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「えっ……それはつまり、ハープ先生は女子高生と仕事をしたがっているってことですか?」

「まぁ、そうね」

「やばい人じゃないですか。通報案件ですよ」

「そう言うと語弊があるんだけど……」


そういう由紀さんは、なにやら煮え切らない様子だ。

まるで、何かに板挟みになってしまい、うまく身動きがとれない。そんな悩み方に見える。


「語弊、というのは?」

「私からは詳しく言えないわ。コンプライアンスの都合でね」

「そこをなんとか」

「ダメよ。彼女の個人情報に関わるわ」

「彼女、と」

「あっ……」


なるほど。今の失言のおかげで、なんとなくだが事情が掴めてきた。

恐らく、ハープ先生は女性だ。そして彼女は俺の作品のファンで、作者が女性作家ということに親近感を覚えた。そして、イラストレーターを担当すべく立候補した……そんなところだろう。

いや、だとしたらおかしなところがある。

彼女は編集部と話をしたはずで、そのときに俺の素性も知らされているはずだ。


「あの、つかぬことをお聞きしますが」

「な、何かしら。改まって」

「もしかして俺のこと、女子高生って伝えました?」

「……」

「あの、なんとか言ってくれませんか」

「まぁ、直接伝えた訳じゃないわ。それっぽーく、濁しただけで……」

「詐欺じゃねぇか!」


ハープ氏はとんでもない大物だ。個人活動オンリーだった彼女がラノベを担当するとなれば、かなりの売り上げが見込める。編集部はそれを見越して、なんとしてでもハープ氏を確保したがってるわけだ。

そこで俺の誤情報が利用された、と。


「嘘ついてまで仕事なんてしたくないですよ、俺」

「でも、ハープ先生よ?」

「ぐ……」


あの超神絵師が、俺の作品を担当してくれる。

その事実は確かに魅力的で、俺の心は揺れていた。

ちょっとくらいなら、嘘ついてもいんじゃね……?

いやまて。


「そもそも。先に受賞作を完結させなくちゃ」

「それはわかってるわ。一応伝えておいたってだけよ」


俺はまだ受賞作を完結させていない。6月という当初の締め切りをオーバーしてしまっているのが現状だ。


「それに……」


由紀さんは表情を緩めると、


「あなたの作品は。あなたが思ってるほど悪いものじゃない。多くのファンが続巻を待っているし、ハープ先生だってその一人よ」

「……」

「そのことを、ゆめゆめ忘れないように。私からは以上よ」


由紀さんは俺が作品で悩んでいることを知っていて、モチベーションに繋がる話をしてくれたのだろう。

やっぱり、社会人ってすごいな。


どうにかして作品を完結させる。当面の目標はそれだ。

ハープ氏の件は、それが片付いてから考えよう。


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