全に塞いで待ち構えていたのだ!
俺の長い緑の耳が、ピクリと跳ね上がった。
見覚えがあるどころの話ではない。
その先頭で巨大な魔槍を構えている、額に二本の黒い角を生やした大柄な魔族の隊長は――俺がレベル7だった頃、沼地のゴブリンたちを「動く的」と呼んで遊び半分に槍で串刺しにしていた、俺にとって最も忌々しい天敵の一人だったのだ!
俺はすかさずスキル【捕食鑑定】を発動した。
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【種族:魔王軍・黒角騎兵隊長『ギルドア』――レベル:45】
【筋力:140/敏捷:135/耐久:130】
【部下:黒角魔族騎士15名(レベル38)】
【精神状態:下等種族への蔑視・嗜虐心・傲慢】
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騎兵隊長ギルドアは、猛スピードで迫ってくる銀色の十輪荷馬車と、その屋根の上に立つ身長百三十五センチの俺の姿を見つけると、心底馬鹿にしたような下品な哄笑を上げた。
『グハハハハハッ! ゾルゴンの奴が吹き飛ばされたと聞いて出てきてみれば、なんだあの銀色の鉄箱は! おい見ろ、屋根の上におもちゃの王冠と光る輪っかを乗せた、緑色の小鬼が乗ってやがるぞ!!』
後ろの十五人の魔族騎士たちも、槍を鳴らしてゲラゲラと笑い出した。
『ハッハッハ! いつも俺たちの魔狼のエサにしていた、あの泥すすりの最弱ゴブリンじゃねえか!』
『おい小鬼、生意気に人間の奴隷なんか連れやがって! その鉄箱ごと魔狼の牙で噛み砕いて、また泥水を舐めさせてやるぜえええっ!!』
十五騎の魔族騎士たちが魔槍に黒い稲妻を纏わせ、俺たちの荷馬車を正面から串刺しにしようと一斉に突撃を開始した!
だが――屋根の上で腕を組んでいた俺は、恐怖するどころか、あまりの嬉しさに緑色の口元を耳まで裂けんばかりに歪めてニヤリと笑った。
(……レベル45で、筋力がたったの『140』だと?)
俺は自分の小さな拳を握りしめた。
(レベル7だった頃の俺様には、てめえらは絶対に勝てない死神に見えていた……。だが、『ステータス999+』の神となった今の俺様の目から見れば、てめえらの突撃なんざ、足を怪我したナメクジが這ってるのと同じ速さなんだよォォォ!!)
「僕の親友を、虫けらみたいに笑うなあああああっ!!」
俺が飛び出すよりも一瞬早く、運転席のハルトが怒りの声を上げた!
『レベル25』へと神格強化されたハルトは、なんと『左手一本』で巨大な十輪荷馬車の丸い舵を固定したまま、横の窓から上半身をガバッと乗り出した!
ハルトの右手には、地球から持ち込んだ『爆裂魔石の連射筒(40ミリ自動擲弾銃)』が軽々と片手持ちされており、肩には『漆黒の超巨大魔導長杖(50口径・対物ライフル)』が担がれていた!
――ドォン! ドォン! ドォン! ドゴォォォォンッ!!
ハルトは時速百キロで荷馬車を片手運転しながら、突撃してくる十五騎の魔族騎士たちの足元と盾へ向けて、爆裂魔石と特大の黒弾を寸分の狂いもない精密射撃で叩き込んだ!
『な、なんだこの雷鳴の魔導具はァッ!? ぐわあああっ、魔狼が怯んだぞ、盾が砕けたァッ!!』
凄まじい爆発と徹甲弾の衝撃で先頭の五騎の盾が粉々に吹き飛び、陣形が大きく乱れる!
さらにハルトは一切速度を落とすことなく丸い舵をグイッと切り、重さ二十トンの荷馬車の分厚い鉄のバンパーで、立ち塞がる鉄の柵と五騎の魔族騎士をボウリングのピンのように正面から豪快に跳ね飛ばした!
屋根の上でそれを見ていた俺は、歓喜に黄色い目を輝かせた。
(ふはははははっ! 見ろよこの俺様の『初代教皇』の暴れっぷりを!! 十個の車輪がついた巨大な鉄の獣を片手で手懐けながら、もう片方の手でレベル38の魔族騎士どもを黒弾魔法で薙ぎ払いやがったぞ! 道案内ができるだけじゃなく、こいつは戦場を支配する『暴走戦車の大魔導師』様だぜ!!)
「ゴブ、敵の陣形は崩したよ! 僕たちの友情の連携で、あいつらに正義の鉄槌を下そう!!」
「ゴブッ! グガ、ゴブゴブ!!(おう、最高のパスだぜ教皇! 今まで俺様たちゴブリンに泥水を舐めさせてくれた礼を、今ここで百倍にして返してやるぜえええっ!!)」
――ドォォォンッ!!
俺が荷馬車の屋根を蹴った瞬間、俺の百三十五センチの体は緑と黄金の閃光となって空中に消えた。
俺が着地したのは、荷馬車の横を通り過ぎようとしていた騎兵隊長ギルドア(レベル45)が跨る『巨大な魔狼の頭のど真ん中』だった!
『な、なにぃっ!? いつの間に俺の魔狼の頭の上に――くたばれ小鬼ィィッ!!』
ギルドアが血走った目で、黒い稲妻を纏った自慢の太い魔槍を俺の胸へと突き出した。
だが、俺は避けもしなかった。
俺は空いている左手を軽く前に出し、飛んできたレベル45の渾身の槍の穂先を――なんと『二本の指』だけでピタリとつまんで止めてやったのだ!
――ガキィィィンッ!!
『ば、馬鹿なあああっ!? 俺の魔槍の突撃を、指二本で止めただと!?』
「ゴブ……グガァァァッ!!(おい角生やしたトカゲ野郎、いつも『小鬼は動く的だ』って笑ってたのはどこのどいつだっけなぁ!? 今の俺様にとっては、てめえら全員が経験値すらろくに出ねえ『脆い木偶の坊』なんだよ!!)」
――パキィッ!
俺が左手の指にほんの少し力を込めると、ギルドアの自慢の魔槍が枯れ枝のように真っ二つにへし折れた!
そして俺は右手の愛用の『鉤爪付きの鉄の棍棒』の曲がった先端を、ギルドアの分厚い黒鎧の胸元にガツン!と引っ掛けると、『筋力999+』の力で鎧ごと紙くずのようにひっぺがし、棍棒の平らな腹で横っ面からフルスイングを叩き込んだ!
――ドゴォォォォォォォォンッ!!
俺の鉄の棍棒の一振りが生み出した黄金の衝撃波が、隊長ギルドアと周囲にいた残り十騎の魔族騎士たちをまとめて巻き込み、街道の並木ごと空の彼方へと弾き飛ばした!
『ぎゃあああああああああっ!! な、なぜゴブリンごときにいいいいっ――!!』
十五人の誇り高き黒角の魔族騎士団は、俺たちの足止めすらできないまま、紫色の夜空の彼方で十五個のキラキラ光る流れ星となって消え去った!
《黒角騎兵隊長『ギルドア(Lv.45)』および魔族騎士団15名を完全撃破しました!》
(ふはははははははっ!! ざまあみろってんだ! 今まで俺様を追い回しやがった騎士団を、たったの一振りでゴミみたいに掃除してやったぜ!!)




