領地編 5 大精霊は大ざっぱ
今週も覗きに来てくださってありがとうございます。皆さまのお越しが原動力ですっ(涙)
魔の森へは全員で行くことが決定したが、まずは目の前の未知の食べ物である。オリゼによれば新作の菓子だというので、ひとくちすくって食べてみる。
「う~ん!あっさりしているのに噛みごたえがあって後から濃い甘さがあふれて楽しいわ!」
ぷるぷるの丸い透明な物体は、ゼリーよりもちもちしていて中に濃紫の甘い豆を潰したものや果物のジャムが入っており、女性陣は夢中になって食べ比べた。大精霊様の顔がちらりと浮かんだがとりあえず追い払ってみた。
「背負いカゴのような道具はあるかしら?」
新作のお菓子を堪能後、魔の森へ出発する前にオリゼに聞いてみると、
「もちろん、あるわよ。キハに背負わせれば足りるかしら?」
「あら、キハは騎士でしょう?私が背負うから貸してちょうだい?」
「いえいえいえスピカ様、お背中に傷がついてはいけませんから私が背負いますっ!」
かごを持ってきたキハから奪うようにマーガレットとオリビアがかごをスピカから遠ざけた。残念そうなスピカの後ろから、その表情を記録するメレルナのペンの音がシャカシャカしているがもはや定番の風景となりつつある。
なだらかな坂を下り、魔の森の中へ入るとスピカは上を見上げてシュワの実を探した。さすがにエスエスト領でシュワの実を採る者はいないようで鈴なりの木をすぐ見つける
ことができた。
「けっこう背が高いわね…。」
ためらいもなくスカートの裾をたくし上げて木に登ろうとするスピカをマーガレットとオリビアが全力で止めようと騒いでいると、ぶーーんという羽音が聞こえてきた。振り向くとスピカたちにはお馴染みの魔蜂たちがホバリングしていた。
「あら!あなたは初めましてかしら?」
魔蜂の子がシュワの実を抱えてスピカに渡そうとしており、スピカはポケットから蜂蜜キャンディを渡して頭をなでなでしている。
この間わずか3秒。それこそ間違いなく「初めまして」のオリゼとキハは完全にフリーズしているのだが、初めての2人にもわかる魔蜂の「嬉しい」オーラに当てられて可愛く見えてくるのだから不思議なものである。
「私も…なでなでしたい…。」
オリゼは思わず口を押さえたが、すでに遅し。心の声が盛大に漏れてしまった。スピカは嬉しそうに振り向くとオリゼに手招きした。
「わぁ……ふわふわだわ…!」
ちょうど大きめのぬいぐるみほどの魔蜂を抱えて、頭をなでくりまわすオリゼに、キハははらはらして見ていたが魔蜂はうっとりしているようで安心した。
メレルナは…頭に魔蜂が乗っているのも気にせずどこからかスケッチブックを取り出して魔蜂と会話するスピカを激写(筆?)していた。
「ありがとうございます。」
マーガレットとオリビアはすっかり耐性がついているので、魔蜂たちが運んでくるシュワの実やたまに混ざるブルーベリーをせっせとカゴに入れている、さすが。
スピカは身ぶり手振りで魔蜂と会話すると蜂蜜キャラメルとキャンディを袋に入れて渡した。
「今渡しきれない分は後からオリゼの家に届けてくれるって。気に入ったら何かお菓子を渡してあげれば定期的に運んでくれるそうよ?」
オリゼはぱぁっと顔を輝かせてサムズアップした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その頃、ノリノリの大精霊一行は川岸にいた。
「どこに架ける?ここか?そこか?いつでも準備はできておるぞ。」
「ありがとうございます、大精霊様。職人にも聞きますのでこちらを召し上がって少しお待ちください。」
前のめりなペトラノームの舵をとるのはもちろんアルバークである。実はメレルナの持ってきたカゴにも珍しいお菓子がぎっしり入っているのだが、さすがアルバークも別カゴでわんぱくから令嬢まで大満足の豪華サンドイッチセットを持参していたのだ。
大精霊様がサンドイッチに夢中の間、適当に橋を架けられないよう当主らと職人チームが大慌てで準備をしている。いちばん経済効果が得られそうな場所を地図とにらめっこしながら絞り込んでいく。
「アルバーク、大精霊様は…その…材料も全て作り上げて、使う量は気にせずとも良い感じか?」
「はい、恐らく無尽蔵に岩や石などを理想の形に成形して生み出し、積み上げは森の魔物たちや精霊たちが手伝ってくれるので部材の形と置く場所さえ的確に指示できれば夢の橋が架かるはずです。」
「うーむ…特産品の行き来や港を整備することを考えると大きな荷馬車が行き違いできて、さらに歩く人も危険なく渡れるとんでもなく広い橋を架けたいのう。」
「レグルス殿っ!それは男のロマンですなぁ!せっかくですから大きく行きましょう?」
あ、サイモン様は見た目どおり脳内もワイルドのようだ。だが、ロマンには共感しかない。
「よしっ!親方、遠慮はいらねぇ…王国一の橋を架けましょうぜ!」
「「「えい、えい、おーーー!!!」」」
「だから、殿方に任せっぱなしだと巨大化するんですよ…。」
「お肉もお魚も大きければ良いってもんじゃないですわ!しかも今回は橋ですからね?」
まぁ、大は小を兼ねるっていうありがたい言葉もありますし…。




