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「死になさい」

「ひぇぇ……」


昼下がりの生徒会室。またも尾市に呼び出された俺は、突然の死の宣告に愕然とする。


「俺、なにかしましたっけ……?」

「昨日のことに決まってるでしょう!」

「昨日って……あれはただ外出しただけで……」

「あなたが? 朝日と? デート? それも秋葉原で?」

「な、なんで場所まで知ってるんだよ……」

「そんなこと、今は関係ないでしょう!」

「ひぇっ……」


バァン!

尾市の台パンの衝撃が空気を震わせ、その迫力に思わず半泣きになってしまう。


「あなた、さては朝日を脅したわね。白状なさい。今ならまだ屋上からバンジージャンプで許してあげるわ」

「つまるところの死刑じゃないか……」

「あの子に手を出した罪は重いわ。死でも生温いぐらい」

「ひぃ……そ、そもそも。手なんて出してないぞ俺は」

「嘘おっしゃい。年頃の男女が二人ですることなんて、セッ○スかスマ○ラぐらいのものだわ――って、女子になんてこと言わせるのあなたは!」

「今のは自爆だろ。というかなんで性行為と格ゲーしか選択肢がないんだよ! 他にいくらでもあるだろ!」

「AP○Xとか?」

「ゲームのジャンルを広げろって意味じゃないからな!? 今日のお前、マジでポンコツ過ぎないか……?」

「こ、この私が――ポンコツですって!?」


「ありえないわ!」みたいな顔してるけど、本当にありえないのはお前の頭だろ。

俺の中でどんどん尾市のイメージが崩れていく。今、俺の目の前にいるのは意味の分からない自爆をして一人でテンパっている謎の生物Xだ。文武両道パーフェクト生徒会長はどこへやら。

……というか、ゲームとかまったく興味無さそうなのに。名前は知ってるんだな。


「訂正なさい訂正!」

「い、嫌だ! そもそも、なんでそんなに動揺してるんだよ。別に朝日が誰と出かけようが、尾市には関係ないだろ」

「あるわよ! 私はあの子の友人ですもの!」

「過保護すぎるだろ! お前は母親か!」

「朝日の母親……ちょっといいわね。魅力的よ」


頬を緩め、恍惚の表情を浮かべる尾市。あまりの不気味さに思わず後ずさる。

俺は尾市のことを勘違いしていた。これまでは、自分のために平気で他者を利用する冷血人間だと思っていたが……こいつ、朝日のことがめっちゃ好きなだけじゃね?


「……なぁ、もしかして俺に嫉妬してるのか?」

「意味が解らないわ。あなたみたいな有象無象に、どうして私が嫉妬なんてするのかしら」

「ほら、友人をとられて悔しい、みたいな……」

「死刑!」

「なんで!?」


図星を突かれて焦ったのか、俺の喉元めがけて手を伸ばしてくる。すんでのところでそれを回避するが、もしかすると殺されていたのでは? と思うほどの勢いだった。


「……いけない。少し取り乱してしまったわ」

「『少し』ってレベルなのか、今の……」


そうぼやく俺を一睨みし、こほんと咳払いする彼女。


「話を戻すけど」

「戻すって言っても、初めから尾市が暴走してただけじゃないか…………なんて考えるような腐れ野郎、いますかっていねーか、はは」


思わず本音が漏れかけたが、途中であまりにも強い殺意を感じたため古のコピペを応用してなんとか誤魔化した。


「それで、どうしたんだ」

「私から、あなたに命令があるわ」

「そうなんだ。でも俺は忙しいからな。別の人に――」

「聞け」

「……はい」


逃げようと思ったけどダメだった。


「今朝、大変だったみたいね」

「知ってるのか」

「当り前よ」


今朝のこと――田中と朝日の一件だ。あの時尾市は教室にいなかったが、あとで友人から話を聞いたのだろう。


なんかいつもと様子が違うと思ったら、週末のに加えて今朝の一件があったから動揺してるのか。なるほど。


「いつかこうなるかも、と思ってはいた。でも、まさかこんなに早いなんて」

「……まぁ、それは同意だ」

「あの女、ちょっと朝日がおとなしいからってつけあがって……コンクリ詰めにして海に――」

「お、落ち着けって!」


今の目……本気だったな。こいつには絶対逆らわないようにしておこう、と心に誓う。

こほん。彼女は再び咳払いをし、


「とにかく。これは早急に対処すべき問題だわ」

「まぁ、そうかもな」

「そこであなたに命令よ。朝日を元に戻しなさい」

「だから、それは無理だ。前も言っただろ」

「別に、ラノベを捨てさせろって言ってるわけじゃないわ。ただ、学校でのふるまいを元の戻してほしい。それだけよ」

「それならまぁ……というか、尾市が朝日に言えばいいんじゃないか?」

「……無理よ」

「無理って、どうして」

「だって朝日、最近私にそっけないんですもの。LINEの返事も遅いし……」

「あぁー……」


朝日は家にいる間、絶えずラノベを読んでいる。おそらくそのせいだろう。


「認めたくないけれど、あなたは懐かれてるみたいだし……」

「そういうことか。まぁ、やれるだけやってみるが……」

「やれるだけ、じゃなくて。それ以上に頑張りなさい。根性よ」


ブラック企業の社長っぽい発言だが、命が惜しいので従っておく。

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