第98話 ギルドバトル決着!
「来い、コン」
「顕現せよ、ファム!」
先に2体目のモンスターを召喚したのは、郁斗だった。
コンが召喚されると実況席、観客席が大いに湧き立った。
フィールドに召喚されたコンは今までと大きく異なる姿だったからだ。
まるで別人、別モンスターのように。
神官装束を身に纏い、お尻からは二本の尻尾が垂れ、腰には刀を刺している。
狐の耳を生やした金髪の少年。
上は白衣、下は赤の袴と和一色の姿で登場。
この変化には対戦相手のルーカスも驚きを隠せない。
対するルーカスが召喚したのは、白い鱗を神々しく輝かせた聖竜。
瞳は青く、透き通っており、鼻先には一本の角を生やしている。
「コン、『降臨・稲荷神社』『稲荷狐の祈り』『稲荷狐の祟り』!」
先に動いたのは、コン。
ネメアが展開した『ゴーストタウン』を上書きするように神社をフィールドに出現させた。
神社には狐の石像があり、祀られている。
『稲荷狐の祈り』と『稲荷狐の祟り』はコンにバフをファムにデバフを付与するスキル。
だが、ファムは『デバフ・状態異常無効』のスキルを持っているから効果を発揮しない。
にもか関わらず、発動したのは、二つ同時発動でコンに付与される継続回復が目的。
「コン、『参の型』!」
「稲荷流狐剣術、『参の型 夜桜』!」
『参の型』は、『降臨・稲荷神社』を展開していないと使えない特殊なスキル。
その効果は、フィールド全体に夜の帳を下ろし、満開の桜が花開かせる。
この時、コンの全ステータスは1.5倍に上昇する。
「ファム、『ドラゴンフォース』!」
「コン、『肆の型』!」
「稲荷流狐剣術、『肆の型 色即是空』!」
「な!ドラゴンフォースを打ち消した!?」
ファムは『ドラゴンフォース』によって全ステータス2倍に上昇した。
その瞬間、コンによって『ドラゴンフォース』の効果が消失した。
バフとは違う強化系のスキルは、普通なら打ち消すことができない。
だが、コンの使った『肆の型』は、バフや自己強化による効果を強制解除する。
驚きと困惑を隠せないルーカスだが、内心かなり興奮していた。
ここまでギリギリのバトルになると思っていなかったからだ。
「コン、『壱の型』『玖』!」
「稲荷流狐剣術、『壱の型 迦具土』『玖の型の型 流星火』!」
「!?」
『壱の型』の効果でコンが右手に持つ刀が金色に光り輝く炎を纏った。
次の瞬間、コンが姿を消した。
正確には、あまりにも速すぎて視認できなかった。
気づいたら、刀を振り切った体勢でファムの背後に佇んでいた。
『玖の型』は。どれだけ相手モンスターと距離があろうと瞬時の懐へと入り、轟々と燃え盛る炎を纏った刀で相手を斬り裂く。
瞬時の懐へと入るという効果を知らなければ、初見での対応は不可能。
「ファム、『シャイニングブレス』!」
「コン、『漆の型』!」
「稲荷流狐剣術、『漆の型 狐高・呑』!」
ファムは、回復してすぐ空高く飛び上がる。
上空から地上に向かって光属性のブレスを放つ。
コンはそれを回避する素振りを見せなかった。
コンの頭上の空間が歪み、渦を巻く。
そこにファムの放った『シャイニングブレス』が呑み込まれた。
攻撃が届かなかったのを見届けて、ファムは空中を大きく旋回し、地上付近まで高度を下げる。
「ファム、』シャイニングデトネーション』!」
「しゃーない。コン、『捌の型』!」
「稲荷流狐剣術、『捌の型 爆轟』」
ファムから放射線状にコンへ光の波が迫る。
コンは刀を真っ直ぐに振り下ろすと、衝撃波を伴いながら辺り一帯が燃焼する。
衝撃波と炎による二重攻撃。
二つの攻撃はファムとコンの中間地点で激突し、轟音と共に『爆轟』がファムに直撃した。
ファムの放った『シャイニングデトネーション』で威力が削がれていた。
だが、『流星火』のダメージもあって、ファムのHPは半分以上削れる。
「ファム、『プチヒール』!」
すぐにファムのHPは全回復する。
この光景を目の当たりにしても郁斗には動揺一つない。
郁斗はファムが回復魔法を使えることを知っていた。
それほどまでに、ルーカスとファムは有名だった。
「コン、『陽炎』『蜃気楼』『影分身』『陸の型』!」
フィールドに展開された稲荷神社に霧がかかるように視界が悪くなる。
やがて、ファムからコンがどこにいるのか見えなくなった。
そこに8体の『影分身』が出現し、本体を合わせて9体が一斉に動く。
「稲荷流狐剣術、『陸の型 御神楽・稲荷突き』!」
「ファム、『ヘブンズゲート』『シャイニングクロー』!」
フィールド上に華々しい装飾を施され、神々しさを感じさせる門が出現する。
『ヘブンズゲート』は全てを本来あるべき姿に戻し、封じるスキル。
『ヘブンズゲート』が光り輝くとバトルフィールドからコンの影分身が消え去り、『陽炎』と『蜃気楼』も解除される。
その上、コンのステータスも通常通りになった。
ただ、フィールド展開スキルである稲荷神社は、夜の帳は下りたままで桜も満開で残っている。
バトルの流れは郁斗にある。
だが、郁斗の精神的ダメージは大きい。
ステータス差も逆転し、郁斗が思い描いていた勝ち筋だった『影分身』による数の暴力も無力化された。
最も痛いのはそれらを可能にしたスキル全てが封じられているところ。
「コン、『伍の型』!」
「稲荷流狐剣術、『伍の型 紅炎・稲荷』」
「ファム、『ヘブンズノヴァ』!」
コンが刀を頭上に高々と掲げる。
すると、刀身の先端部分の金色に輝く炎が収縮し、集まる。
そこから圧縮された炎が解き放たれる。
しかし、ファムの放った神々しい光の波によって全てが無に帰った。
ここにきて形勢は誰の目から見てもルーカスに傾き始める。
稲荷流狐剣術の一部の型と『影分身』『陽炎』『蜃気楼』と封じられている。
郁斗とコンにはドンドン打てる手がなくなっていく。
回復魔法があるファム相手に長期戦になれば、不利なのは明白。
「ファム、『シャイニングピラー』!」
コンの真下から光の柱が立ち上る。
いろいろとスキルが封じられ、作戦を根幹部分から考え直さないといけない。
郁斗に考える時間を与えまいと最速の攻撃で追い詰める。
「コン、『玖の型』から『陸の型』!そんで『弐の型』!」
「稲荷流狐剣術、『玖の型 流星火』『陸の型 御神楽・稲荷突き』『弐の型 忌火』!」
「ファム、『シャイニングテール』!」
ルーカスは既に『玖の型』を見ている。
一瞬にして間合いに入って斬る。
どういうスキルかも理解していた。
ルーカスは即座に指示を出し、ファムは尻尾でコンを薙ぎ払おうとする。
だが、郁斗はルーカスが対応してくるのを読んでいた。
コンは、『玖の型』による効果だけを巧みに使って瞬時にファムの懐へと入る。
本来ならそのまま袈裟斬りを浴びせるところだが、敢えて『玖の型』を失敗させる。
ファムの正面に立ち、薙ぎ払われている尻尾を横目にジャンプ。
重力に従って落ちる勢いを利用し、尻尾に向けて『陸の型』を放った。
「コン、『捌の型』!」
「稲荷流狐剣術、『捌の型 爆轟』」
この息付く間もない攻撃をファムは躱すことはできなかった。
ダメージを負ったが、すぐに『ヒール』で回復する。
だが、ダメージを回復していたのはファムだけではない。
コンもファム同様にダメージを回復していた。
これは『弐の型』による効果。
直前の型で与えたダメージに応じてHPを回復する。
これを知らないルーカスには謎が幾つか生まれていた。
コンが発動した『弐の型』の効果が不明。
その上、回復スキルも謎に包まれている。
単純に『弐の型』を回復スキルと考えられる状況ではある。
だが、それは単純すぎる。
それに『忌火』という名前から回復を連想できなかった。
ルーカスの郁斗に対する警戒心がありもしない幻想を生み出していたが、最後はシンプルな結論に至る。
わからないなら、速攻で倒せばいい。
「ファム、『聖竜の心眼』『ヘブンズクラッシュ』!」
数秒間、『聖竜の心眼』の効果でコンの体が硬直する。
指一本たりもと動かせない。
これを利用して、ファムは大きな溜めを必要とする『ヘブンズクラッシュ』を放つ。
コンの体の自由が戻る頃には回避不可能なところまで攻撃が迫っている算段だった。
郁斗は理解した。
この攻撃はコンのHPを一撃で削り切る威力を秘めていると。
この時、二人の出した結論は一致した。
倒される前に相手を倒す。
「コン、『拾の型』!」
「稲荷流狐剣術 奥義、『拾の型 絶空』!」
硬直が解けると同時にコンは、なにも無い虚空を斬った。
それとほぼ同時にファムの放った『ヘブンズクラッシュ』がコンに直撃。
この攻撃でバトルは決した。
フィールドには、二つのウインドウが表示されている。
それがバトルの勝者を一切示していない。
【コン DOWN】
【ファム DOWN】
コンとファム、それぞれ戦闘不能。
つまり、倒れた表示だけが存在した。
最後、2体の攻撃は確実に相手モンスターに当たっていた。
問題はどちらの攻撃が先に当たったのか。
HPがゼロになったタイミングではなく、それに至る攻撃が当たったタイミング。
それで勝敗は決する。
きっとこの後、満を持して勝者と勝利ギルドが表示される。
「「どっちだ!?」」




