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蒼虹結晶の樹の元で2人は契を交わす  作者: 片海 鏡


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52話 転写

「魔術とは違う独自の術式を持つロズマキナ人の因子。人造神計画で唯一最終段階まで行った俺の体の一部。それを交じり合わせて作られた最初で最後の成功例……フローラくんは、魔女の素養を持った男の子なんだってね?」


 服屋の際は、あえて目立つ行動をしていたパンジーとムスリカに目が行きがちだったので気づかなかった。だが、二回目、三回目と経てアリュスは確信していた。


「俺の一部の方が、ロズマキナ人の因子よりも勝っているみたいだ」


 まだ肉体の年齢が第二次成長期を迎えていないフローラは、服装を工夫すれば姉たちの中へ紛れ込める。だが、それも時間の問題だ。間近で見れば、成長を始める骨や首などに違いが生じ始めている。


「だから、何だと言うの」

「魔女の魔法の一部は、特定の人物の髪や血が必要だと聞いた。俺の身体も、特別仕様だ。俺を使うのなら、俺の許しが無いとできない」


 アリュスと再び対面した際に生じたフローラの異変。あれは試し行動だった。

 そこにコルエの封印の魔法が加わり、完全に術式を無効化され、フローラは体内の魔力の流れを魔法に回せなくなっていた。


「アタシを、どうする気だ」

「まずは杖の破壊」


 フローラは再び目を見開き、アリュスは頑なに握られている杖に目線を向ける。


「やめろ」

「不老不死への渇望。記憶と人格の転写。その杖の赤い宝石は、先代の赤翼の騎士団長だろう?」


 フローラがママと呼ばれる魔女がいる。しかし、当事者がいない。

 極氷の民と大殺戮、コルエの過去、星界神石という国家機密に等しい情報を知っている。

 口調こそ統一されているが、ムスリカに対する発言が子供のモノでは無かった。

 フローラは最後の世代であり、ホムンクルスを従わせる権利を何故か保有している。

 名を持つ結晶を従える殻の神が、地杖の宝石に対して一切言及していない。

 半年前に地杖を入手して以降、フローラの発言と行動がおかしくなり始めた。

 ムスリカの話によれば、赤翼の騎士団がホムンクルスの製造試験と実験を始めたのは、10年ほど前からだ。病弱であった施設長が2年前に亡くなり、代替わりした途端彼女達の待遇が悪くなっていった。


「違う」

「正解だね」


 ようやく〈フローラ〉が心から焦り始めている。


「どうして知っているか教えてあげる。俺もその実験の被検体になった時期があるんだ。帝国の魔術師は、悪趣味な奴が多くてね。俺の場合は、一時期人格の分離と結合を何度も繰り返したよ」


 魔術の詠唱文として織り交ぜられた膨大な情報を他者へと転写する。数回に分けて行われたが、アリュスは身体の拒絶反応による魔力の暴走が発生し、実験分野が変更された。

 他の人間を用いて実験は続けられ、やがて血縁関係者であれば記憶が定着する確率が上がる事が判明した。その中でより成功率を上げるために、石や本などの物質に保管する方法が模索された。

 先代の赤翼の騎士団団長兼施設長は闘病生活を送る中で、宝石への人格と記憶の転写の実験に力を入れ、不老不死になろうとしたと考えられる。それでなくとも、健康な体への執着はあっただろう。


「でも残念だったね。フローラくんは相当に強い。意識が混ざり合っても、主導権を完全に握らせてはいない。その証拠に、君の魔法はほんの一部しか使えなくなってる」


 光、爆発、対象の操作、そして肉体強化。どれも高水準だが、それしか使えない。得意分野に特化した魔術師でもあっても、基礎中の基礎であれば苦手な属性の魔術であっても発動できる。それは魔法使いでも言える話だ。

 空間転移の魔術が徐々に距離が短くなり劣化したのも、フローラの身体に刻まれた術式が分解し始めていたからだ。

 宝石への記憶の転写と所有者の支配実験は、成功しているが完璧ではない。

 その中で二つ意思はぶつかり合わずに済んでいるのは〈今の魔女の国ロズマキナをどうにかしたい〉と言う願いが一致したからだろう。内に秘めた思いに違いがあっても、目的が同じであれば一時的に共に行動できたのだ。


「そろそろ退場してもらおう。子供を搾取するのは、大人の悪い癖の1つだ」


 アリュスは地杖を手に取り、柄を短く持つと赤い宝石を握る。


「やめろ。ママの大切な杖を壊すな。ママ? なんでアタシが、こん,な目に遭わなくては、お姉ちゃん、私が国を救済し………………?」


 杖を奪われたフローラは泣きそうな声を出していたが、徐々に言葉の節々に疑問が浮かんでくる。先代赤翼の騎士団長の記憶と人格が離れ、フローラは正気を取り戻そうとしている。



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