領地編 7 作戦会議
ぎりぎりセーーフ!(過去自分比べ)
なんとか今週も金曜日の朝に間に合いました……。こつこつ投稿しますので息抜きにぜひお越しくださいませ〜。
スピカもオリゼもキハも当然ながら体力には自信がある方だが、メレルナはほとんど本邸周辺で生活する生粋の令嬢なので疲れていないか心配していた。
「メレは大精霊様と休憩していてちょうだい。足にまめなどはできていないかしら?」
「まぁ、スピカお姉様。この靴をご覧くださいまし。私、どのように見えているか存じませんが本邸の裏手の山に入り浸っておりますからこのくらいの歩行は問題ございませんわ!」
よく見ると、確かにメレルナはワンピースドレスに似合う編み上げブーツを履いていた。親交が深まったのはこの数ヶ月、しかも夜会準備でてんてこ舞いだったので普段メレルナがどんな生活をしているのかスピカは知らなかった。
「あら?お転婆なのは私だけかと思っていたけど、山には何をしに行っていたのかしら?」
「スピカお姉様こそ、その女神のような外見でお転婆などという発想はまるでわきませんわ!私はお兄様の遊びに付き合っているうちに山での自由な楽しみ方を覚えただけですっ。」
オリゼとキハは、この女神と天使の姉妹のやり取りを眺めながら微笑ましさを堪能している。付き合いが短いなりにも2人の見た目と内面のギャップを知っているだけに「血は争えぬ」と考えているのである。
と、いうわけで健脚な一行はさほど時間もかからずマーガレットとオリビアの元に戻ってきた。
「ずいぶんと早いお帰りですが、工事に何か問題でも?」
振り向いた2人を見てさすがのスピカも驚いた。黒茶色の何かが顔中に塗りたくられ、見えているのは目と鼻と口だけ。それでもにんまり笑っているのがわかるって……。
「いえね、その顔と同じくらい驚くのだけど…すでに立派な橋が架かっていて、私たち1度ロックバード側まで渡って来たのよ。」
「「えっ!!」」
その瞬間、2人の顔に載っていた黒茶のものが1部剥がれ落ち、慌てて拾い上げると
「ま、まずこちらを落としてきますのでお待ちくださいませ!」
と言い残し、ぱたぱたと走り去っていった。残された3人はとりあえずテーブルに腰掛けて、キハがさっとお茶の支度を始めた。
「そうだった、驚きが重なってすっかり忘れていたけどシュワの実試しましょう?」
キハは食材保管庫を開けると、先ほどのキュイの実ジュースと海藻で固めた四角の透明なゼリーを取り出した。ついでに穴が開けられているシュワの実も冷蔵室から取り出して綺麗に盛り付けしている。魔蜂さんたら穴まで開けてくれたのね、とっても気が利くわ〜。一生懸命針を刺してくれている姿を思い浮かべて思わず笑みがこぼれた。
目の前に出された氷菓子は洗練された美しい仕上がりだった。ピンク色のキュイの実の果肉が添えられていて、とっても女性受けしそうだわ。みんなスプーンでひと口すくうと
「「「んーーー!!」」」
淑女らしからぬ頬のふくらませようだが、たくさん口に含むと本当にシュワシュワして面白い。
「なんだろう…クセになる爽快感ね。これはお父様たちも喜びそうだわ。」
シュワの実の可能性について(主に商業化)の話を詰めているとマーガレットとオリビアがぴかぴかになって戻ってきた。
「えっ!美容に疎い私でも変化がわかりますっ!あの、その辺に打ち捨てられている海藻が、そんな……。」
おっと、意外にもキハが食いついた。オリゼ付きで騎士も侍女もこなすスーパーマンはどうやら肌の悩みがあるらしい。スピカもたいがい美容に疎いが、2人の変化はよくわかった。
「ふふふ……オリゼ様、唯一海に面するエスエスト領、そして橋が架かったとなれば!王都に殴り込みに行きますよ!でも商品化の前には身内でまずあらゆるテストをしなくてはなりません。キハ様、まずはあなたが実験体となるのですっ!」
「あっ、そういえばセイダンが魔糸織の増産で猫の手も借りたいって…橋も架かってしまったしマーガレットだけでも戻れないかしら…?」
ものすごい熱量を前に、スピカは遠慮がちに切り出した。オリゼの領にも潤って貰いたいし、うーんどうしたものか…。するとメレのリボンが風でひらひら揺れたのに目をとめた。
「ねぇ、エスエスト領の魔糸織の在庫はどのくらい?」
「やることもなくて暇な時には常に織っているから結構あると思うわよ?」
キタキターー、スピカは閃いた。この重要な局面をうまく乗り切るために女性陣は作戦会議を開くのであった。
大きな橋が架かるってロマンですね。川のお陰でちょっとした離島のエスエスト領がわっしょい状態に繁栄するとお隣さんとしては嬉しい限りです。




