序章 13 ブルーベリー事件①
ああっ、また今週もギリギリの綱渡りに~。しかもブルーベリー回が終わらず2回に分けました。2回目は早めに投稿したいけど…善処します(汗)
魔糸織工房にうっかり長居をしてしまったのでペトラノーム様は拗ねていらっしゃらないかな~と心配したスピカだったが、ヨーグルトに各地のブルーベリーと魔蜂の蜜を載せた豪華なおやつに舌鼓を打っていた。その横で領主邸の通いの料理人が気配を消して立っている。
「まぁ!アスランが来てくれていたのね?アイスクリームも美味しかったけどヨーグルトも合いそうだわ。」
アウディーレやガルディもすっぱいブルーベリーを夢中で食べていたから精霊たちは酸味も平気なのね。お菓子の種類が増えそうで良かったわ~などと意識を飛ばしていると
「森の番人も魔糸織には抗えんのだな?なんとも不思議な光景だわい。長生きするものじゃな。」
ペトラノームの声がしたので顔を上げると、スプーンでかごを指している。ガルディはかごの中に入れた魔糸織にくるまりながらうだうだしていたので、スピカがそのまま運んできたのだ。
「こればかりは大精霊殿にもわかりますまい…あーー何もしたくない…むにゃむにゃ。」
すかさずアルが工房での経緯と明日の森探索についてさくっと説明を挟んだ。さすが。
「ふむ。魔の森のブルーベリーで新しいお菓子が食べられるのは楽しみじゃな!」
対魔物の魔糸織実験はまるっとすっ飛ばして、やはり大精霊様の菓子好きはぶれない。スピカの気合いもにじみ出ていて、この熱量を夜会に...と思うのはマーガレットを筆頭とする侍女群である。
「さ、スピカお嬢様はお約束のお身体お手入れの時間でございます。」
マーガレットは有無を言わさぬ顔で促すので、スピカはかご(ガルディ)を大精霊に託すとアスランとアルに「よろしく」の目線を送って連行された。
「さっきはマーガレットと魔糸織工房ですれ違ってしまったけど、魔糸織の効能については聞いたかしら?」
「先ほどは失礼いたしました…ガルディ様を見たらじっとしていられず、服飾縫製の工房に駆け込んでおりました。大まかなところは兄アルバークの説明で理解いたしました。」
「マーガレットは走り回ってくれているのだから気にしないで好きに振る舞って?それにしても魔糸織のお揃い衣装にしたらガルディはまったりモードかしらね?」
想像すると、それもまた可愛らしい気もするがまったりあんばいは本人に確認してもらうのがいちばんだろう。
「それにしてもスピカお嬢様、段違いにお肌がつるぴかですが何か思い当たることはありませんか?」
「うーん…魔蜂の蜜を食べたのと日除け対策で魔糸織でぐるぐる巻きだったことくらい?」
マーガレットの目がきらーんと光ったがすぐさま表情を戻した。
「なるほど、こちらも明日は女性陣総出で実験ですね。これが当たればとんでもないことになりますが…。」
「?実験に必要なものがあれば言ってちょうだい。さっき魔糸織の端切れもたくさんもらったし、なんならガルディに言えば魔蜂の蜜ももらえるわよ?」
ぐえっ、マーガレットの指が背中のつぼにヒットした。どうやらマーガレットのやる気に火がついたようだ…スピカは痛みに耐えながらも、領地の皆が賑やかに新しいことに挑戦する雰囲気を楽しく感じていた。
「明日は森のブルーベリーが手に入りそうだから皆にもお菓子をご馳走するつもりよ。」
「まぁ、それは楽しみですね。明日も全身魔糸織の装備でお願いしますよ?」
森の実りを探索して、分けてもらえるものがあるなら新しい産業が立ち上がるかもしれない。スピカなりにそっと気合いを入れるのであった。
翌朝、マーガレットが用意してくれた森用の衣装は乗馬服に似ているがゆったりしていて着心地が良かった。袖は短めだが、ひじまで覆うロンググローブとセットでわざわざフリルが縫い付けてあるところに職人の気合いと圧を感じる。そして驚くほどの濃紺色は昨日の傘と同じ生地から作ったらしい。濃い色の生地の方が日焼けしにくいとか、職人衆の気合いをひしひしと感じスピカも気を引き締めた。
「スピカはそんなにブルーベリーが好きであったのか……。」
姿を見て開口一番、ペトラノームがつぶやいた。「わしも好きじゃぞ~」と特製ポケットからガルディの声が聞こえる。今日の探索に加わるメンバーは温かい目で見守っている。
「よし、それなら早く行かねばなるまい!」
いつものようにさっ、と手を振ると全員がたちまち森の入口に立っていた。ポケットから顔だけ出してガルディが魔蜂とやり取りをすると無数の魔蜂が森に飛び去った。
「魔糸織の実験があるなら魔物がいないと困るだろうのう。もし魔物とトラブルになりそうなら、魔蜂が間に入る手筈としたがよいか?」
「森の番人様、感謝申し上げます。」
アルがお礼を述べると色とりどりの魔糸織の服や小物に身を包んだ探索隊員が一斉に綺麗なお辞儀をした。
「それでは2時間後にここに戻るとする。探索開始!」「「イエッサーボス!!」」
スピカに付いて行けば美味しいものにありつけると信じているペトラノームは当然のようにスピカ組である。ガルディがペトラノームにブルーベリーの生息地を耳打ちしたようで、一呼吸する間に辺り一面、巨大なブルーベリーがひしめくエリアにやってきたようだ。
「こんなに楽をしていたら、人間として駄目になりそうですわ。」
「どうせ食材を探して歩くのであろう?スピカはお菓子をご馳走してくれればそれでよい。」
スピカは食いしん坊を愛でながらも、丸々と大きなブルーベリーを手に取った。こんなに大きければジュースやジャムにすれば砂糖がわりに使えそうね…。うーんこのまま食べてみたいけど…と、悶々としていたら魔蜂にさっとブルーベリーを拾い上げられてしまった。なぜかガルディが暴れている。
「色素が顔について落ちなくなったらどうするのじゃ!」
間一髪!さすが騎士、危うくスピカの顔が濃紫色に着色してしまうのを防いだ。グッジョブ。
レグルス(父)「スピカ~~(涙)すぐ報告に戻るって言ったのに。お菓子をたくさん用意してるよ~。」
カストル「菓子のセレクトショップでも開店できますね。」




