第99話 判定戦
「な、な、な、なんと!!決着です!!!コン、ファム両モンスターともにDOWN!!問題はどちらのHPが先に0になったのか!!勝者は――」
一向に表示されない。
ステラさんの実況に合わせて結果が出ると思った。
薫先輩や琴音先輩にどういう状況か確認しても、わからない。
もしかして、引き分け……?
「一向に表示されません。これはもしかして、」
「完全同時DOWNね。つまり、判定戦にもつれこんだわ」
「なんと!なんと!2勝2敗で迎えた最終第五試合は異例中の異例、判定戦にもつれこみました!」
判定戦?
聞いたことないけど、なにそれ?
バトルは引き分けだったってこと?
あ、でも、さっきステラさんが第五試合は判定戦にって言った。
引き分けなら、ギルドバトルは判定戦にって言うか。
「ええ、判定戦についてご存知ない方が一定数いるような感じなので、結果は出るまでの時間を使って私、ステラが説明させていただきます」
あ、助かります。
「判定戦は完全同時DOWN、つまり引き分けでバトルが終了した時にのみ行われます。これは専用AIがバトルの流れを細かく判定します。最終的にその判定結果を基に勝者が決まります」
「イメージはあれね。テストの採点。AIがバトルを採点して、その点数が高い方が勝ちと思えばいいわ」
ああ、なんとなく理解できた。
バトルは引き分けだった。
そうなると、ギルドバトルの勝敗が決まらない。
これも引き分けだと、さすがにね。
そういう時、勝敗をつけるシステムが判定戦って感じかな。
輝夜さんのAI採点の例えがすごくわかりやすい。
これで判定戦のイメージができた。
「あとは結果が出るのを待つだけですが、この時間を使って今のバトルを振り返りましょう」
「そうね。判定結果って出るのに時間かかるし」
判定戦って聞いても薫先輩、琴音先輩と聞いたことない。
そんな感じだったし、あんまり使われるシステムじゃないと思う。
実際に完全同時DOWNの引き分けって狙ってもできないし。
なのに、ステラさんと輝夜さんは異様に詳しいな。
実況者と12神だし、これくらい知ってて当然ってことかな。
「ファムが序盤に『聖竜の心眼』と『ヘブンズクラッシュ』を使っていれば、勝負が決まったのではと思うのですが、ここのところ詳しい解説をいただけますか?」
「『聖竜の心眼』はそんなに強力なスキルじゃないのよ。あ、いや、まあ強力かな。使い勝手がよくないの間違いか」
うーん、コンの動きがピタッて止まったように見えたけどな。
あれ、相手モンスターの動きを止める類のスキルだよね。
正直、ステラさんの話を聞いて、確かにと思った。
「あれは相手モンスターに与えた総ダメージ量に応じて効果時間が変動するの。ファムがある程度のダメージを与えたのは終盤。私はここしかないってタイミングで使ったとは思うわ」
「なるほど。勉強になります」
「いえいえ」
さすが輝夜さん。
『聖竜の心眼』ってスキルをオレは初めて聞いた。
でも、輝夜さんは当たり前のように知ってた。
やっぱり、強い人はいろんなスキルの詳細な効果をしっかり把握してるのか。
その点、オレはまだまだだな。
もっと勉強しないと。
「まだ結果が出ませんので、新垣さんはこのギルドバトルを振り返ってどうですか?」
「すっごく驚かされたのは、第三試合。海夕さんが覚醒スキルを使ったこと。私が使えるようになったのBランクだったし」
「確かに!人類種は弱い。その評価を覆すきっかけとなったスキルですからね。育成の仕方や戦い方などでどんな解放スキル、覚醒スキルを取得するかわからないというのが唯一の難点ですが」
「それにいつ取得するのかもモンスター次第。神技みたいに決まったタイミングで取得するわけじゃない」
輝夜さんの言う通り。
リーフィアも『天剣解放』を取得しているけど、覚醒はまだ。
Cランクだと解放スキルの取得が限界だと思ってたけど、海夕は覚醒スキルも取得させてる。
今度、時間がある時にどういう状況で取得したのか話を聞こう。
「ステラはこのギルドバトルどうだったの?」
「すごく楽しかったですよ。実況しがいのあるバトルの連続でしたから」
「一番印象に残ってるバトルは?気になってる観客もいると思うの」
「そうですね、個人的には第二試合です」
へえ、ステラさんは第二試合が印象に残ってるのか。
……ん?第二試合ってオレが出たやつじゃない!?
「あ、ここで判定結果が出ました!勝者は――」
判定結果、勝者 二階堂郁斗
鬼姫VSリベリオン
3勝2敗で鬼姫の勝利
白黒スタジアムの電光掲示板に表示されたその結果。
それを見て郁斗が両手を高々に掲げて雄叫びを上げる。
「おっしゃー!」
結果が出たことでステラさんの話が完全に流れた。
第二試合のどこが印象に残ってるのかわからないまま。
郁斗が勝ってギルドバトルに勝てたことは嬉しい。
莉菜とオリヴィア、海夕は琴音先輩も交えて泣いて喜んでる。
薫先輩も笑ってる。
オレも無邪気に喜びたいけど、気になって仕方ない。
しばらくして、郁斗が控え室に戻って来た。
遅刻したのに、最後いい所を全て持っていった。
それもあって、莉菜たちが郁斗をわちゃわちゃしてる。
なんか、これ見てるとステラさんの話がどうでもよく思えてきた。
それよりも、今は勝った実感が湧いて嬉しい。
「琴音先輩、この後の流れって聞いてます?」
「しばらく控え室で待機としか聞いてないよ。閉会式でもやるんじゃない?」
「いや、開会式すらやってない……」
郁斗たちの方より、薫先輩と琴音先輩の会話が気になった。
オレもこの後の動きとかなにも知らない。
観客と鉢合わせしないように出場者は少し時間を置いて帰るとは聞いたことあるけど。
しばらく控え室で待っていると実況席から輝夜さんの声が聞こえないことに気づいた。
先ほどからステラさんしか喋ってない。
「お待たせしました!それでは、只今よりサプライズイベントを開始します!」
サプライズ?
周りを見ると、みんな首を傾げていた。
知らないのは、オレだけじゃないみたい。
一応、ギルドバトルの主催が白黒学園だから学園長がなにか企画したんだと思うけど。
それならそれで、一言教えて欲しかった。
「それでは、お二人に入場してもらいましょう!」
直後、白黒スタジアムのフィールドに二人の人物が姿現した。
一人はオレがよく知る輝夜さん。
もう一人は淡い灰茶の髪を短く整えた男性。
グレーのコートに細身のスラックスで、革のショートブーツを履いている。
輝夜さんと同じ12神で、序列2位のジャスパーさん。
イギリスの方でヨーロッパを拠点にしてるって聞いたことある。
なんで日本にいるんだろ……。
「次世代を担う実力者たちに現最強のお二人が直々にバトルを披露する!これが今ギルドバトル終了後に予定されていたサプライズイベントです!」
開いた口が塞がらないとは、このこと。
驚きすぎてみんな言葉が出ない。
目が点になって、目の前の出来事が信じられない。
オレたちが現実を受け入れるよりも先に二人のバトルが始まった。




