領地編 6 渡り初め
秋らしくなって参りました。読書シーズン到来でついついなろうサーフィンしてしまいます…。たま~に思い出してお越しいただけますと嬉しいです。
男性陣がロマンを追求した橋を架けている頃、スピカたちは海に来ていた。いわゆるプライベートビーチで、ここには領主一家しか入れないので今は女性専用ビーチとなっている。そのため遠慮なく素足で浜辺を歩き、波や砂の感触を堪能することができた。
「これは何かしら?」
ためらいもなく、謎の黒々しい物体を拾い上げたのはもちろんスピカだ。
「それは海藻といって、海の中で育つ植物のようなものね。湯を通せばそのまま食べられるわよ?さっき食べた菓子はぷるぷるしたけど海藻を使うともっと硬い食感になるの。」
「海は宝の山なのね~。」
「食べることが優先だからまだ試してないのだけど、以前船で立ち寄った商人が海藻を細かくして美容に役立てている国があると言っていたわ。」
それを聞いてマーガレットとオリビアがぴくっと反応した。どうどう、後で試してみましょうね?
当然のように見目の良い貝殻ではなく、山盛りの海藻を手にしてひとしきり浜辺を楽しんだ一行は台所に立っていた。まずは色、形ごとに分けて湯がいてみる。
「うわぁ、黒いだけかと思ったら想像以上に色鮮やかね!まさか赤い色が出るとは思わなかったわ。これなら食卓に出しても楽しめそうね?」
「それも良いですが、見てくださいませこの粘り!まずは私どもで実験しますから、楽しみにお待ちくださいませ…。」
マーガレットはすでに商人の顔になっているので、邪魔しないようにしよう。
「オリゼ、メレ、私たちは橋の見学でも行きましょうか?どこに架けるかくらい見ておいた方が良いものね。」
「えぇ、今後の流通の要になる橋だろうし職人仕事は勉強になるから興味深いわ。」
「「お供します!」」
キハは護衛として、深窓の令嬢イメージのメレルナだが意外とタフなことがわかり連れだって橋の見学に行くことにした。
オリゼの館は海に程近い高台に建っている。坂を緩やかにまっすぐ下ると魔の森へ、途中の別れ道をひたすら森に沿って歩くとかなり大きな川が見えてきた。これは大がかりな工事になりそうな川幅なのだが……ん?
「「橋!?」」
ちょうど川向こうはイースラック領ロックバードだが、森から数百メートルほど離れた辺りに立派な石橋がでーーんと架かっていた。
橋の幅は6メートルはあるだろうか、幌馬車2台が悠に通れる程広い。領の境の川が5~60メートルくらいの川幅だから立派のひと言に尽きる。川の中にもアーチの足部分が何本か立っているが…いったいどういうやり方をしたらこの短時間で歴史に名を残しそうな建造物が完成するというのだろう……。
「皆さま、新作のお菓子もありますし休憩なさいませんか?」
近くに寄ればまぁ、楽しそうなこと。旧知の仲のような気安さと連帯感というのか…お隣同士だしこれをきっかけに行き来が活発になれば万々歳ね。
「我々の領の女神たちがお出ましだ!大精霊様に、いの一番に橋を渡っていただき女神の祝福を得られればこの橋は未来永劫崩れませんぜ!」
「「「おおぅ!!」」」
ペトラノーム様やアウディーレ、ガルディは他の精霊や魔蜂らと共に大活躍してくれたようだ。
「ペトラノーム様、本日も大活躍だったとか?人間の世界では"初めて"を誰がするかで縁起を担ぎます。どうぞ完成した橋を渡っていただけますか?」
スピカの持つカゴをちらちら見ながらも、橋を架けるという大仕事を共にやり遂げた男性陣の熱を受け、大精霊様は橋へ1歩を踏み出した。
スピカたちも後に続き「この橋が壊れることなく、2つの領を永遠に繋ぎますように」と呟きながら渡っていく。無意識に『保存』の祝福を掛け流しているのできっとこの橋は壊れることなく架かり続けるだろう。
「風が心地良いから、用がなくても橋を渡りたくなるわね?」
「そうね、海とはまた違った風だわ!エスエスト領からしたら、劇的に王都への道が拓けて出来なかったことがたくさん出来るようになると思うし…」
「海の食べ物もその方のお菓子も食べ放題じゃな?」
ペトラノーム様は振り返ると満面の笑みで催促した。オリゼはガクガクと首を縦に振り、心の中で「新作は真っ先に献上する」と決意した。
「大精霊様、ひとまず領主邸にて休憩なさってください。また後程お力添えいただきますのでよろしくお願いいたします。」
レグルスはそう言うとサイモンと慌ただしくその場を離れた。スピカはバスケットをアルバークに託すと一旦エスエスト領に戻り、マーガレットとオリビアを呼びに行くことにした。
男のロマンを詰め込んだ橋が架かりましたね!大は小を兼ねると言いますし、広い分には橋の上で屋台なども出せそうで夢がもりもりです(´∀`)
海藻で化粧品…大儲けの気配。




