序章 12 迷いの森は宝の山
あっ、気がついたら更新が明日に迫っていた!スピカのうっかりが移っただけですが…どうにか間に合いました(汗)
職人の工房から戻ったマーガレットにガルディを紹介すると、目を血走らせながら採寸とデザイン画を書き終え再び出かけていった。
「うちの妹があわただしくて申し訳ありません…。スピカお嬢様を飾り立てるのが夢みたいで張り切っております。」
「そんな!マーガレットのお陰で夜会準備に苦労せずにすんでいるのだから…あら、魔糸織を分けてもらうつもりだったのだけど、誰に声をかければいいかしら?」
「それなら、工房にご一緒しましょう。」
慌てて侍女が日傘を差しかけるとスピカは苦笑したが、日傘の生地が魔糸織であることに気がついた。
「魔糸織って染められるようになったのね?濃紺だけど傾けたら淡い色になって楽しいわね。」
魔糸織といえば生成色が主でいかに白くするかが課題と聞いていたがこれならもっとたくさんの人に着てもらえるかもしれない。
「実は魔蚕の食べ物が影響していると最近分かったのです。この傘の糸を紡いだ繭はみごとなブルーベリー色でしたよ。」
領主館に常駐の侍女はいないのでスピカがいる時だけ職人兼侍女をしてくれているオリビアは、スピカの疑問にすぐ答えてくれた。
「染めるのではなく、最初から紡ぐ糸に色がついているのね?それならさほど手間がかからなくていろいろな色糸が作れそうね。」
「そうですね、食材の色がそのまま染まるわけではないようで今試行錯誤しながら色糸を作っております。実はこの日傘の紺色ですがブルーベリー色の繭でしたのでいろいろな産地のブルーベリーを試してみたのですが不思議なことに同じ色にならないのですよね…。」
「どこのブルーベリーが紛れ込んだのかしらね?森の鳥がどこからか運んできたのかしら。」
そんな会話をしているうちに魔糸織工房に到着した。マーガレットは不在だったが工房責任者のセイダンがいたので魔糸織の端切れがないかたずねてもらった。どうやら大きな納品が終わった後らしく、色とりどりの大量の端切れが残っておりラッキーだった。
「それにしてもスピカお嬢様はとんでもないことになりましたねぇ。以前にも増して美しさの凄みが出たというか…マーガレットが張り切るのも納得ですね。」
「いつもお世話になっている工房の織物を広めるチャンスだから、精一杯宣伝してくるわね。あぁ、そういえば森の番人から聞いたのだけど、魔糸織に仲間のような雰囲気を感じるから魔物が友好的になるらしいわよ?」
ガタガタッとセイダンが椅子を倒しながら立ち上がった。アルがあちゃー、と隣で眉間を押さえている。
「あっ?伝えてはいけない事柄だったかしら?」
困り顔のスピカも破壊力満点なので慌ててアルが訂正した。
「いえいえ!遅かれ早かれ共有する予定でしたから、ちょっとあまりの新事実に驚いただけですよね、セイダン?」
「は、はいっ、初耳が2つも3つも出てきたのでつい我を忘れました。申し訳ございません!」
スピカの肩からひょこっと顔を覗かせた2人?が「さもありなん」という表情でうなずいている。タイミング良く茶菓子が運ばれてきたので2人分テーブル上に席を用意してもらうと、大小さまざまなブルーベリーに目を見張っている。
「ブルーベリーってこんなに小さいんだね!」「青い色もあるのだな?」
「2人が知っているブルーベリーはどんな感じなの?」
スピカが何気なく聞くと、どうやら迷いの森のブルーベリーは魔蜂の頭くらい(大皿くらい)あり、真っ黒に見える濃紫でひたすら甘いようだ。顔や手に汁が付くとしばらく紫色がとれないらしい。紫色の2人を想像したら可愛いが過ぎる。
「森の者たちはたまに気まぐれで食べる程度だから実のなる季節は熟れたブルーベリーがそこかしこに落ちて甘ったるい匂いに辟易しておる。」
ブルーベリー色の顔でガルディが言う。その品種結構酸味が強いけど気に入ったのね…今度ジャムにしてあげよう。
「それなら分けてもらっても良いかしら?お菓子の材料としても気になるし…」
「人間が収穫すれば匂いも少なくなるじゃろう。好きにするがよい。」
お許しをもらったスピカは上機嫌で何を作ろうか考え始めたので、チャンスとばかりアルバークが切り出した。
「ところで…この布のことを詳しくお聞きしたいのですが。魔物が気に入るというのは本当ですか?」
「最初にスピカに会った時、何となく仲間に見えて敵意がわかなかったのじゃ。つい、近づきたくなるような、不思議な感覚だのう。」
ガルディは濡らした端切れで顔を拭かれ、かごの中のもらった端切れにくるまれながらまったり答えた。おや?○○をダメにするソファーか?
「他の魔物にも同様の効果があると思われますか?」
「魔物と呼ばれるものは気質や形こそ違うが成り立ちは基本的には一緒じゃ。何ならスピカが森に入るときに試してみればよかろう。どうせ大精霊もわしらもいるし安心じゃ。」
と、いうわけで森の探索を先にすることが決定し疲れた顔の男性陣をよそに、スピカはキラキラオーラを飛ばすのであった。
レグルス「数日後って言ったのに…。」
カストル「スピカお嬢様ですから、きっと突然現れますよ。王都のお菓子をたくさん準備しておきましょう。」
待ちぼうけの父であった。




