第115話 真打ち登場
「あとは頼んだよ、グラディオ!」
「来い、コン」
星宮はアイリスと同じ人類種のモンスターを召喚する。
白銀の鎧と甲冑、盾と長剣を装備していた。
その特徴は召喚と同時にグラディオは、光り輝くオーラを身に纏う。
それを見た郁斗は即座にグラディオの正体に気づいた。
英雄系の人類種だと。
一回戦では、グラディオを1体目として召喚していた。
それ故にここまで郁斗は気づけなかった。
直前にアイリスが倒れている。
その過程に何があったか関係ない。
既に味方モンスターが倒されているなら英雄系の人類種は召喚と同時に全ステータスを1.5倍にする。
「ならこっちも!コン、『稲荷狐の祈り』『稲荷狐の祟り』『降臨・稲荷神社』『参の型』。あとダメ元で『肆の型』!」
「稲荷流狐剣術、『参の型 夜桜』『肆の型 色即是空』!」
『ゴーストタウン』がフィールド上から消える。
狐を祀る神社が出現し、夜の帳が下りて満開の桜が花開く。
これによりコンの全ステータスも1.5倍になる。
リベリオンとのギルドバトルではルーカスのファムが使った『ドラゴンフォース』すら打ち消した『肆の型』。
だが、グラディオに付与されたバフは打ち消せなかった。
この結果に郁斗は驚いた素振りを見せない。
最初からこうなると考えていた。
それでも、もしかしたらと考えて『肆の型』を使った。
英雄系の人類種のこれは、バフに該当しない。
竜が使う『ドラゴンフォース』と同じ強化に該当する。
それだけなら打ち消せるが、英雄系の人類種のこれには打ち消せし不可の効果があった。
つまり、コンの『肆の型』でも打ち消しは不可能。
「グラディオ、『大地崩壊』!」
「うお、マジか!コン、『捌の型』!」
「稲荷流狐剣術、『捌の型 爆轟』!」
グラディオが持っている剣を地面に突き刺す。
すると、そこから地面が崩れて、崩壊の波がコンに迫る。
コンは、衝撃波を伴いながら辺り一帯を燃焼させる『捌の型』で相殺する。
星宮は一回戦では使っていなかったスキルをいきなり使ってきた。
星宮は一回戦を大逆転勝利を収めている。
かなりの接戦を制して二回戦に進出しているにも関わらず、温存していたスキル多数存在する。
それもアイリス、グラディオ共に。
これには郁斗も思わず、「嘘だろ」と呟いた。
「グラディオ、『大地の聖剣』『天閃』!」
「コン、『影分身』『壱の型』『陸の型』『陽炎』『蜃気楼』、『壱の型』!」
「稲荷流狐剣術、『壱の型 迦具土』『陸の型 御神楽・稲荷突き』!」
コン本体と影分身、総勢9体がグラディオに一斉に襲いかかる。
そに上、フィールドには『陽炎』と『蜃気楼』の効果で幻影が広がっている。
これをグラディオは、剣を再び地面に突き刺し、『大地の聖剣』で大地を操る。
大地の至るところを隆起させて9体全て宙に浮かせた。
その手応えを頼りにコン本体と影分身の位置を特定。
斬撃を飛ばす『天閃』で全ての影分身を消し去った。
当然、コン本体も僅かながらダメージを受けた。
コンの『陽炎』と『蜃気楼』のコンボ。
誰もがこれを警戒する。
戦うなら、必ず対策を講じる。
それは郁斗も理解している。
だから囮にするにはこれ以上ないくらい効果覿面。
「コン、『玖の型』!」
「稲荷流狐剣術、『玖の型 流星火』!」
「え、その体勢で!?」
まだコン本体は宙に浮いている状態。
この体勢から反撃があるとしたら『狐火』や『鬼火』といった遠距離攻撃くらい。
そう考え、次の攻撃を考えていた。
それ故に反応が遅れた。
『玖の型』は一瞬にして間合いに入って斬る。
コンがどこにいても関係ない。
星宮が最も警戒していたスキル。
使わせらないように策を練っていたが、全て無に帰す。
グラディオは、即座に後ろへ跳び、距離を取る。
「グラディオ、『大地の祝福』『グランブラスター』!」
「コン、『漆ノ型』!」
「稲荷流狐剣術、『漆ノ型 狐高・呑』!」
グラディオは『大地の祝福』で次の土属性の攻撃の威力を上げる。
剣先から圧縮された土属性のエネルギーが放出される。
コンの『漆ノ型』で、頭上の空間が歪み、渦を巻く。
グラディオの放った『グランブラスター』はそこに呑み込まれた。
「グラディオ、『大地の鉄槌』!」
「ならコン、『伍の型』!」
「稲荷流狐剣術、『伍の型 紅炎・稲荷』!」
グラディオが剣を振り上げる。
それに合わせて、地面から土が空中に浮かび上がり、巨大な槌ができる。
その後、グラディオが剣を下ろす。
すると、巨大な槌がコンに鉄槌を下す。
コンはグラディオではなく、槌目掛けて『伍の型』を繰り出す。
刀身の先端部分の金色に輝く炎が収縮し、集まった。
そこから圧縮された炎が解き放たれる。
2体の攻撃はそれぞれ相殺し合った。
郁斗はここまでの星宮の戦い方から『絶空』の発動条件を見抜かれている。
それに気づいた。
まだ使っていない型は、『弐の型』だけ。
『弐の型』はコンがダメージを負わないと使えない回復スキル。
郁斗の中に、グラディオを倒す術は『絶空』しかなかった。
時間をかければ、他にも手はある。
だけど、この先のことを考えると手の内を曝け出したくない。
一応、フィールド展開と同時にこっそり『稲荷狐の境界線』を発動している。
これを使えば、即座にグラディオとコンの位置を入れ替えることができる。
だけど、今使っても大した効果は得られない。
いろいろ思案した結果、郁斗の指示はかなりシンプル。
「コン、『玖の型』 ――」
「稲荷流狐剣術、『玖の型 流星火』!」
「うん、そうだよね。グラディオ、『激震聖剣』!」
コンが即座にグラディオの懐に入る。
それに合わせて、グラディオは『激震聖剣』で反撃する。
グラディオの持つ剣は振動によって、一本の剣が二本、三本とあるようにブレて見える。
「今だ、コン!『捌の型』!」
「稲荷流狐剣術、『捌の型 爆轟』!」
「なっ!」
『玖の型』は通常、袈裟斬りで相手を斬る。
コンは敢えて『玖の型』を繰り出すのを途中で中断した。
その状態で『捌の型』を放った。
結果、お互いの攻撃が直撃し合った。
グラディオは『捌の型』の衝撃波で後方に弾き飛ばされた。
「これで決まりだ!コン、『拾の型』!」
「稲荷流狐剣術、『拾の型 奥義 絶空』!」
「グラディオ、『アジャスト・フォートレス』!」
グラディオは咄嗟に防御スキルを使う。
ここまで温存している防御スキルの存在に郁斗は驚きを通り越して苦笑いを浮かべる。
結果として、グラディオの『アジャスト・フォートレス』は発動が間に合わなかった。
『アジャスト・フォートレス』は、瞬間防御力を上げるスキル。
コンの『拾の型』は間合い無視の必中攻撃。
これを『アジャスト・フォートレス』で防ぐには、かなりシビアなタイミングでの発動が要求された。
【グラディオ DOWN】
星宮は負けこそしたが、観客にその名を覚えさせた。
二人を讃える声が観客席から飛び交う。




