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序章 10  魔蜂が美味しそうに見える件

こつこつ金曜日の朝に投稿できるよう頑張ってます。気長にお付き合いくださると嬉しいです。

翌日、マーガレットから解放されたスピカはいつものメンバーで迷いの森の際にある小さな山に調査に来ていた。スピカは全身を魔糸織の服で覆われ、つばの広い帽子を被っているので琥珀色の奥に藍色が煌めく目を見てようやく本人とわかるくらい完全武装である。


「ほうれ、そこの横穴から中に入れるぞ。」


大精霊はこともなさげに言うのだが、百戦錬磨のアルですら躊躇してしまう存在が穴の横にでーんと居座っているのである。


「だ、大精霊さま…あの巨大な蜂がにらんでいるように見えるのですが……。」


そう、気軽に動けないのは見たこともないほど巨大な蜂が穴の隣にそびえる木の側でホバリングしていてまるで「近づくな」と言わんばかりにこちらを見ているからである。


「昔、人間があの魔蜂の蜜をめぐって争っていたぞ?美味しいのではないか?」


「美味しいと言われましても、どう見ても命がけの採取ですよね…。」


アルは仔犬の大きさほどの魔蜂を見て、ぶるりと震えた。スピカにまだ近づかないよう伝えておこうと振り返ると、いない?慌てて前を見るとスピカが魔蜂の前で身振り手振りで何か交渉している。


「ありがとう!」


あ、交渉成立してるし。アルは考えることを放棄した。ウキウキの足取りで戻ってきたスピカは小壺を抱えている。


「今日は蜂蜜キャンディと交換で少し蜜を分けてもらえました!次は別のお菓子と魔糸織を持ってくる約束です。」


蜂なのに蜂蜜キャンディって…いや、蜂だからおかしくないのか?それに魔糸織??はてなマークを飛ばしながらもアルはかろうじてうなずいた。


「帰ったらこの蜜でお菓子を作りますからね!」

「それは良い!調査は何が必要じゃ?何でもやるぞ。」


アルはすっとペトラノームの側に寄ると報告書をめくりながらあれもこれもとお願いを始めた。スピカの仕事は無さそうなので、せっかくならと魔蜂のところへ戻ることにした。アウディーレは同じ羽仲間として魔蜂に興味津々の様子で光の粉を煌めかせながら魔蜂の周りを飛んでいる。


『そなたは仲間か?』


突然、スピカの頭の中に声が響いた。目をぱちくりさせながら辺りを見渡すが、人間はいない。アウディーレを見たら魔蜂と目があった。?私?私に声をかけているのかしら…。


『そうそう、そなたは仲間か?』


あ、心の声が聞こえていたみたい。それならば、と心の中で呟いてみた。


『私はスピカと言います。仲間かどうかはわかりませんが、蜂蜜は大好きです!』


『ふむ、そなたが身に付けている布から同じ揺らぎを感じたから仲間かと思った。心地よい揺らぎが気に入ったのだ。甘い食べ物も持っておったしな。』


『それでこの布を持ってくるよう言ったのですね。あなたのことはどのように呼べばよろしいですか?』


『皆は"森の番人"と呼んでおる。』

『じゃあ、ガルディと呼んでも?』


アウディーレが天を仰いだが時すでに遅し…。一陣の風が吹くと、魔蜂が金の短髪に漆黒の瞳の愛らしい人間騎士の姿で跪いていた。スピカは驚きつつも、「可愛い」騎士に釘付けでガルディの手を取った。


「まぁ!ガルディよろしくね。アウディーレ、お友だちが増えたわよ!」


ウキウキのスピカの頭上ではアウディーレとガルディがふわふわ飛んでいる。ガルディからも金の粉が振ってきた。


「森の番人の祝福じゃ。迷いの森で迷うことも、魔物に敵意を向けられることもなくなるから便利だろう。」


「まぁ!森の恵みをいただけるのですね?ありがとう、ガルディ!」


どんなお菓子が作れるかワクワクしているスピカの横では2人?がスピカのうっかり具合について共有していた。


『初めにぐいぐい来た時は魔蜂なのに食われるかと焦ったぞ…』『あー、きっと後ろの蜂蜜しか見えてなかったと思うよ…でもスピカのお菓子は絶品だからラッキーだね!』『うむうむ、人型なんて何百年ぶりじゃ。楽しむとするか。』


なんだかんだで意気投合する2人。美味しいは正義、スピカはまた胃袋を掴んでしまったのであった。

無自覚がすぎるー!早く夜会に送り出したいのにスピカが巻き込みすぎて事故だらけだよー。でもお菓子の材料が増えるのは大歓迎だよね!

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