表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

失った幸せ

 人っ子一人いない部屋。耳をすませば誰かが階段を上る音。もうすぐ人が帰ってくる。

 えっ!?この部屋に私がいるから人っ子一人いないにはならないんじゃないかって?

 そこは問題なし。なぜなら私は「犬」だからである。

 もうすぐ帰ってくるのは私のトモダチ。この後散歩に行く約束をしている。そうこうしているうちに玄関先まで来た。私は走って玄関まで行き自慢の尻尾を左右激しく振りトモダチが入って来るのを待つ。

「ただいま-。シロ!待たせたね。ちょっと待ってて。すぐ準備するから」

 この人はキズナ。私の飼い主でありトモダチ!今はガッコウがないから毎日散歩に連れて行ってもらえる。今日はどこに行くんだろう。

「よし!行こう!」

 そう言うと私の首輪にリードを繋いで外に出た。と思ったら立ち止まった。どうしたんだろうと考えたけどふと思い当たることが一つあった。

「遅くなってごめん」

 そう言って走って来たのは一人の女の子。名前はメイ。キズナと仲が良いみたいで私の散歩にも一緒に来てくれる。

「ううん。俺も今来たところ。それじゃあ出発!」

 散歩が始まった。この時間が一番楽しい。普段は見れない景色、匂い。そしてキズナとメイの楽しそうな会話。それだけでもう満足。

「ねぇ、キズナくん。あの噂本当かな?」

「あぁ、世界が滅ぶっていう予言?あり得ないって」

 世界が滅ぶ?よくわかんない?

「でも、明確な日付まで予言されてあるんだよ?確か二〇二六年五月六日だったはず」

「たぶんだけど、外れるよ。だってノストラダムスの大予言も当時は注目されたけど結局何も起こらなかった。そう言う大きい予言ってだいたい外れるんじゃないかな?」

 よかった。滅ぶって決まったわけじゃないんだ。

 いろいろ話しているうちにけっこう歩いた。

「そろそろ公園で休憩しようか。えっと、近くに公園は・・・」

「それより、ここ工事なんてしてたっけ?昨日までは何もなかったよね?」

 そんな会話を聞いてる時、私の耳が変な音を聞いた。なんだろうこの音?なんか嫌な感じがする。

「本当だ。えっと、工事の案内は・・・まだ貼られていない?」

「でもけっこう進んでるよ。もう骨組みまで進んでるみたい。でも、通行止めのバリケードは設置されていないし、誘導をしてくれる人もいないよ?」

 その工事をよく見てみると、突然私の体が震えた。そうだ、この建物が危険なんだ。そうと分かれば早くキズナ達に伝えなきゃそう思って私はキズナとメイに危険を知らせた。でも私にできることは吠えることだけ。気付いて!

「どうしたの、シロ?」

 気付いて、ない?

 気付いてもらおうと何度も何度も吠えた。

「どうしたんだろう?体調が悪いのかも」

「じゃあ、私の家に行こう。この時間ならお父さんがいるはず」

 よかった。ここから離れてくれる。そう思った時には手遅れだった。

 建物を支えていた木が突然落ちてきた。

 私はとっさにキズナに体当たりしてキズナをこの場から離れさせようとした。幸いメイはキズナと手を繋いでいたからメイも一緒に離れさせることができた。

 けど、キズナとメイをどかした時にはもう落ちてきた木は私の目前まで迫って来ていた。そして何も抵抗できないまま、私は落ちてきた木の下敷きになった

「シロ?シロ!」

「シロちゃん!」

 ・・・キズナとメイの声が聞こえる・・・

 ・・・よかった、無事で・・・

「大丈夫ですか!?すごい音がしましたが」

「犬が・・・。俺の犬があの木の下敷きに」

「ここ、いつからこんな建築を?これ!バリケードはどこに!?」

「大変だ。直ぐに警察に連絡を!それと念のため救急車を!」

 ・・・なんか外が騒がしいな・・・

 ダメだ・・・力が入らない・・・

「どかしますよ。せーの!」

 だんだんと光が見えてきたような・・・

「シロ!」

「シロちゃん!」

 ・・・あぁ。キズナとメイだ・・・

「シロ?ダメだ!しっかり!」

「シロちゃん!」

 あぁ、私・・・死ぬんだ。もう力が入らない。

「どなたか、動物病院に連絡を!」

「シロ!シロ!」

「シロちゃん!シロちゃん」

 キズナ、メイ・・・もっと一緒に居たかったなぁ・・・

 そう思うと寂しくなった

 キズナやメイみたいに声を出して危険を知らせられたら、違う結果になっていたのかな・・・?

(生きたい?)

 ・・・生きたい・・・

(少し未来になるかもしれないけど、キズナとメイ。大事な人と一緒にいたい?)

 一緒にいたい・・・

 けど、私の命はもう消えかけている。せめてキズナとメイに伝えなきゃ・・・

「ワン(ありがとう)」

「シロ・・・。うん。俺もシロに会えてよかった」

「シロちゃん・・・。ありがとう・・・」

 最期にキズナとメイの声を聞き、私は静かに息を引き取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ