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面倒なことになりそうだ、とさっきは思っていたが、現実はフィクションとは違う。今までカースト上位だったクラスメイトの没落をきっかけに、熾烈な派閥争いが行われる……なんていうのは漫画やドラマなんかじゃ王道のパターンだが、現実ではありえない。
「そんな風に考えていた時期が俺にもありました……」
「独特な独り言」
「まぁ、ちょっとな……」
そんな楽観的な予想とは裏腹に、早くも派閥争いの片鱗が見え始めていた。
その最たる例が、新見と尾市、一松を中心としていた大グループの崩壊だ。
彼らがいつも談笑していたグループは、新見率いる女子軍団、一松をリーダーとした運動部連中、尾市と仲の良い数人の男女という3つの細胞で形成されていた。
だが、新見がラノベ沼に沈んでいったことで女子軍団はグループから離反し、全くの別グループとして独立した。これまで通り尾市と一松のグループは分離せずに固まっているが、一大派閥だった彼らは勢いを失い、二つの派閥が教室に存在することとなったわけだ。
「考え事?」
「まぁ、そんな感じ」
「新見さんのことでしょ」
「……半分正解って感じだな。いや、1/3正解か」
「ずいぶんと具体的な言い回し」
詩織が不思議そうな目を細める。
「新見個人っていうか、あのグループについて考えてた」
「えっ、意外。夕月、そういうの興味なさそうなのに。陰キャだし」
「一言多くね?」
いやまぁ、否定しませんけど……。
「でもまぁ、気にもするよね」
「……」
「こうなったの、全部夕月のせいだし」
「ぐ……」
そう言う詩織はどこか楽し気だ。口角が少し吊り上がっていて、ニヤけている。
詩織はどのグループにも属していない。だからこの件には無関係だ。安全地帯から高みの見物をするのはさぞ楽しいだろう。
対する俺はというと……
「……いや? 俺、あんま関係してないよ」
「それは無理があるでしょ……」
「やっぱ無理か……」
俺も高みの見物といきたかったが、それは無理だ。新見の没落(?)によってグループが分裂したのは事実で、その新見の没落を引き起こしたのは紛れもなく俺なのだから。
「このまま何事もなく、過ぎ去ってくれればいいんだが……」
「そのセリフ、まんまフラグじゃん」
「まさか。現実はラノベじゃないんだぞ」




