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これはもう天災のようなものだと諦めて、黙って話を聞くことにする。
「先週貸してもらったラノベなんだけど……」
「あぁ、どうだった……って、もう読み終わったのか」
先週、俺は彼女に頼まれて「SAO」と「俺妹」の2シリーズを、それぞれ3巻まで、計6冊貸した。どちらもラノベ界の東大・京大といっても差し支えないレベルの良作であるが、果たして新見の気に召しただろうか。
「うん、ついさっきね」
「さっきって、授業中かよ……」
そういえば、授業中の新見は少し様子がおかしかった。いつもはあまり熱心に授業を受けていないのだが、今日の彼女は真剣な様子で教科書にかじりついていたからだ。あれ、教科書にラノベ挟んで読んでたのか……。
とはいえ、土日、月の二日半で6冊読み終えるのはかなりのスピードだ。世の中にはこれ以上の速度で読破するバケモノもいるが、活字に触れる機会が少ないであろう新見であることを考えれば驚愕だ。あまり座学の成績はよろしくなかったと記憶しているが、ハマると集中力を発揮するタイプなのかもな。
「それで、どうだった」
「めっっっちゃ面白かった!」
「おぉ……」
どうやらお気に召したらしい。よかったよかった。
「いや、実は心配だったんだよ。SAOはバトル描写が多いから、新見みたいなギャルは好まないんじゃないかって」
「そう? ラノベじゃないケド、あたしの友達にもバトル漫画とか読んでる子多いよ」
「へぇ、そうなのか」
意外だ、と思ったが、よくよく考えてみれば不思議じゃない。バトル要素の多いアニメが社会現象となった例がいくつかあるのだから、当然、男性しかバトルものを好まないというのは時代遅れの考え方なのだろう。
「あの二作品って、続きないの?」
「もちろんあるぞ」
「マジ? 貸してもらっちゃっていい?」
「もちろん……と言いたいところだが、今日は無理だな」
「えっ……」
基本的に新見はペースを崩さないのだが、珍しく動揺している。眼鏡を通してでもわかるぐらい眉根が下がって残念そうだ。
「そ、そんな残念がることか?」
「めっちゃ悲しい! 桐乃ちゃんの人生相談、めっちゃ気になってたのに!」
「あぁー……」
思い返してみれば、俺妹の3巻は衝撃的なラストだった。あのラストで続きが読めないのはかなりのストレスだろう。
「まぁ、明日にでも持ってくるわ」
「そんな……うぅ……続きが気になる……」
ここまで続きが気になっっているのだから、新見は心からラノベを楽しんでくれているようだ。この前までの彼女を考えると少し複雑だが、素直に嬉しい。
「――って、ちょっと待って」
「ん?」
「鹿野」
「なんだ」
「今日、アンタの家行ってもいい?」
「……は?」
ばさり。後ろを振り返ってみると、詩織のパンが机にダイブしていた。




