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第16話:毎分3000発の弾幕盾と、ハルトの超長距離狙撃!

六本の黒鉄の杖が一つに束ねられた悪魔の魔導具から立ち昇る白い煙が、黒い石の道のど真ん中に立つ身長二メートル超えの巨人の姿を禍々(まがまが)しく包み込んでいた。


俺たちの周囲では、今のたった一息の黒弾の嵐によって五十体のアンデッドが真っ二つに引き裂かれていたが、残る二百五十体以上のアンデッドどもは、なおも俺たちの『銀の大釜を積んだ十輪荷馬車』を取り囲んでじりじりと迫ってきていた。


荷馬車の屋根の上に仁王立ちし、緑の長い耳の真ん中に小さな『黄金の王冠』を輝かせた俺は、分厚い黒鎧に身を包んだその巨人にすかさず【捕食鑑定】を発動した。


――――――――――――――――――――

【種族:人間(武装組織総首領:ゴウザブロウ)――レベル:15】

【装備:六連回転式・黒鉄大杖/重装黒鉄全身鎧】

【精神状態:血への渇望・絶対的傲慢・秘宝強奪】

――――――――――――――――――――


俺は黄色い目を細め、怒りで奥歯をギリッと鳴らした。


(レベル15だと……!?)


俺のゴブリンの脳裏に、忌々しい前世の記憶が鮮明に蘇った。


(街道にいた下っ端の手下どもはレベル2、要塞の中にいた上級幹部のクロカワですらレベル5だった……。だが、目の前の黒鎧の巨人は幹部の『三倍』ものレベルを持ち、六本の杖を合体させた神話級の黒魔法を操ってやがる! 前世では一度も顔を拝んだことはなかったが、間違いない……人間の肉体に姿を変えてはいるが、こいつこそが俺様が下働きになるのを断ったのを根に持って、腹ペコだった俺様を手下に撃たせた張本人――宿敵『魔王』その人だ!!)


俺の足元の席では、鞄持ちのハルトが丸い舵を握りしめたまま、前方の透明な氷の板越しに巨人を見つめて震えていた。


「あの全身を覆う重防弾アーマーに、軍用ヘリから取り外した6連装ガトリング砲……」


ハルトはゴクリと息を呑んで呟いた。


「あいつがクロカワたちを束ねていた武装組織の大ボスだ! ゴブ、あの武器は一分間に三千発もの大型弾を撃ち出す怪物兵器だよ! もし後ろのタンクを撃ち抜かれたら、二十トンのミルクチョコレートが全部流れ出しちゃうぞ!」


すると、目の隙間すら見えない黒い鉄仮面の奥から、地底の魔王のような低く不気味な哄笑が響き渡った。


『ふはははははっ! クロカワの部隊を潰して、俺の工場のタンクローリーで逃げようってのはどこのどいつだァ!?』


『魔王』が分厚い鉄靴で石の道をドン!と踏みしめ、白い煙を吐く六本の回転杖の先端を俺たちへと向けた。


『クロカワの腰抜けめ、銃弾を跳ね返す化け物がいると泣きついてきやがったが……見れば、頭にブリキのおもちゃみたいな小さな王冠を乗せた、身長百二十五センチのチビ助じゃねえか! そして運転席にいるメガネのガキが飼い主だな! いいだろう、まずは窓ガラスごとそのメガネのガキをミンチにしてから、てめえを緑色の肉塊に変えてやるぜ!!』


ガシャン! と魔王の肩の鉄管が動き、六連回転杖の先端がわずかに下がった。

奴が狙いを定めたのは、屋根の上にいる俺ではなく――俺の真下の席に座っている『ハルトの顔面』と、その後ろにある『20トンの神の秘宝の大釜』だった!


――ブォォォォォンッ!!


六本の黒鉄の杖が、再び猛烈な速度で回転を始める。


(なっ……俺様の『大釜』と『鞄持ち』を狙う気かァッ!?)


「グガアアアアアアアッ!!」


六本の杖からオレンジ色の炎が噴き出すコンマ一秒前。

俺は屋根の上から真下の荷馬車の鼻先へと砲弾のように飛び降り、透明な氷の板のすぐ前に立ち塞がって、百二十五センチの小さな両腕を大きく広げてハルトの盾になった!


――ガガガガガガガガガガガガガガッ!!


次の瞬間、一分間に三千発という【黒弾の暴風雨】が、俺の小さな緑色の胸板へと真正面から激突した!


――キンキンキンキンッ! ガガガガガンッ!!


それは一発ずつの攻撃ではなかった。

一秒間に五十発もの超高速の黒弾が、巨大な鉄槌の連打となって俺の胸、肩、腹、顔面、そして黄金の王冠へと隙間なく叩きつけられたのだ!


《王族固有スキル【小鬼王の極厚皮】および【黒魔法無効】が常時発動中!》

《貫通ダメージ:0! 黒魔法の呪いダメージ:0!》

《警告:毎分3,000発の凄まじい物理衝撃波により、その場からの移動が封じられています!》


「グ、グルルル……ゴブゥゥゥーッ!!」


『耐久240』に達した俺のゴブリン・キングの皮膚には傷一つ付かず、緑の血も一滴も出ない。

だが、途切れることなく胸板に叩き込まれ続ける黒弾の奔流の『押し返す力』が凄まじく、俺の両足は荷馬車の鼻先の分厚い鉄板をベコッと踏み抜いてめり込み、全身から金色の火花と白い高熱の煙が噴き上がった!


(く、くそったれがァッ!! 痛くも痒くもねえが、黒弾の勢いが強すぎて足が前へ出せねえ!!)


俺は火花の中で奥歯を噛み締めて踏みとどまった。

もし俺がここで魔王を殴りに行こうとして一歩でも横に動けば、この秒間五十発の黒い光の槍が後ろの氷の板を突き破り、ハルトの頭と20トンの大釜を一瞬で粉々にしてしまう!

しかも俺がここで釘付けにされている間に、周囲を取り囲んでいた『二百五十体のアンデッドの群れ』が、荷馬車の両脇へとすぐ近くまで迫ってきていた!


『はっはっはっは! 本当に銃弾を肌で弾き返しやがったが、後ろのガキを庇って一歩も動けねえようだなァ!!』


魔王が六連回転杖を撃ち続けながら高笑いした。


『俺がこのまま弾幕でそいつをボンネットに縫い止めておく! 周りのゾンビどもに後ろから噛み殺されるか、俺の弾が尽きる前に押し潰されるか、好きな方を選べ!!』


その時だった。

俺のすぐ後ろ、火花が飛び散る透明な板の向こう側の席で、ハルトが自分の盾となって煙を上げている俺の小さな背中を見つめ、目のガラス(メガネ)の奥の瞳から大粒の涙をこぼしていた。


(ゴブは……自分の身一つで毎分三千発もの機関砲を受け止めて、僕を守るために一歩も動けなくなっている!!)


ハルトの胸が、激しい感情で張り裂けそうになった。


(あの大ボスがガトリング砲を撃ち続けている限り、ゴブは僕の前から離れられないし、このままじゃ周りのゾンビにトラックごと囲まれてしまう! いつもゴブに守られてばかりじゃダメだ……僕もゴブの相棒として、あの大ボスと戦うんだ!!)


ハルトは涙を拭うと、後ろの席に置いてあった一本の巨大な魔導具を両手で引っ掴んだ。

それはさっき要塞の中で首領クロカワから奪い取って持ち出していた、大人の背丈ほどもある『漆黒の超巨大魔導長杖』だった!


本来なら、普通の人間が立って構えることすら不可能な重さの鉄塊だ。

だが、俺との契約によって『レベル8』へと強化されたハルトの肉体は、その重い長杖を軽々と持ち上げ、横の窓から身を乗り出して、魔王の全身を覆う分厚い黒鎧の中で唯一曲がる関節部分――『右膝の継ぎ目』へと狙いを定めた!


「僕の大切な友達から、その汚い銃口をどけろおおおおおっ!!」


ハルトが恐れを知らぬ瞳で、引き金を引いた!


――ドゴォォォォォォォンッ!!


大砲のような雷鳴が荷馬車を揺らし、ハルトの放った【特大の黒弾】が白煙を切り裂いてまっすぐに飛翔した。

次の瞬間――その一撃は、二十歩先に立つ魔王の右膝の黒鎧の継ぎ目へと、寸分の狂いもなく直撃した!


――ガキィィィンッ! バキョッ!!


『ぐあああああああっ!? お、俺の右足がァッ!!』


膝の黒鎧を砕かれた身長二メートル十センチの魔王の巨体が大きくぐらつき、たまらず石の道の上に片膝をついた!

それと同時に、奴が抱えていた六連回転杖の先端がガクンと空へ向かって跳ね上がり、俺を縫い止めていた三千発の黒弾の嵐がピタリと止んだのだ!


《契約主『ハルト』が敵首領の脚部に痛撃を与え、黒魔法の詠唱を強制中断させました!》


俺は白煙の中で黄色い目を大きく見開き、横の窓から煙を吐く超巨大な黒鉄の長杖を構えているハルトを振り返った。


(こ……この鞄持ちの野郎……!!)


俺の長い緑の耳が、あまりの衝撃と感嘆にブルブルと震えた。


(昨日出会った時はレベル1のアンデッド三匹に腰を抜かして泣いていたモヤシ人間が……なんとあの『魔王』本人を前にして一歩も怯まず、超巨大な黒弾魔法を魔王の膝にぶち込んで片膝をつかせやがっただと!? なんという恐れ知らずの度胸だ、俺様の鞄持ちは本物の『歴戦の英雄(ブレイブ)』になりやがったぞ!!)


「ゴブ、大ボスの銃が止まったよ!」


ハルトが窓から俺に向かって叫んだ。


「あいつが立ち上がる前に、トラックの周りのゾンビたちを一気に片付けてきてくれ!!」


「ゴブッ!! グガ、ゴブゴブ!!(よくやったぞ、俺様の誇り高き黒魔導師よ!! そのまま荷馬車の中で見ていろ、周りの雑魚どもを五秒で掃除して経験値に変えてくるぜ!!)」


黒弾の重圧から解き放たれた俺は、『レベル43(敏捷240)』の脚力を爆発させて荷馬車の鼻先から飛び出した!


――ドォォォン! ビュオッ!!


俺の百二十五センチの体は緑色の稲妻となり、十輪荷馬車の周囲に群がっていた『二百五十体のアンデッド』の群れの中へと突っ込んだ。

右手に握りしめた愛用の『鉤爪付きの鉄の棍棒』を、渾身の力で横に一薙ぎする!


――ドゴォォォン! バキバキバキィッ! グシャアアアアッ!!


もはや今の俺が一振りするだけで、棍棒の風圧ごと一列十体のアンデッドがまとめて粉々に吹き飛んでいく!

俺は荷馬車の周りを緑色の竜巻のように一周し、わずか八秒足らずで二百五十体すべてのアンデッドを石の道の上で完全に粉砕して、再び荷馬車の鼻先の上へと颯爽と飛び乗った!


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