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目を覚ますと

 私は・・・死んで、その後どうなった?

 キズナは?メイは?というより・・・なんでまだ意識があるの?えっ!?死んでない?とにかく目を開けないと。

 恐る恐る目を開けるとそこには。たくさんの女の人がいた。えっ!?ここ病院!?

「あらっ!アマラ様!ルーペアト様!カトリーナ様がお目覚めになられました!」

 ん!?アマラ様?ルーペアト様?カトリーナ様?な、何を言っているんだろう?

 そう思って前足を動かそうとして、思考が停止した。えっ!?これ、足じゃない。キズナとメイにあった、手だ。えっ!?

「おぉ!カトリーナ!よかった無事に産まれてくれて。アマラも本当に、よくっ頑張ったな!」

「泣きすぎよあなた。カトリーナ、おはよう」

 なるほど、私の名前がカトリーナで、お母さんがアマラ、お父さんがルーペアトね。

 って!えぇー!?私もしかして産まれ変わっちゃった!?


 産まれてから一年後、いろいろ考えて、考えるのはやめた。だって・・・全然違うもん!まず、けっこうな頻度で雪は降るし(少なくとも一週間に一回は確実)、乗り物はないし、そもそも変な生き物もいるからキズナ達がいた世界とは違うことはわかった。

 でも・・・キズナ達には会いたいな。

 もう・・・会えない・・・のかな・・・

 そう思うと急に悲しくなった。悲しくなって私は大きな声を出していた。

「カトリーナ!どうしたの?ミルクはあげたから、お腹痛いの?それとも・・・」

 お母さんがいろいろ心配してくれている。

 違うんだよ、お母さん。

「オムツは大丈夫ね。眠いのかな?」

 お母さんがそう言うと、私の背中をトントンと優しく叩いてくれた。

 そうされたら次第に瞼が重くなってきた。

 ・・・眠いなぁ・・・

 そして私は一眠りすることになった。


 次の朝。目が覚めたらお母さんが散歩に連れて行ってくれると約束してくれた。そして支度を終えてついに約束の時間になった。

 外に出ようと、玄関先に向かった。正直外に出るのは期待もあったけど不安ももちろんあった。今は犬じゃなくてニンゲンだけど、記憶と感覚はまだ犬だった頃のままだからたぶんストレスとかも犬の時と同じはず。どうしても初めての場所は緊張する。だから勇気を出して玄関から出ようと・・・したところでお母さんに捕まった。

「ダ~メ♪一人で行っちゃめっ!」

 なるほど、ニンゲンになってもお母さん達と一緒っていうことね。あっ!よく考えたら私まだ、キズナやお母さん達みたいに歩けないんだった。

 その後いろいろと準備をしていよいよ出発!私はお母さんにおんぶしてもらって家を出た。

 家を出たら先ほどまで感じていた不安が一気になくなっていった。その理由は景色がとても綺麗だったからだ。

 頻繁に雪が降っているから当たり前といえば当たり前だが、見渡す限りの雪景色。そしてところどころにある雪のオブジェクト。キズナ達といた世界では見ることができない景色にさっきから興奮している。

 気付いたら私は小さな手を雪のオブジェクトに伸ばしていた。

「あら?手を伸ばしてどうしたの?あぁ!雪のオブジェクトが気になるのね」

 お母さんが気付いてくれると雪のオブジェクトのそばまで連れて行ってくれた。雪のオブジェクトを眺めていると触りたくなった。それで触ってみた。冷たっ!何!?この冷たさ!?犬だった時は感じることがなかった感覚。すごい!

「カトリーナ。さすがに冷たいわよ。ほら。手袋してっと!これで大丈夫!もう一度触ってみて」

 お母さんにそう言われてもう一度触ってみる。今度はあまり冷たくない。すごい。

「あっ!笑った♪ルーペアトにも見せてあげたかったな」

 どうやら今私は笑ってるらしい。なるほど、これが嬉しいということ。

 そうやって散歩をしていると、知らない男の人二人がお母さんの前に立ち塞がった。

「ようよう。クリスタル家の当主様じゃねーか」

「さっそくだがよ~。あんたの家を寄越せ」

 な、何を言っているんだろう?家を寄越せ?そんな身勝手な要求、このニンゲン社会で通じるはずが・・・

「分かりました。しかし、こちらもそうそう気軽に手放すことはできません。脅迫ではなく正規の申請を通してからまた来てください。」

 えっ!?いいの?というより、正規の申請って何?こんな身勝手な要求飲むの?

「へぇ。当主様が俺たちの相手をしてくれるの?」

「悪いが手加減しないぜ?どこ殴られても文句なしだぜ?」

 こういうのをゲスいっていうんだっけ?

「構いませんよ。ただし、闘うのは私ではありません。私の旦那です」

「あいつか?どこにもいないぞ?」

「いーや。ここにいるさ!」

 お父さんの声だ。どこから?

「カトリーナ、上」

 お母さんに上と言われおんぶから抱っこに切り替わった。そして私は自然と上を見ることができた。そしたら・・・

 なんとお父さんが空を飛んでいた。そして勢い良く着地。まるで正義のヒーローみたいな登場だ。

「ちっ!来ちまったか猛鳥さんがよ」

 猛鳥?お父さんは鳥じゃないよ?

「さて、闘技場はすでに予約済みだ。今すぐやるか?」

 なんか、お父さんが格好いい!

 そうして私達は絡んできた男の人達と一緒にある場所に来た。

 一旦お父さん達と別れてお母さんは席に、私はお母さんの膝の上に座った。

「見てて、カトリーナ。今からお父さん格好いいから♪」

 何が始まるのかよくわからないけどお母さんに言われた通り視線を前にした。

 視線の先には大勢の人、少し視線を下げたら巨大な平地があった。よく見ると私達の家より大きい。

「この世界ではね、ここのような闘技場でバトルをするの。バトルに勝ったら自分の考えを押し通せる。たとえそれが家の所有権を巡ったものであってもね。」

 うーん、なんとなくわかったような?

 その後もお母さんはいろいろ話してくれた。そうしてようやく理解できた。

 この世界では闘技場で戦う、つまり殴り合う。勝った側は負けた側に何でも要求できる。逆に負けた側は要求を飲まなきゃいけない。要求は1つだけできる仕組みになっているらしい。今回、相手は家を要求してきた。つまりお父さんが勝てば家は盗られない。

 じゃあ、お父さんが勝ったら何を要求するんだろう?

「ちなみにこのバトルで契約、つまり約束を結ぶこともできる。私達の家で雇ってるメイド達も試合で勝ち取ったものよ」

 えっ!?あのメイド達も!?どうやらこの殴り合い、私が思ってたより重要かも・・・

「これより正規の闘いを始まる!」

 審判と思われる男の人が高らかに宣言した。

「今回の試合カードはクリスタル家の猛鳥、ルーペアト選手!」

 お父さんの名前が呼ばれた途端お父さんが闘技場に現れた。

「そして対するは、クリスタル家の屋敷を狙う、チン選手とピラ選手!」

 えっ!?二人あわせてチンピラ!?絶対適当につけた名前でしょ!?

 両者の紹介が終わり、試合開始の鐘がなった。開始と同時にお父さんが飛んだ。そしてチンピラも飛んだ。いや、なんで飛べるの!?

 激しい攻防、になるかと思ったがお父さんの速度が速い。お父さんが片方のチンピラを捕まえて急降下。地面に叩き付けられたチンピラの一人は気絶した。

「兄者~!」

 なるほど、お兄さんか。

 そうこうしているうちにお父さんは再度上昇、残ったチンピラに迫ろうとしていた。

 ところが、急に風が強くなった。

「よっしゃ!やっと俺のターンがやってきた」

 チンピラは急降下。お父さんもそれを追って急降下。しかし、チンピラは見事な滑空技術で方向転換。お父さんは勢いが余って地面に落下。幸い軽傷だったみたいで再び上昇。チンピラは自由に空中を動き回っている。

 お父さんはどうするんだろう?

 そう思ってお父さんを見たら、空中で静止している。

「おやおやおや?もう降参かな?お尻ペンペン!」

 なんか知らないけどムカつく。お母さんも少し冷静さを失ってるみたい。

そんなやり取りから数分、チンピラは自由に空中で踊ってる。対するお父さんはじっと動かない。

「そろそろ決めるぜ!」

 そうチンピラが言うと一気にお父さんと間合いを詰めた。

 しかし、お父さんはこのタイミングを狙ってたのか、急接近してくるチンピラを間一髪で躱してチンピラの体を掴んだ。そしてお父さんは急降下、一気にチンピラを地面に叩きつけた。

「ハンター、なめちゃいけないぜ」

「試合終了!勝者ルーペアト選手!」

 会場内が盛り上がる。

 すごい闘いだった。私もいつかあんな風に・・・


 しばらくしてお父さんと合流した。

「お疲れ!格好よかったわよ、あなた!」

 お父さんの顔は晴れ晴れしていた。

「いやー、久々に暴れた。スッキリ♪」

「さすが私の旦那♪世界一格好いい」

 さすがに褒めすぎだと思うけど確かに格好よかった。だから私は今できる最大限でお父さんを称賛した。

「おぉ!カトリーナもパパを褒めてくれるのか?」

 私の精一杯の称賛をお父さんはわかってくれた。

 瞬間、あの日の出来事を思い出した。自分が落ちてきた木の下敷きになる前、キズナ達に逃げてと伝えなきゃいけなかったのに伝えられなかったもどかしさ。

 今回は状況は全く違うけど自分の言葉を理解してくれた、それだけで嬉しかった。

「さて、これからどうする?」

「提案なんだが、マジカルランクの測定に連れて行くのはどうだろう?」

 マジカル、ランク?なんだろう?

「ちょっと早すぎる気もするけど・・・」

「カトリーナは俺の戦いを見て、試合に興味を持ったに違いない。じゃないと今こんなに喜んだりはしないだろう」

 確かにお父さんの格好良さに憧れた。お父さんと同じように戦ってみたいと興味が湧いた。

「だからこの子がこの先どんな道に進もうとも俺達親にできることは早いうちにしといた方がいいんじゃないかと思ってな」

「そうね。今日測定できなくてもどんな場所か連れて行くだけでも価値はあるわね!」

 こうして闘技場を後にし、私達はマジカルランク測定場に行くのであった。


 私は今、闘技場の観客席で報告を受けていました。

「すっ、すみません!あの男意外と強くっ!」

 そんなことはどうでもいいです。

「問題はそこではありません。あなた達、彼との戦いに負けて何を要求されましたか?」

「えっと・・・今日から十二年間クリスタルの屋敷を狙うことを禁止にすると・・・」

 やはり、そう要求されましたか。分かりきっていたことです。

「いいですか?我々の目的のためにまず必要になるのがクリスタルが保有する家です。なんとしてでも手に入れなければなりません。たとえ、どんな手を使っても」

 そんな言葉を口にして、私は次の手を考えていました。

 次は・・・あの手で行きますか・・・

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