15
「ねぇ、鹿野」
「…………」
教室の勢力図は変わったが、表立って争いが起きるなんてことはない。というか、みんな困惑している様子だ。なんせ、「イケてる女子」の筆頭であった彼女が、突然あそこまで変貌してしまうなんてこと、信じられなくても無理はない。
実際、罰ゲームを疑っている人間も数人いる。
そんなこんなで昼休み。
「ちょっと話があるんだけど」
「……今日の昼飯は、っと」
うちの学校は購買のメニューが充実している。そのため、弁当派の人間は少数派だ。
しかし、いくらメニューが充実していると言っても、購買はコスパで自炊に劣る。
ラノベの印税があるとはいっても無駄使いは避けたい。そんなわけで、俺は弁当を作ってはそれを学校に持ってきている。
それに、手作り弁当を作れるのって、2000年代後半のラノベ主人公っぽいしな……。
「卵焼き、失敗した……ちょっと焼きすぎたな」
「ちょっと、聞いてんの?」
「……」
当たり前だが、一緒に食べる相手はいない。自分、陰キャなので……。
詩織は? と疑問に感じるかもしれないが、そこはお互い日陰者。「飯は一人で黙々と味わうほうが美味い」というポリシーのもと、別々で食べることに合意している。
そもそも、女友達と一緒に飯食べるとかハードル高すぎだろ。
「いただきます、と」
「ねぇ」
「……」
失敗作の卵焼きを口に運ぶ。
出汁と卵の風味が口いっぱいに広がる。しかし、焦げ付いたせいで食感が悪い。
まぁ、味はいいからセーフだな。不幸中の幸いって感じ。
「さて、唐揚げの出来は……」
「もしもし? 無視とか、ちょっと感じ悪くネ?」
「おっ、こっちは成功だな」
「ねぇってば!」
「……はぁ」
「なにその『うわ、ダルっ』みたいな目?」
うわ、ダルっ。
勘弁してくれないかな。飯ぐらい静かに食べさせてほしい。
普段の俺なら、こんな塩対応はしない。不要なトラブルを生むだけだし、なによりそこまでの度胸はないからだ。ただ、空腹でぴりついているのと相手が新見なことも相まって、かなり冷たい対応をとっている。
「……後にしてくれないか」
「なんで?」
「ほら、飯食べてるし」
「アタシも食べるよ」
「いやいや……」
「一緒に食べればいいじゃん」
そう言って彼女はそのへんの椅子を持ってきて、俺の机にパンとミルクティーを置いた。
「いや、俺って病気でさ」
「え、病気って、なんの?」
「クラスメイトと一緒に飯食べると死ぬ病」
「え、マジ? うける」
うけないだろ。




