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『ネオ・ストレフォ24』セカンドライフ  作者: Hulanes
第一章:やり直しの春
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第11話:紺屋の白袴

顔を上げると、見覚えのある女子が立っていた。青みがかったボブの髪。背はクラスの中では小さいほうだ。彼女は少し困ったように笑っていた。


「……茂原藍さん?」

「うん。覚えててくれたんだ」

「自己紹介、聞いてたから」

「そっか」


彼女は私の隣に座った。

「柊さんのこと?」

「え、分かりやすかった?」

「うん、少しね」

それだけ言って、茂原はしばらく黙った。


何かを無理に聞き出そうとはしなかった。

「……私、あんな迷惑なことしちゃった」

「そうだね、ちょっとだけ」

「やっぱり」

「でも、瀬宮くんもやりすぎてた」

「……」

「だから、どっちが悪いとかじゃないと思う」

茂原はそう言って、膝の上で手を組んだ。


「飯野さん、あなたは寂しかったんじゃないかな」

「寂しい?」

「うん。柊さんと瀬宮くんが仲いいから」

「……そうなのかな」

「たぶん」

彼女は少し考えてから、続けた。


「人って気になる人がいると、変なことしちゃうことあるから」

「茂原さんも?」

「私はしないよ」

「即答だね」


その横顔を見ていると、不思議と胸の重さが少しだけ軽くなった。


「瀬宮くんも、そんなに気にしてなかったと思うよ。多分口下手なだけで」

「でも……」

「だったら、今すぐに謝ればいいの」

「……そうだね」

「うん」

茂原は立ち上がった。


「さっそう行こ? 隣の席でしょ、バス」

「うん」

「気まずかったら楽しくないもん」

「うん」

「緊張してるね」

彼女は笑った。


「一旦行ってみよっか」

「……わかった」


私たちは並んで階段を下がった。



 ***



 トイレのために僕が教室を出ようとすると、ちょうどドアが開いた。


彼女は僕を見るなり、少しだけ立ち止まる。

「……瀬宮くん」

「うん」

「さっきは、ごめん」

のどかは深く頭を下げた。


「私、調子に乗ってた」

「……僕も言い過ぎた」

「ううん。私が悪かったから」

「でも、本当にごめん」

顔を上げたのどかは、まだ少し目が赤かった。


「……これで、お互い様ってことにしない?」

僕がそう言うと、のどかは一瞬だけ目を丸くした。

「うん!」

そしてそのまま自分の席へ戻っていく。


「よかったー」

廊下から声がした。

見てみると外で茂原が立っていた。


彼女は微笑んでいた。

僕と目が合う。

すると、茂原は小さく手招きをした。


「……僕?」


こくり、と頷く。


「えっと、茂原さんだよね?」

廊下の窓際まで行くと、茂原がこちらを見上げていた。

「うん、はじめまして。瀬宮圻くん」

「話って何?」

「ちょっと聞きたいことがあって。瀬宮くんって、柊さんと仲いいよね」

「……まあ、席が隣だから」

「それだけ?」

「それだけだよ」

「ふーん」

茂原は楽しそうに笑った。


『おい、ギン』

「何」

『これ面倒くさい匂いがする』

「……そうか?」


「どうしたの?」

「いや、何でもない」

茂原は首を傾げた。

「変なの」

「よく言われる」

「そう?」

「うん」

「私は、そんなに変だと思わないけど」

「……変だってさっき言ったのに」

「たしかに」

茂原は窓の外を見た。

校庭では、運動部らしい生徒たちが走っている。


「高校、楽しい?」

「まだ二週間だから、何とも言えないけど……」

「けど?」

「楽しいと思う」

「そっか」

茂原は嬉しそうに頷いた。


「よかったね」

「何が?」

「高校生活」

その言葉を聞くと現実味が湧かない。だけど楽しいと実際感じれている。


『ギン、友達増えたな』

「……まあな」


「また一人で喋ってる」

「違うって」

「ふふ」

茂原はまた笑った。

「テニス部、入るの?」

「まだ決めてない」

「上手だったよね」

「見てたの?」

「ちょっとだけ」

「恥ずかしいな」

「すごかったよ」

「ネオがやっただけだけど」

「ネオ?」

「……」


しまった。


僕は一瞬、言葉に詰まった。

茂原は何も言わなかった。

ただ、ゆっくり首を傾げる。


「……ああ、そういうこと。瀬宮くんって、時々独り言言うから」

「そういうことにしておいて……」

「うん」

茂原は、それ以上聞かなかった。


それが、少しありがたかった。

「そういえば」

茂原が話題を変える。

「グリーンスクール、楽しみだね」

「長野だから自然豊か」

「うん。五時間のバスはちょっと大変だけど」

「寝ればいいだろ」

「寝られるかな」

「寝られない?」

「バス酔いするから」

「ああ……」

「だから、ちょっと不安」

「薬とか持ってきたら?」

「そうする」

茂原は小さく笑った。


「茂原さんは誰と座るの?」

「私? 田くんだよ。どっちも余っちゃって」

「そうなんだ」

「うん」

茂原は窓の外を見た。


「でも、たぶん大丈夫」

「何が?」

「ちゃんと、なるようになるから」

「……変な言い方だな」

「そう?」

「うん」

「ふふ」


茂原藍はよく笑う女の子だ。


「じゃあ、戻ろうか」

「うん」

二人で教室へ戻る。

席に着くと、美桜がこちらを見ていた。


「ずいぶん長かったね。茂原さんと話してたの?」

「そう。グリーンスクールの話」

「そっか」

美桜はそれだけ言って、ノートに視線を戻した。


『ギン』

「何?」

『お前もう口滑らせんなよ?』

「善処する」

『そこは否定しろよ』

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