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ここは教室。当然クラスメイトがいる。それに、あんなことがあった直後だから彼らは朝日に注目しているわけで……。
「うそ」「新見さんが誘ったの?」「まさか」「聞き間違いじゃない?」「カツアゲとか」
さっきまで静かだった教室が、沸騰したかのようにざわめきだす。さっきまで朝日だけに注がれていた視線が俺にも向けられる。
ひ、ひぃっ。俺を見るな俺を!
注目されることに慣れていないので、ストレスのあまり体がピリピリしてくる。
「お、おい新見っ。その話はあとで――」
「なんで?」
「ほ、ほら。みんな見てるし……」
「てか、朝日って呼んでよ。昨日約束したのに、もう忘れたん?」
「朝日ぃ……!」
またも爆弾発言。
昨日約束した――電話でしたという風にも解釈できるはずだが、色めきだった彼らはそんなこと考えるはずもなく……
「え、あの二人ってそんな仲良かったの」「昨日って日曜だよね。それって……」「デートじゃんデーと」「ありえん」「カツアゲでしょ」
スマホの音量バーを上げすぎてしまったときのように、いっきに教室が騒がしくなる。
俺と朝日の関係を疑うもの。カレカノとかほざきながら話に花を咲かせるもの。明らかに嫉妬と羨望の入り混じった表情を浮かべるもの。彼らの反応はさまざまだ。
「鹿野……あいつ、殺す」
中でも一松の反応は凄まじく、俺に親でも殺されたのか? と疑いたくなるような視線を送ってきた。あまりにも怖すぎて全俺が泣いた。
「そんで、空いてんの?」
「まぁ、空いてるけど……」
「じゃあ出かけよ。池袋でいい?」
「いいですよ……」
もう勝手にしてくれ。秋葉原だろうが池袋だろうが、今の教室に比べれば100倍マシだ。
「ちょっと」
背中の方から呼びかけられる。
どこのどいつだ――と思ってそちらに顔を向けると、以外にも声の主は詩織だった。
「しおりんじゃん。どしたん?」
「私が先に、夕月のこと誘ってたんだけど」
「え、マジ?」
詩織の発言に目を丸くする朝日。
「そうなん、夕月?」
「そうだっけか」
「……そうだよ。放課後、本屋行こうって」
「あぁー……」
朝日と田中のいざこざで聞き取れなかったが、会話の流れからしてそうだった気がする。
「ごめん朝日。一回OKしといてあれだけど、そういうわけだから」
「まぁ、しおりんが先なら仕方ないかー」
残念そうに眉根を下げながらも、朝日は了解してくれた。
そのまま戻るのかと思いきや
「って、二人って本屋いくん?」
「そうだけど」
詩織の返事を聞くと、朝日は身を乗り出し
「アタシも行っていい?」
と聞いてきた。
前の俺なら条件反射で断っただろうが、ある程度朝日のことを知った今、そうする必要もないな。
「いいぞ」
「……私も、大丈夫」
「やたっ。どこの本屋いくん?」
なにやら詩織の返事が暗いが、テンションが低いのはいつものことなので気にしないでおく。
「駅近のとこかな」
「詩織、あそこって改装中じゃなかったか」
「げ、ほんと?」
「あぁ。今週いっぱいはかかるらしい」
「どうしよ……」
高校の最寄駅である上板橋駅には、一軒しか書店がない。その一軒が改装中である以上、どこか別の書店を探さなければ。
「それなら、池袋でいいんじゃないか。あそこなら本屋も多いし」
上板橋から池袋までは直通の電車が出てる。確か10分程度でつくはずだ。
池袋には三省堂書店やジュンク堂などの大型書店がある。それに、アニメイトやメロンブックスといったオタク向けの店も数多く存在する。ここなら問題ないだろう。
「アタシ、それ賛成!」
「じゃあ、私もそれで」
話がまとまり、朝日は席に戻っていく。
「二股?」「あいつ、新見だけじゃなくて酒井まで……」「ダブルデートかよ」「ありえん」
お前らはうるさいんだよ!




