領地編 4 大精霊は橋を架けたい
今週も自分に打ち勝ちました。つい、なろうサーフィンしてしまうのですよねぇ。金曜日の朝にこつこつ更新しております。息抜きに覗いてやってくださいませ。
「我らの力を総動員すれば……?」
え?という顔でアウディーレとガルディが振り向いた。そうだよね、巻き込まれたと思います。
「橋が架かれば全て解決じゃ!石の成形は任せよ。アウディーレは石の精霊に伝達、ガルディ殿は運搬の協力を。」
「「はいっ(うむ)!」」
まぁ、やる気に満ちあふれているわ…みんなよほどここの食事が気に入ったのね。
「ペトラノーム様?それでは橋の専門家を呼びますので1度父とアルバークと職人を連れてきたいのですが…。」
「よし、任せるがいい。」
すぐに移動しそうだったので、慌ててサイモンとオリゼに断りを入れた。2人とも目が点になって首をガクガク縦に振っている。
本邸庭に再び現れた2人にたまたま通りかかった父レグルスが驚いている。魔糸織が届いたお陰で先ほどよりは邸内が落ち着いているようだ。お父様に手早く説明し、こちらの緊急事態への協力を求めた。
はしたないが、遠くにアルを見つけたので大声で橋関係の職人ですぐに来れる者の手配を頼んだ。少し時間がかかると考えたスピカはマーガレットとオリビアにも声をかけ、特急で荷造りをしてもらった。橋を架け始めたらいつロックバードに行けるかわからないからね。
「大精霊様お待たせいたしました。大人数ですがよろしくお願いいたします。」
当然のように、待ち時間はスピカお手製の蜂蜜ハーブキャンディとキャラメルを交互に口にしていたので実に大人しく待機していてくれた。
「任せよ!」
いつものことながら一瞬でサムリー邸の門前にいた。領民が見たらひっくり返るよ?気配を察してサイモン父娘が出てきた。いくらお隣の領地とはいえ、当代では初対面となる父たちはがっちり握手をして挨拶している。
「中座してしまい申し訳ありません。職人も連れてきましたので、どうぞよろしくお願いいたします。」
スピカは主導権をレグルスやアルバークにさっと渡すとオリゼに目配せし、女性陣だけで邸内に入った。オリゼはキハに何か指示すると海に面した庭にある温室へと案内した。
「オリゼもメレもごめんなさいね。大精霊様は思いついたらすぐ動くから…。」
「気にしないで?メレルナ様がいたから場がずっと明るかったのよ。妹がいたらこんな感じなんだ〜という体験ができたわ。…それにしても急展開ね!」
「私もさすがに驚いたわ。いったいどのくらいの期間で橋を架けてしまうつもりかしら…。まぁ、その辺りは領主とプロに任せておいて、それよりもエスエスト領の食材や織物の話を聞きたいの!」
海に面していることで、たまに遥か遠くの国の船が立ち寄るのだとか。今回のお菓子に使われている豆やぷるぷるの元になる植物もそういう船が運んできたという。衣装やタペストリーは同じ魔糸織なのに、色糸を組み合わせたり、後から染めたりと華やかさがまるで違うのだ。
「隣の領なのに、こうも違うなんて素敵ね?ここだけの限定品で売り出してもいいけど、もったいないから王都販売目指していきましょうよ。」
器用なマーガレットやオリビアは織物や藤家具の仕上がりにうっとりしながらも目をギラギラさせている。…間違いなく販売時の利益計算しているわね。
「お待たせしております。」
キハが大きなお盆に琥珀色の液体と、丸くて透明な揺れる物体を運んできた。お酒のようにも見えたが、メレの前にも置かれたところをみると違うようだ。
「これはキュイの実を蜂蜜で漬けたジュースなの。そのままだと甘すぎるから冷たい地下水で薄めてあるわ。」
ひとくち飲んでみると香りは甘酸っぱく、爽やかな酸味と奥に豊かな蜂蜜の味がした。夏に海を眺めながら飲むのにぴったりだと思ったその時、スピカはあっ、と声を上げた。
「そういえば、魔の森でシュワの実を採る約束だったわ!このジュースをシュワの実で割ったらまた美味しいと思うの。」
「え?冗談でなく本当に行く気だったのね。」
「私はどうやらガルディ(森の番人)から森の安全の守護をもらったみたいだし、魔糸織を身に付けていれば魔物はへにゃへにゃになるのよ?」
そういうと皆を見渡した。オリゼもキハも魔糸織の衣装だし、マーガレットとオリビアは美容効果の高い布を身に付けていないはずがなく、メレは…とよく見るとエスエスト領の織鮮やかなリボンを結んでいた。
「まぁ、メレはそのリボンよく似合うわね!」
スピカの顔の方がへにゃっとしているが、眼福なので誰も指摘しない。当のメレルナは心のスケッチに爆速で姉の絵姿を書きなぐっていた。
「もちろん、無理にとは言わないわ。1人でも大丈夫だし…。」
皆無言でお互いの顔を見つめ合った。『『いやいや別の意味で大丈夫じゃないから!』』
「もちろんお姉さまとご一緒させてください。そのために私、許可をもぎ取ったのですもの!」
さすがメレルナ、空気を読んでいち早く賛同の声を上げた。みんなの共通認識は「スピカを1人で行動させない」である。
「ぷるぷるの謎の物体気になる〜」
「橋を架ければ全て解決!」
「ペトラノーム様って気だるいのが売りでは?」
「美味しいは正義!」
早く橋が完成すると良いですね〜。




