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週末が明け月曜日。
結局原稿は進まず、暗澹たる気持ちで登校することになった。
先週と状況が変わらないあたり本当にマズいのだが、俺は高校生だ。学校を休むわけにはいかない。
それに、新見のことも気がかりだった。先週は『SAO』や『俺妹』などの有名どころを貸したが、お気に召しただろうか。もしかしたらラノベにハマったのも一過性のもので、顔を合わせたらオタク嫌いに戻っているかもしれない。
だとしたら少し悲しいが、常識的に考えるとそっちの方がしっくりくる。
「おい、鹿野」
教室に入ると、一松に呼び止められた。
「は……俺?」
「他に誰がいるんだよ。ちょっとツラ貸せ」
いかにも暴君らしい横暴な口調。
これあれか、カツアゲか?
「金は勘弁してくれ……」
「は? そんなんじゃねぇよ」
「えっ……じゃあ、ドラッグの密売とか」
「お前の中で、俺はどんなイメージなんだ? なぁ」
割と不機嫌そうに睨まれた。
思わず「ふぇぇ、お兄ちゃん怖いよぉ……(幼女ボイス)」と口にしかけたが、本当に終わってしまいそうなのでやめておく。何がって終わるかって? 俺の学校生活。
「カズヤさん、口が悪いわ。彼も混乱してるじゃない」
見ていられないと思ったのか、隣の尾市が助け舟を出してくれた。
どうやら彼女も俺に用があるらしい。
「えっと……二人とも、俺になんの用?」
「お前、朝日になにした?」
「質問の意図がよくわからないんだけど」
「とぼけんじゃねぇよ、マジで」
「ちょっと! カズヤさん。もう少し穏便に話せないの? 話が進まないわ」
「でもよぉ……」
恐らく一松は、新見の変化について言っているのだろう。
「鹿野さん。あなた、週末に朝日と会った?」
「いや、会ってないけど。何かあったのか?」
「連絡が取れないの。こっちがLINEしても、音沙汰がなくて……」
尾市はそう言って、新見の席に視線を向けた。まだ彼女は登校しておらず、その席は空白だった。
「たかが二日だろ? 単純に、スマホを見てないとか……」
「そんなわけないじゃない」「なわけないだろ」
あれ……。
俺は連絡を貰うこと自体稀なので、あまりSNSを開かない。メッセージがあると思ったら三日前だったとかザラだ。
陽キャと陰キャの格の違いを見せられた気がする。もう帰ろうかな。
「だからと言って、俺に聞いてくる意味がわからん。俺、関係ないだろ?」
「先々週の金曜、あなたと話してから彼女はおかしくなっていったわ。関係大アリよ」
「俺はラノベ……本を貸しただけで、それ以上は知らない」
「んだよ。使えねぇな」
一松の横暴な態度に文句の一つでもつけたくなるが、黙っておく。自分、陰キャなんで……。
「というか、まだ朝だろ。もうそろそろ登校してくるんじゃ――」
ないか、と言おうとしたら。
ガララ。
教室の扉が開き、誰かが中に入ってきた。
詩織か? と思い、そちらに視線が向く。しかしそこには、見知らぬ少女が立っていた。
金髪に黒髪が混ざったちぐはぐな髪色。黒縁のメガネで瞳は隠され、その表情はうかがい知ることができない。
あんな子、クラスにいたっけ。もしかしたら別のクラスの人間が、用があってきたのかもしれない。
まぁどうでもいいや。とりあえず、目の前の二人に集中しよう。変に気を逸らせば、血気盛んな一松がどんな反応をするか分かったものではないし。
「そんで、話戻すけど」
「嘘……」「ウソ、だろ……」
おかしなことに、さっきまでこちらを向いていた二人の視線は、俺の背後――例の少女に向けられていた。




