第83話 ハプニング
今日、鬼姫とリベリオンのギルドバトルが行われる。
この日の為にランクを上げて、できる限りLv上げも行った。
夏休み以降、みんなとは顔を合わせてない。
連絡のやり取りは多少あったけど、どれだけ強くなったのか。
なにもわからない。
気になってみんなのトーナメントでの活躍とか調べたけど、なにも出てこなかった。
シグマさんやエルシーさん、プロフェッサーなら情報を持ってそうだったけど、教えてもらえなかった。
ギルドバトルを楽しみに待ってればいいって。
はあ、それにしても楽しみ。
初めてのギルドバトル。
リベリオンってメリダさん以外、どんな人たちなのかな。
事前に出場メンバー6人は発表はされてる。
でも、調べても情報は出てこなかった。
午前11時。
ギルドバトル開始1時間前。
ちょっと早く来すぎたかも……いや、遅れるよりはマシか。
オレは行くとこもないから、会場の白黒スタジアムに向かった。
ギルドにはそれぞれ控え室が用意されている。
鬼姫は東側の控え室。
出場プレイヤー専用入り口を通って、控え室に入ると薫先輩と琴音先輩が先にいた。
他には誰もいない。
……郁斗たちはまだか。
ちゃんと時間までには来るよね。
「おはよう、鬼灯。ようやく一人目か」
「おはよう、鬼灯くん!まあ後1時間もあるし、大丈夫だよ」
「あ、おはようございます。……えっと、何で琴音先輩がいるんですか?」
「え?そんなの後輩たちの応援に決まってるじゃん!」
オレの記憶が正しければ、控え室って出場プレイヤー以外立ち入り禁止だった気がする。
琴音先輩ってここにいて大丈夫かな。
なんだかんだ、琴音先輩ってギルド未所属だし。
鬼姫に入そうな感じはあったけど。
「ここって出場プレイヤー以外立ち入り禁止じゃ……。琴音先輩っていても大丈夫なんですか?」
「もちのろんだよ!ちゃんと学園長からOKもらってるんだから」
……え、学園長がOKしてるの?
うーん、でも、このギルドバトルって一応、白黒学園が宣伝とか広報を担当してるから学園長がOKしたらいいのか。
「ギルドバトルの細かい注意事項とか諸々の補佐を琴音先輩がしてくれる。今回は両ギルドともに初めてのギルドバトルだからな」
それって薫先輩じゃダメなのか。
まあ、オレも今回のギルドバトルのルールでよくわかってない部分あるし。
琴音先輩もいてくれるのは、ありがたいな。
「疑問に思ってそうだから私の仕事について教えておく――――」
バーン!!
琴音先輩の話を遮るようにして、勢い良くドアを開けて控え室に入ってきたのは莉菜とオリヴィア。
二人とも琴音先輩を見て、固まっている。
なんでいるの?って顔をしている。
その後、少しして海夕も控え室に来た。
「これでまだ来てないのは二階堂だけか」
「まあ二階堂くんへの説明は後でいっか。うん、鬼灯くん以外私がここにいる理由がイマイチわかっていないみたいだし、説明するね」
あ、オレも全然理解できてません。
琴音先輩の話によると、事前に決めていたルールから少し変更があったみたい。
その説明とか、本番で戸惑った時の補佐を琴音先輩がしてくれる。
ギルドバトル開始10分前。
まだ郁斗は来ていない。
間に合うのか不安になって、電話してるけど、繋がらない。
メッセージも返事が返ってこない。
あと5分で始まる。
このタイミングで郁斗からメッセージが届いた。
それには、飛行機の遅延でかなり遅れる。
これだけ書かれていた。
具体的にどのくらい遅れるのかわからない。
この文面的に今は飛行機の中か、空港のどっちか。
国内ならともかく、海外だと場所によっては絶対に間に合わない。
「……どうしたの、蓮?」
頭を抱えているオレを見た莉菜が心配そうな顔でオレの顔を覗き込む。
「……郁斗が飛行機の遅延で遅れるって連絡が。具体的にどれくらい遅れるかわからない」
控え室の空気がどんより重くなる。
さっきまでも郁斗と連絡つかなくて、空気はよくなかったけど。
「琴音先輩、これ開始時間がいじれないですよね?」
「うーん、さすがにそれは無理かな。一応、ルール的には開始時にいなくてもバトルに間に合えば大丈夫。二階堂くんは五試合目に出てもらうしかないかな」
「そうなると、郁斗は間に合わない前提で今いる五人で勝つ。そのつもりで臨んだ方がいいわね」
うん、海夕の言う通りだ。
琴音先輩の提案通り、郁斗は五試合目。
とりあえず、最後に回すけど、間に合う保証がない。
リベリオン相手だし、かなり厳しいと思う。
でも、相手が強いのは最初からわかってたこと。
「普通の団体戦ならそれもありなんだが……」
薫先輩が歯切れが悪そうに頭を抱える。
琴音先輩もうーんと腕を組んで唸っていた。
「ルール変更で今回のギルドバトルは仮に三試合で結果が決まっても五試合全て行われる」
え、結果が決まっても五試合全て行われる……
ルール変更ってそれのことなの!?
経験を積む的な理由で全員必ずバトルできるようになってるのか。
うわ、今だけはこの変更を喜べない。
普通なら、必ず出番があるって喜ぶとこなんだけど。
……郁斗、ホントに時間だけは守って。
てか、余裕持って行動しようよ。
「こればかりはしょうがない。もう時間になるから、第一試合に誰が出場するか決めないといけない」
「そうよね」
「はい」
莉菜と海夕は薫先輩の言葉に頷く。
ただ、オリヴィアだけが下を向いていた。
「それで第一試合もだが、タッグバトルをどこでするだが……」
薫先輩がタッグバトルについて話そうとした時、オレたち全員の目の前に一つのウインドウが表示された。
【確定事項:タッグバトルは第一試合】
「後に回されるよりいいけど、いきなりか」
これを見た薫先輩が項垂れる。
琴音先輩も苦笑いを浮かべていた。
「今回、タッグバトルはリベリオン、ロザリアと俺のバトルは鬼姫でいつ行うか決められる特別ルールが採用されている」
あ、そうやって決めるのか。
オレはブルーたちのLv上げに夢中で今回のギルドバトルの特殊ルールなにも把握できてない。
わからなければ、薫先輩に聞けば大丈夫でしょの精神でいたから。
案の定、薫先輩がいるから問題は解決してる。
「そうなると、第一試合のタッグバトルに出る二人だけど……」
「はい!私と莉菜がいきます」
「そうね。私とオリヴィアが一番無難ね」
この中でタッグを組んでバトルしたことあるのが、オリヴィアと莉菜だけ。
郁斗がいたら、オレも候補に入ったと思うけど、いない。
だから、この組み合わせが一番無難だとオレも思う。
ギルドマスターのオレだけが表示できるウインドウから、莉菜とオリヴィアの名前をタッチ。
これでオリヴィアと莉菜の登録ができた。
「オリヴィア、姫島、二階堂の為にとか考えて無理にバトルを長引かせるなよ。今回の一件は完全に二階堂に非がある。時間稼ぎは必要だが、それで勝てるバトルを落とすのはダメだ」
オリヴィアと莉菜は静かに頷いた。
二人ともちゃんと理解している。
それに郁斗はきっと間に合うって信じている。
郁斗の遅刻という予想外のハプニングがあったけど、時間になった。
鬼姫とリベリオンのギルドバトルが始まる。




