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「今日、アンタの家行ってもいい?」

「……は?」


ばさり。後ろを振り返ってみると、詩織のパンが机にダイブしていた。


いや……マジ?


「いや、ダメだが」

「そこをなんとか! 続きが気になって」

「そこをなんとか! じゃなくってな……」

「いやマジで一生のお願い!」

「ぬう……」


押し強いな、こいつ。

断りたい。というか、普段だったら間違いなく断る。

が、しかし。

俺は彼女にラノベを貸した。そこから生じる責任から目を背けるのは、真のオタク――ライトノベルを愛するものとして、どうなのだろうか?

理性と信条がせめぎあっている。

別に、明日貸せばいい話だ。わざわざ俺の家に招く必要はない。けれど、続きが気になる苦痛は俺も経験がある。あれはかなり辛い。普通に拷問として通用するレベル。新見のように衝動的な人間ならなおさらだろう。それなら――


「……本貸して、ちょっとしたら帰ってもらうぞ」


ぱぁっ、と。新見が表情をほころばせる。

すると、ばさり。詩織がまたパンを滑らせていた。今日は調子が悪いらしいな。寝不足か。


「ぜんぜんオッケー。というか、最高」

「あ、一応聞いておくけど……」

「なに?」

「酒とかタバコとか、持ち込まないよな?」

「アタシって、鹿野の中でどういうイメージなの?」

「めっちゃドラッグ吸ってそう」

「鹿野、マジ最低」


否定できないな。

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