第118話 雪だるま
「準々決勝第三試合、勝者は青田目朔夜!なんと新入生代表トーナメント優勝者、姫島莉菜 準々決勝で敗退!!」
誰もが莉菜が勝つと思っていた。
だが、それを覆して青田目が勝利した。
このまさかまさかの展開に会場である白黒スタジアムは大盛り上がり。
「新垣さん、この予想外の結果をどう考えますか?姫島さんに油断や慢心があったということでしょうか」
「油断や慢心というより、焦りがあったように見えた。まあ、なにに焦ってたかはわからないけど」
輝夜の言う通り、莉菜の中に焦りはあった。
だが、莉菜はそれで負けたとは考えていない。
莉菜はこの後、蓮たちと顔を合わせることなく、一人で帰宅した。
次に行われるオリヴィアの試合を見届けることなく。
「さあ、続いて準々決勝最後!葵美夏萌とオリヴィア・ブラウンのバトルが始まろうとしています!」
「葵のモンスターは2体ともかなり珍しい。あまり戦ったことのないタイプのモンスターだと思うし、オリヴィアさんがどう戦うのか注目ね」
【葵美夏萌VSオリヴィア・ブラウン バトルSTART】
「吹雪け、クレア!」
「お願いします、アルマ!」
葵の1体目のモンスターは、雪だるま。
雪だるま以外に例えようのないモンスター。
妖精種のジャック・オ・フロスト。
オリヴィアの1体目は、機械種のアルマ。
ギルドバトル決定戦の時とは、見た目が大きく変わっている。
軽装甲だけど、背中のバックパックを含めてが全体的に装甲がゴツくなっている。
それに加えて、バックパックに付属の部品のような扱いでスナイパーライフルがくっついていた。
「クレア、『雪原の国』!」
クレアがバトル開始早々に動く。
フィールドの上空が雲に覆われ、雪がパラパラと降り出す。
それが徐々に強くなっていき、気づいたら一面真っ白の雪国のようになっていた。
一回戦でクレアはこのスキルを使っていない。
オリヴィアにとって未知のスキル。
それもあって、警戒心を強め、動かずに様子を見る。
「クレア、『雪隠』!」
吹雪の中でも、オリヴィアとアルマはクレアを視界に捉えていた。
だが、クレアが『雪隠』を発動すると、その姿が吹雪の中に溶け込んで消えた。
これにより、オリヴィアはよりアルマに指示が出せなくなった。
コンの使う『陽炎』や『蜃気楼』に近い幻影なのか。
それとも、純粋に視界が悪くて視認できないだけなのか。
オリヴィアの中で考えがまとまらないでいた。
対するクレアは、『雪原の国』を展開しているため、常にアルマの位置を把握している。
バトル開始と同時にクレアが主導権を握った。
にも関わらず、クレアは動かない。
それをオリヴィアは、不気味に感じていた。
「アルマ、『エネルギー充填』『デュアルエッジモード』!」
動けない状況でも、できることはする。
現状、クレアに遠距離攻撃を当てる術がない。
だから、割り切って近接戦にかける。
アルマは、二本のブレードを取り出し、構える。
次の瞬間、クレアが動く。
「クレア、『アイスランス』『アイスジャベリン』!」
「アルマ、『エネルギーシールド展開』!」
葵がクレアに指示を出す声がオリヴィアにも届いた。
来る!そう思い、身構えるが、一向に攻撃が飛んで来ない。
オリヴィアがブラフを疑い始めたその時、アルマの背後から氷の槍が飛んでくる。
その後、僅かに間をあけて、正面から氷の剣が飛んで来る。
アルマが展開したエネルギーシールドは全方位からの攻撃に対応できる。
それによって、全く異なる方向からの攻撃も防げた。
だが、クレアはどうやって全く異なる二方向から攻撃を放ったのか。
それがオリヴィアは理解できなかった。
ただ、直撃するまでにあった僅かな間。
これが時間差攻撃に関係していると考えていた。
考えられる可能性は二つ。
一つはコンの『影分身』に近いスキル。
もしくは、瞬間移動スキル。
可能性としてはどちらもありえる。
『影分身』のようなスキルが使えるのなら僅かにあった間はアルマとの距離の問題。
『影分身』と本体がアルマと全く同じ距離を置いていない限り、攻撃が当たるまでに僅かながらラグが生まれる。
瞬間移動スキルの場合はもっとシンプル。
クレアが攻撃を放って、瞬間移動をする。
再び攻撃を放つ。
途中で瞬間移動というワンアクション挟む。
それにより、僅かに間が生じた。
それだけでなく、オリヴィアはもう一つ気がかりがあった。
葵がクレアに攻撃指示を出しても直ぐに攻撃は飛んで来なかった。
クレアの攻撃には不可解な点が多い。
だが、クレアの居場所を突き止めないと状況は変わらない。
「クレア、『アイスボール』『アイスアロー』!」
「アルマ、正面と背後に『ミサイル発射』!」
さっきは前後から攻撃が飛んで来た。
オリヴィアは、今回も同じと考えて正面と背後を狙い撃つ。
しかし、今回は左右から全くの同時に攻撃が飛んで来た。
そのため、アルマの放ったミサイルは全て外れた。
「っ!?」
この攻撃を受け、オリヴィアの驚いた顔を見せる。
それでも、今わかる情報からクレアの攻撃の正体などを突き詰める。
コンの『影分身』のようなスキルを使っていた場合、コンみたいに数を出せない。
隠しているだけの可能性もあるが、本体と分身の合計2体だけの可能性が高い。
ただ、まだ瞬間移動の可能性を捨てきれない。
「アルマ、『キャノンパック解放』!『ブラストキャノン』でフィールド全体を薙ぎ払ってください!」
猛烈な吹雪の中、 背中のバックパックが変形し、アルマの頭の上にキャノン砲が展開される。
ピピピという音とともにキャノン砲へエネルギーが収束した。
それをアルマは回転しながら、フィールド全体を薙ぎ払うように放った。
この一撃でオリヴィアは見極めるつもりでいた。
もし、瞬間移動系のスキルを持っているなら、ダメージは与えられない。
持っていなければ、この無差別攻撃に当たるはず。
「クレア、『アイスキャッスル』!」
ここで葵はクレアに防御スキルを発動させた。
クレアを中心にフィールド上に氷の城が誕生する。
アルマの放った『ブラストキャノン』は、氷の城に直撃した。
城壁を大きく削るも、更に奥にいるクレアには届かなかった。
だが、クレアの居場所を正確に把握できた。
それに加え、この行動から瞬間移動スキルではないと判明した。
「そこですか。アルマ、『スナイパーモード』『エネルギー解放』『ブラストキャノン』!」
ここでバックパックにくっついていたスナイパーライフルを取り出す。
すると、バックパックがアルマから分離し、パーツごとにバラバラになる。
それが磁石に吸い寄せられるかのように、スナイパーライフルへ集まる。
やがて、通常よりも数回りほどゴツく、巨大なスナイパーライフルが誕生した。
そこに『エネルギー解放』で『ブラストキャノン』のクールタイムを無視して、発動する。
クレアの『アイスキャッスル』目掛けて極太のレーザーが発射された。
「クレア、『アイスシールド』『アイスウォール』『アイスメテオ』!」
クレアは『アイスキャッスル』の手前に氷の盾と壁を生み出す。
それにより、アルマの『ブラストキャノン』は威力が落ち、クレアのHPを削り切れなかった。
それに対して、クレアの放った『アイスメテオ』。
氷の隕石はピンポイントでアルマに落ちた。
アルマが『リペア』で回復する余裕すら与えなかった。
【アルマ DOWN】




