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「もしかして、二人の知り合い?」
ならちょうどいい。友人が来たとなれば、彼らも俺に構う必要がなくなるだろう。新見の件があるとはいえ、友人を放っておくことはできないはずだ。
名も知らぬ地味な少女に心の中で感謝しつつ、俺は二人に向き直る。
が、そこで二人の様子がおかしいことに気づいた。
「ちょっと、二人とも――」
「朝日……?」
そう呟いたのは、尾市だった。彼女はそのまま、メガネの少女に駆け寄っていった。
朝日って……新見のことか? だが、それらしき姿は見当たらない。もしかして幻覚でも見ているのだろうか。
「あ、琴。ちわっす」
不意に、新見の声が聞こえた。しかし、いくら周りを見回しても彼女の姿はない。
もしや、原稿のストレスで幻聴が? とも思ったが、そこまで追い詰められてはいない、はず。
幻聴じゃないなら、彼女はこの教室にいるはずだ。
じゃあ、この教室のどこに?
答えは明白だった。
尾市の目の前。縁の太いメガネをかけ、どこか野暮ったさが見え隠れしている少女。雰囲気こそ変わっているが、彼女は新見 朝日で間違っていないようだ。
「嘘だろ……」
意識せず、先ほどの二人と同じ呟きをしてしまう。しかし、それほど彼女の変貌は衝撃的だった。
教室にいる誰もが、彼女から目を離せないでいた。
好奇や困惑、あるいは失望といった視線が、クラスメイトから彼女に向けられている。
だが、当の新見はというと、何食わぬ顔で机に着き読書を始めた。もちろんライトノベルだ。視線に気づくどころか作品世界に没頭しているようで、ところどころで含み笑いを上げている。
「ちょ……デュフw」
その笑い方は、前の彼女のようにコミュニケーションを円滑にするものではなく、自己で完結しているものだった。ステレオタイプなレッテル張りは好きじゃないが、正直に言おう。キモオタっぽい。
「おいおいおい」「なんだあれ」「新見さん、だよね?」「はぁ、あれが?」
静寂は破られ、クラスメイト達はヒソヒソと仲間内で囁きあうのが聞こえる。
二人に目をやると、一松は呆気にとられたのかフリーズしており、尾市は頭を抱えながら教室から出て行くのが見えた。
取り残される俺。
「これ、俺のせいなのか……?」
まさか。と否定したかったが、そういう訳にもいかない。
彼女が読みふけっているそれは俺が貸したものであるし、それを読むように勧めたのは他でもない俺自身だ。
改めてクラスを見渡すと、他とは違う反応があった。
田中 由衣。金髪に着崩した制服は、以前の新見の生き写しのようでもある。
新見の腰巾着的な地位にいた彼女は、様変わりした新見に対し、どこか勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。
クラスの人間関係に疎い俺だが、彼女の胸の内ぐらい想像がつく。スクールカーストという存在に固執する彼女は、下克上を狙っていたのだろう。
……面倒なことになりそうだ。頼むから、俺のことは巻き込まないでくれよ。




