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3人組

 ここで時間は片瀬悠馬と神島彩音がコンビニで出会ったところまで遡る。


 彩音は実は結構あせっていた。


(油断したわ。このあたりにクラスメイトは住んでいないはずだったのに。……しかしよく私だってわかったわね)


 実際これまで何度か知り合いに目撃された事はあるのだが、あまりのキャラの違いに、これまで同一人物だと見破られたことはなかった。

 髪を掻き揚げながら片目をつぶって彩音は足早に歩き、近くに停めてあった車の後部座席にすべるように乗り込む。


「大体なんで私が買出しにいかなきゃならないのよ!」

「いや、最初にじゃんけんで決めよう言い出したん彩音やし」


 助手席に座った男が答える。


 男の名は浮島頌栄(うきしましょうえい)

 短く刈り込まれた硬そうな髪と猫を連想させる切れ長の目をしていたが、きつい印象はなくにやけた表情を浮かべている。

 服装はとある有名な海外のサッカークラブのユニホームにやたら鎖のついた薄い茶色のチノパンだ。 


「しかも一回目で彩音が負けた」


 運転席の男が付け加える。

 彼は金髪にやたら鋭角なサングラス、真っ黒のシャツに黒いジャケット、黒い皮のパンツという表面積の90%が黒という格好をしていた。

 名前は天宝院(てんほういん)ジョシュア。


「普通そこで男なら、かよわい女の子に行かせるわけにはいかないってなるでしょう?」


「かよわい、ねえ」


 浮島が彩音の買ってきた中から鮭のおにぎりを取り出しながら答える。


「なによ。なんかすっごいトゲを感じるんだけど」


 彩音も買ってきたパンをあけながら応じる。


「なにかあったのか?」


 浮島をジト目で見ていた彩音が視線をジョシュアに向ける。


「クラスメイトにあったのよ。私だって判るとは思ってなかったから結構あせったわ」

「ヘーそいつ彩音やってわかったんや」


 浮島がおにぎりをほおばりながら話に入ってくる。


「そうなのよ。学校ではそんなにするどいって雰囲気の奴じゃなかったのにね。……しかしよく分かったわねーアイツ」


「男?」


 口にまだおにぎりを咥えているのに、次のおにぎり(また鮭)を取り出しながら浮島が尋ねる。


「そうだけど?」

「なるほどなるほど」


 一人でにやにやしながら納得する浮島。


「気持ち悪いわね。なにがなるほどなのよ?」

「いやべっつにー。さて、そろそろ出発しよーぜ」


「まて、俺はまだ飯を食っていないぞ」


「ワイはジョシュが運転している間に食えるから気にすんなや」


「……俺とお前は同じ日本語を喋っているよな?」


「わりい。冗談や。じゃワイが運転してやるからその間に食べ。たーだ、着いた時に車の形が変わってるかもしれんけどなー」


 ジョシュアが振り返って後ろの彩音を見る。


「あたしー免許ないし」


 なんかやたら可愛らしくパンを食べながら満面の笑みで微笑む。


「さあ、さっさといこうぜー。指定の時間もうすぐやん」


 浮島がパンパンとジョシュアの背中を叩く。

 ジョシュアはサングラスの奥に光るものをにじませながら、しぶしぶエンジンをスタートさせ夜の街へと愛車を進めていった。





「さて、無事到着やな」


 3人を乗せた車が到着したのは浄水場の駐車場だった。

 ほとんど停まっている車もなく、適当な所に車を駐車する。


「時間はぴったりね。まあ、今回もどうせハズレなんでしょうけど」


「たしかに観測者(オブザーバー)の的中率は10%を切っているからな。そうそう当りは引かないだろう……ぐふっ!」


 どうやら慌てて食べたのでパンを喉に詰まらせたらしい。


「いんや……今回は当りを引いたみたいやで」


 先に車を降りて浄水場の様子を伺っていた浮島がフェンスの奥を凝視しながら報告する。

 彼の目は夜行性の肉食獣のようにうっすらと光を発していた。

 浮島の視線は倒れている警備員をしっかり捉えている。


「先にいくでー」


 車のドアを閉めて、力を溜め込むように屈む。


 ドン! という音と共に地面に小さなクレーターを生み出し、空中に飛び上がった浮島はそのままフェンスの奥まで50メートル程の距離を一気に飛び越える。


 まともな人間の跳躍距離ではなかった。

 その後を彩音とジョシュアが慌てて追いかける。


 フェンス際で「ジョシュ!」と、彩音が声をかける。

 その声に応え、ジョシュアが彩音を肩に抱えそのままジャンプする。


 浮島のジャンプとは違い、まったく重さを感じさせない、まるで逆再生でも見るかのような不自然なジャンプでフェンスをふわりと越える。

 先に到着していた浮島が、警備員の様子を調べていた。


「死んでるの?」

「いや、重症やけど今すぐ死ぬってほどではないな」


「そう、それじゃ救護班に連絡を入れて私たちは水使いを追いましょう」


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